『古典を読んでみましょう』1

<『古典を読んでみましょう』1>
図書館で『古典を読んでみましょう』という新書を、手にしたのです。
橋本治さんといえば、パソコンを使わず原稿を手書きしたとのことで、アナログ老人の鑑のような存在でおましたなぁ♪


【古典を読んでみましょう】


橋本治著、筑摩書房、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
えっ、浦島太郎はじいさんじゃなくて、鶴になったの?一寸法師はじつは性格が悪くてやりたい放題だった?日本の古典は自由で、とても豊かだ。時代によっていろいろある古典が、これで初めてよくわかる。
【目次】
「古典」て、なんでしょう/古典を読んでみましょう/ちょっと意地悪な樋口一葉/和文脈の文章と漢文脈の文章/日本語は不思議に続いている/はっきりした説明をしない小野小町/春はどうして「曙」なのか?/分からないものを読んでもよく分からない/亀の恩返し/古典を読んだ方がいい理由/今とは違うこと/意外に今と同じこと/歴史はくるくると変わる/日本語が変わる時/人の声が言葉を作る/漢文の役割/『日本書紀』の読み方/王朝の物語を読んでみましょう

rakuten古典を読んでみましょう



「4章 和文脈の文章と漢文脈の文章」が語られているので、見てみましょう。
p49~52
<ひらがなだらけで句読点のない文章> 
 前回は、樋口一葉の文章をチェックしたりいじくったりしました。≪怪しき形に紙を切りないて、胡粉ぬりくり彩色のある田楽みるやう裏にはりたる串のさまもをかし≫ではなくて、「裏にはりたる串のさまもをかし、」の方が分かりやすいでしょうとか、全部が読点(、)になっているけれど、≪裏にはりたる串のさまもをかし、≫ではなくて、「裏にはりたる串のさまもをかし。」にして、ここで文章を切った方が分かりやすいとか。

 はっきり言いますが、私は「樋口一葉の句読点の使い方はへんだ」と言っているのです。べつに間違っているわけではなくて、今とは違っているからへんに見えるのです。

 今では文章に句読点があるのは当たり前ですが、昔の日本語の文章に句読点がありません。たとえば、平安時代の『源氏物語』の始まりはこう書かれています・・・。

≪いづれの御ときにか女御更衣あまたさぶらい給ひける中にいとやんごとなききはにはあらぬがすぐれてときめき給ふありけりはじめより我はと思ひあがりたまへる御かたがためざましきものにおとしめそねみ給ふおなじ程それよりげらうの更衣たちhましてやすからずかへにつけても人のこゝろをのみうごかしうらみをふつもりにやありけむ≫

 どうですか? 見るだけでいやになりませんか? これはほとんで暗号文です。どうしてこういうものを昔の人は読めたのか? それは、文章というものがこういう書き方をするものだということを分かって、慣れていて、そこに「知っている言葉」が並んでいたから、それをピックアップして意味をとりながら読むことが出来たのです。少し「昔の人」になってみましょう。

 ≪いづれ≫は≪いずれ≫です。「どれかな? どっちかな?」と迷っているのですが、つまりは、どれかの≪御ときにか≫です。≪御ときにか≫とはなんだ? と考えて、この≪≫は「時」ではないかと思います。きっと正解ですが、「時」になんだって≪御≫の文字が付くのか。

 ≪御≫は「おほむ=おおん」と読んで、尊敬の意味を表します。「時」に敬語が付くというのは分かりにくいですが、そう思うのは、あなたが現代人で「時間というものはみんなで共有しているものだ」と思っているからです。

 でも昔は、時間というものは「支配者のもの」でした。だから「時」にも敬語が付いて、その敬語は「時を支配している支配者のための敬語」なのです。

 話はめんどくさくなりましたが、つまりは「どの帝の御代だったか」です。べつにそうは書かれていませんが昔の人は≪御時≫とあるだけで、帝の存在を連想することが出来るのです。だから、その後の≪女御更衣≫は簡単です。≪女御≫は、何人もいる「帝のお妃達」のことで、≪更衣≫の現代風の発音は「こうい」・・・女御よりは身分が下の、やっぱり「帝のお妃達」のことです。

 こんな風に『源氏物語』の解釈をしいて行くととんでもないことになってしまうのでやめますが、昔の人がこういう句読点がなくて漢字もほとんどないような分かりにくい文章を読めたのは、昔の人には昔の人なりの知識があって、それで≪いづれの御ときにか女御更衣あまたさぶらい給ひける・・・≫と続く文章を見ると、文章の中から「知っている単語」がパッパッと浮んで来て、「意味の分かる文章」になったからです。



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