『歓待する文学』3

<『歓待する文学』3>
図書館で『歓待する文学』という本を手にしたのです。
小野正嗣が選りすぐりの作品について十三回の放送で紹介する構成であるが、取りあげた作品が、ええでぇ♪


【歓待する文学】


小野正嗣著、NHK出版、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
文学は私たちの心にどう入り込み、個人の生活や社会に影響を与えるのか。芥川賞作家である著者が欧米、アフリカ、中東、アジアの選りすぐりの作品を紹介。書き手がどのような土地に根ざし、どういう言語で作品を生み出したのか、それが読み手にどう作用するのかを探る。

<読む前の大使寸評>
小野正嗣が選りすぐりの作品について十三回の放送で紹介する構成であるが、取りあげた作品が、ええでぇ♪

rakuten歓待する文学



J・M・クッチェーが語られているので、見てみましょう。
p93~96
<第7回 こんな風にしても人は生きていける>
 このヨンヘと同じような境遇にあった男がいました。彼もまたあらゆる食物を摂取することを拒否します。栄養失調と疲労で意識を失い、医師のもとに運び込まれます。フェリシティという看護の女性が毛布でくるんだ、この40キロにも満たない小柄の老人マイケルズ(しかし本人は自分の名はマイケルだと主張します)に、医師は鼻からチューブを挿入し、糖分と牛乳を与えます。

 マイケルズに意識がもどった。彼が最初にやったことは鼻からチューブを引き抜くことで、フェリシティが止めようとしたが間に合わなかった。いまはドアのそばに何枚も重ねた毛布の下で寝ているが、まるで死体のようだ。何も食べようとしない。小枝のような腕で栄養物の瓶を押しのける。「俺の食べ物じゃない」と言わんばかりに。(226頁)

 これはJ・M・クッチェーの『マイケル・K』の一節です。クッチェーは南アフリカ出身の作家です。ノーベル賞作家(2003年に受賞)としてご存知の方も多いでしょう。クッチェーはブッカー賞(現マン・ブッカー賞)を二度受賞している数少ない作家のひとりですが、その一度目はこの『マイケル・K』という長篇に与えられました。

 僕は一度、クッチェーに会ったことがあります。2014年にイギリスのノリッチで開催された「ワールズ」という文学会議に参加したことは、これまで何度か述べました。僕はそこで『ファミリー・ライフ』の著者アキール・シャルマと親しくなったのですが、そこにクッチェーも招待されていました。

 クッチェーに会えるのだから、機会があればサインをしてもらおうと持参したのが、原書の『マイケル・K』と『少年時代』でした。会議のあとの朗読会で、隣の席に座る機会がありました。そこでずっとカバンに入れてあったこの2冊を取り出し、サインを
してくださいとお願いしました。

 クッチェーは快くサインをしてくれました。「実は、ミスター・クッチェーの講演を聴いたことがあります。あなたが来日されて早稲田大学で講演されたときです。あれはたしか2006年でした・・・」と話しかけていると、「あ・・・」と、僕の手渡した本にペンを走らせていたクッチェーが小さな声を漏らしました。「きみの話を聞いてたら、2006年って書いてしまった・・・」。

 そのときの文学会議の主題が「ノスタルジア」であったことはすでに話しました。『マイケル・K』もまた郷愁の物語と言ってもよいかもしれません。ただし郷愁に駆られるのは、主人公のマイケル・Kではなく、彼の母親です。

 南アフリカのケープタウンに暮らすマイケル・Kは、30過ぎの独身の庭師です。口唇烈があり、あまり友人はいません。彼には長年家政婦として働いてきた母親がいます。病気に苦しむ母親は死ぬ前に自分が幸福な少女時代を過ごしたプリンスアルバートという農場の多い地域に戻りたいと言います。しかし、この小説のなかの南アフリカは明らかに内戦状態です(この作品は、アパルトヘイトが行われていた1983年に刊行)。

 夜間外出禁止令が出されるだけでなく、人々の移動も厳しく制限されています。通行許可証のないKと母親はケープタウンの外に出ることもできません。それでもKは母の願いを叶えたいと思います。「なぜ自分がこの世に生れてきたかという難題にはすでに答えが出ていた。母親の面倒を見るために生れてきたのだ」(13頁)。

 Kは手製の手押し車を作り、それに母親を乗せ、母の故郷へと向かう旅に出発します。しかしその間に母の病気は悪化し、途中の病院で亡くなります。その遺灰を持って、Kはプリンスアルバートを目指します。



J・M・クッチェーの『イエスの幼子時代』読んでいたので、紹介します。

【イエスの幼子時代】
イエスの幼子

J・M・クッツェー著、早川書房、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
初老の男が5歳の少年の母親を捜している。2人に血の繋がりはなく、移民船で出会ったばかりだ。彼らが向かうのは過去を捨てた人々が暮らす街。そこでは生活が保障されるものの厳しい規則に従わねばならない。男も新たな名前と経歴を得てひとりで気ままに生きるはずだったが、少年の母親を捜し、性愛の相手を求めるうちに街の闇に踏み込んでゆく―。人と人との繋がりをアイロニカルに問う、ノーベル文学賞作家の傑作長篇。

<読む前の大使寸評>
過去を捨てた人々が暮らす街てか・・・・なんか面白そうやでぇ♪

<大使寸評>
この世界では「自分だけが例外なのか、自分だけが適応できていない」と主人公はいぶかるのです。 
読み進めるうちに、どうしようもないもどかしさと不安が膨らむわけで、並外れたSF作品のようでもあり・・・それが著者の筆力なんでしょうね。

<図書館予約:(7/27予約、11/05受取)>

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『歓待する文学』2:村上春樹の自伝的エッセイ
『歓待する文学』1:雪の練習生

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