『間違う力』2

<『間違う力』2>
図書館で『間違う力』という新書を、手にしたのです。
これこれ、高野さんの「間違う力」については、かねてより注目していたのです。


【間違う力】


高野秀行著、KADOKAWA、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
人生は脇道にそれてこそ。ソマリランドに一番詳しい日本人になり、アジア納豆の研究でも第一人者となるなど、間違い転じて福となしてきたノンフィクション作家が、間違う人生の面白さを楽しく伝える!!破天荒な生き方から得られた人生訓10箇条!

<読む前の大使寸評>
これこれ、高野さんの「間違う力」については、かねてより注目していたのです。

rakuten間違う力


「第2条 長期スパンで物事を考えない」より、高野さんの間違う力を見てみましょう。
p42~44
<就職しないで生きる方法を探す>
 1960年代に生れた私たちの世代は、子供の頃から、「アリとキリギリス」の話を聞いて育った。「キリギリスは遊んでばかり、いっぽうアリはコツコツ働いていました。そして冬になると、アリには夏の間に貯め込んだ食べ物があったけれど、キリギリスは何も食べ物がなく、アリのところにもらいに行っても断られ、淋しく飢え死にしてしまいました…」

 そんな内容だった。高校生まではこの物語を信じていたが、大学生になって、ころっと変わってしまった。悪かったのは、私が学生のとき、ちょうどバブル全盛期だったことだ。ブランドものを競って身につけるような学生たちとは別世界にいたものの。アルバイトはいくらでもあったし、選ばなければ就職先に困ることもなかった。

「アリとキリギリスの話はちがうんじゃないか」と私は思いはじめた。
 生活が厳しい環境では、つねに「冬」に備える必用があるだろうが、今は時代が豊かになっている。将来的に貧乏になることはあるかもしれないが、そのときは生活レベルを落とせばすむ。少なくとも飢え死にすることはない。

 実際に当時私は三畳一間のアパートに住んでいた。家賃は1万2千円。食事はご飯を炊き、カレーを作って20食連続で食べたり、納豆やふりかけですませていた。外食もしないし、その頃は酒も飲まなかった。

 服はジーンズにTシャツ、寒くなるとセーター、もっと寒くなると革ジャンというワンパターン。のちの妻には「ファッションの墓場」と呼ばれる恰好だった。まったくもって金のかからない生活だった。

「アリ神話」が信じられなくなると、いちばんバカバカしいのは「就職」だった。当時は終身雇用が当たり前だった。最初就職すると約40年、その状態が続き、60になると定年で、あとは老後…と決まっていた。

 会社にしても学校や役所にしても、40年同じ組織に属すると考えるだけでもぞっとしたし、先輩たちからは「就職して最初の三年はひたすら耐えるのみ」と聞かされていた。アリ神話を信じるなら、「あとできっといいことがあるはず」となるが、誰に訊いても「いいこと」というのは「給料が上がる」と「管理職に出世」くらいしかわからない。あとは退職金が高いとか年金の額がちがうとか。

 どうでもいいことばかりだ。そのために40年縛られるのも嫌だし、最初の三年(当時の私にとっては無限に近い長さ)を丁稚奉公に費やすなどもってのほかだ。

 こうして、「就職」はあっさり放棄したのだが、かといって、アルバイトでだらだら食いつなごうと安易に考えていたわけでもない。ちなみに当時からフリーターも派遣社員も存在したが、単純に「落ちこぼれ」とか「怠け者」と見なされ、同情されることは皆無だった。私も傍からみれば、単なるフリーターと思われていたはずだが、自分では「全然ちがう」と思っていた。

 なにしろ、私には確たるヴィジョンがあった。
 ライターになろうと思っていたのだ。コンゴの怪獣探しの手記が思いのほか好評だったので、これで行こうと思った。日本人があまり知らない外国に行って、その話を書けばいい。
(中略)

 ただ、ひとつ困ったことがあった。困ったことがああった。日本に住むだけなら生活費は極限まで落とすことができる。てきとうにバイトをしてでも十分に食いつなげる。だが、外国の珍しい話を書くためには現地に行かねばならない。それにはけっこう金がかかってしまう。それに私はまったく無名だし、そんなにたくさん原稿を書けそうにない。どうしたらいいのだろう。
 熟慮の末、思いついたのが「逆出稼ぎ作戦」だった。

 日本に住むからいけないのだ。東南アジアでも南米でもアフリカでもいい。まず日本よりずっと物価が安い国に住む。そして日本の雑誌向けに記事を書いたり、本を書いたりすればいい。たとえば1ヵ月の原稿料が5万円だったらさすがに日本ではやっていけないが、タイやインドなら可能だ。


『間違う力』1
この本も高野秀行の世界R4に収めておくものとします。


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