『暴力について』2

<『暴力について』2>
図書館に予約していた『暴力について』という本を、待つことおよそ1週間でゲットしたのです。



【暴力について】


ハナ・アーレント著、みすず書房、2000年刊

<「BOOK」データベース>より
ベトナム戦争、プラハの春、学生運動…1960年代後半から70年代初頭にかけて全世界的な広がりをみせた騒然たる動向を、著者は亡命の地・アメリカ合衆国でどのように考えていたか。「国防総省秘密報告書」を手がかりに嘘と現実(リアリティ)とのあり方を論じた「政治における嘘」、暴力と権力との相違をテーマにした「暴力について」、さらに「市民的不服従」など、本書は、情況への鋭い発言のかたちをとりながら、われわれとわれわれを取りまく世界への根本的な問いを投げかけている。「政治とは何か」をもっとも明快かつ具体的に論じた書ともいえよう。

<大使寸評>
改行なしで延々と続く長文にはかなり手こずるのだが、言っていることに間違いはないので我慢すべきなのか。

<図書館予約:(9/16予約、副本1、予約0)>

rakuten暴力について



「第1章 政治における虚偽」でアメリカの戦略を、見てみましょう。
p24~26
<3>
 諜報機関によって確認された事実・・・ときには(とくにマクナマラの場合のように)政策決定者自身によって確認され、しばしば消息通の一般大衆にも知られていた事実・・・と、それによって最終決定が下された前提、理論、仮説等とは完全に別のものであった。

 そしてこの長年にわたるわが国の失政や惨敗の程度は、この二者間の完全な齟齬をしっかりと頭に入れておかなければ、十分に把握することはできない。それゆえ、ニ、三の目立った例をここで読者に伝えておきたい。

 1950年に初めて発表され、そして「もっとも重大な時期」と言われる時期をどうにか生き延びてきた、いわゆる将棋倒し論に関していえば、「ラオスと南ベトナムが北ベトナムの支配下に入った場合には、東南アジア全域が、必然的に陥落するであろうか」という1964年のジョンソン大統領の質問に対するCIAの答えは、「カンボジアは多少危ないが、それを除けば、ラオスと南ベトナムの陥落の結果として、東南アジアにおいて、ただちに共産主義に屈服する国はないであろう」というものであった。

 5年後に、ニクソン政府が同じ問いをかけたときにも、CIAは、「米国がただちに南ベトナムから撤退しても、『東南アジア全域は、少なくとも一世代の間は現状を維持するであろう』」と答えたのであった。国防総省の秘密文書によれば「将棋倒し論を文字とおりに受け取っていたと思われるのは、統合参謀本部と、ロストウ氏と、テーラー将軍だけ」であるが、問題は、それを信じない人たちまで、声明文にそれを使用したばかりでなく、彼ら自身の考える前提の一部分として、その理論を利用したという点である。

 南ベトナム内の反乱者たちは「共産主義謀略」によって「外部から指揮され、支援されていた」という主張に関していえば、諜報関係者の1961年の調査によれば、「1万7000人と推定サレルベトコンの80%ないし90%は、その地域で徴募された人々であり、ベトコンが外部からの援助に依存している証拠はほとんどない」のであった。三年後にもこの状況は変わっていなかった。
(中略)

 それにもかかわらず、北ベトナム爆撃が開始された。一つには「外部からの支援と補給の源を断ち切ることによって、革命を枯渇させることができる」と彼らの理論が説明したからであった。政策決定者たち自身(この場合はマクノートンだが)でさえも、謀反が南ベトナム内に発生したものであることは十分に承知しており、北ベトナムが「屈服しても
その北ベトナムの命令ニベトコンが従う」とは思っていなかったし、統合参謀本部ですらも「そもそもこれらの努力がハノイに決定的な影響を与えるとは信じていなかった」にもかかわらず、北爆は、南部における反逆者たちを支持しようとしている北ベトムの「意思を挫く」ものとされていたのである。

 マクナマラの報告によれば、1965年に国家安全協議会の委員たちは、北ベトナムが引きさがる見込みはなく、いずれにしても、北ベトナム爆撃によって受ける苦痛のために戦いをあきらめるよりは、ベトコンが南ベトナムにおいて敗北したためにあきらめる可能性のほうが強いと見ていたのである。

 最後に将棋倒し説に次ぐものとして、中国の膨張論という仮説に加えて、共産主義者の統制された世界制覇の陰謀と、ソビエト・中国ブロックの存在という前提に立った大戦略の構想があった。中国を「封じ込め」なければならないという考えは、1971年の今日、ニクソン大統領によって否定された。

 しかし4年以上も前に、マクナマラは、「われわれの最初の介入およびベトナムにおける現在の行動がアジアにおける中国の膨張に対して一線を画するのが目的であったとするかぎり、われわれの目的はすでに達成された」のである、と書いている。ただし、そのつい2年前には、彼もまた、南ベトナムにおけるアメリカの目的は「『友邦を助ける』ことではなく、中国を封じ込めることである」という意見に同意していたのである。

 戦争批判者たちは、これらの理論が、周知の事実と相容れないゆえに非難してきたのである。たとえば、中・ソブロックなど存在しないことは、中国革命の歴史と、スターリンがあくまで中国革命に反対したいきさつや、第二次大戦以後の共産主義運動の分裂状態などに精通している人なら、誰でも知っていた。

ウン 聡明な著者の見立ては、2020年現在の米国戦略をほぼ見通しているので、さすがと言うべきか。



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