『雪の練習生』2

<『雪の練習生』2>
図書館に予約していた『雪の練習生』という本を、待つこと1週間ほどでゲットしたのです。
ホッキョクグマ三代の物語とのことで、興味深いのでおます。


【雪の練習生】


多和田葉子著、新潮社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
サーカスの花形から作家に転身し、自伝を書く「わたし」。その娘で、女曲芸師と伝説の「死の接吻」を演じた「トスカ」。さらに、ベルリン動物園で飼育係の愛情に育まれ、世界的アイドルとなった孫息子の「クヌート」。人と動物との境を自在に行き来しつつ語られる、美しい逞しいホッキョクグマ三代の物語。

<読む前の大使寸評>
ホッキョクグマ三代の物語とのことで、興味深いのでおます。

<図書館予約:(8/01予約、8/08受取)>

rakuten雪の練習生


この本の冒頭部あたりの語り口(続き)を、見てみましょう。
p10~12
祖母の退化論 
 ものを書くというのは不気味なもので、こうして自分が書いた文章をじっと睨んでいると、頭の中がぐらぐらして、自分がどこにいるのか分からなくなってくる。わたくしは、たった今自分で書き始めた物語の中に入ってしまって、もう「今ここ」にはいなくなっている。眼を上げてぼんやり窓の外を見ているうちに、やっと「今ここ」に戻ってくる。でも「今ここ」って一体どおだろう。

 夜も更けて、ホテルの窓から外を見ると、前の広場が舞台のように見える。街灯の明かりがスポットライトのように地面を円形に照らしている。その光の輪を斜めに刺し切って猫が一匹横切っていった。観客はいない。あたりは静まりかえっている。

 その日は会議があって、会議が終わってから参加者全員、豪勢な食事に招かれた。ホテルの部屋に戻ってまず、ごくごく水を飲んだ。ニシンのオイル漬けの味が歯の間に残っている。鏡を見ると、口のまわりが赤く汚れている。赤カブかもしれない。根菜は苦手だけど、脂の目玉がたくさん浮いた濃い紅色のボルシチならば肉のうまみに導かれておいしく飲める。

 ホテルのベッドに腰かけると、マットレスが押しつぶされて下のバネがきしんだ。今日の会議が特に変わっていたわけではないけれど、でもこれまで忘れていた幼年時代の記憶今日ふいに」よみがえってきたのは、今日の議題が「我が国における自転車の経済的意味」だったおかげかもしれない。

 芸術家たちを会議に参加させて政策に口を出させるというのは、罠かもしれないので、みんなあまり発言しなかったが、わたしだけはいつものように、胸に当てていた右の手を素早く優雅に挙げる。のびのびとして無駄のない動きを意識してみた。



(追って記入予定)


『雪の練習生』1:冒頭の語り口

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント