『ブラッカムの爆撃機』3

<『ブラッカムの爆撃機』3>
図書館に予約していた『ブラッカムの爆撃機』という本を、図書館に借出し予約してほぼ4日後にゲットしたのです。
この本には、冒頭と巻末に宮崎駿の漫画を載せているサービス満点の試みがええわけで・・・また、訳者の金原端人さんが、当時の英軍パイロットの皮肉たっぷりの雰囲気を伝えています。


【ブラッカムの爆撃機】


ロバート・ウェストール著、岩波書店、2006年刊

<「BOOK」データベース>より
イギリスの作家ロバート・ウェストールの作品集。大戦下の少年たちの友情と恐怖を描く「ブラッカムの爆撃機」の他、「チャス・マッギルの幽霊」「ぼくを作ったもの」の2編に、リンディ・マッキネルによる「ロバート・ウェストールの生涯」と宮崎駿のカラー書き下ろし「タインマスへの旅」を収録。

<大使寸評>
この本には、冒頭と巻末に宮崎駿の漫画を載せているサービス満点の試みがええわけで・・・また、訳者の金原端人さんが、当時の英軍パイロットの皮肉たっぷりの雰囲気を伝えています。

<図書館予約:(6/27予約、7/01受取)>

amazonブラッカムの爆撃機



ブラッカムの爆撃機(続き)を、見てみましょう。
p104~108
<ブラッカムの爆撃機(続き)>
 爆撃をかけた次の朝に機のにおいをかいだのははじめてだった。いつもなら、おれたちがお目にかかるまえに、整備員たちが消毒液をホースでかけて掃除をすることになってるんだ。だがその朝のS機は、おれたちがきのうでていったときのままのにおいだった。ガソリンのにおい、機銃の火薬のにおい、それよりもっと強いドイツの高射砲の火薬のにおい、へどのにおい、冷たく黒い簡易便器の強烈なにおい、汗ばんだ靴下のひどいにおい、それから心底ぞっとするような恐怖のにおい、これ以上のにおいってのは、ウィンピーが燃えるときのにおいくらいのもんだろう。それも、人が中にいるときの。

 機内は暗かった。濃い闇がたちこめてて、汚れた窓からぼんやりした黄色い光がさしているだけだ。

 おれが機内を歩きかけて、とたんに立ち止まった。何かがいる。何かがいるときには、いつだってぴんとくる。おれたちは兵舎の部屋のまわりをうろついている灰色のネコにえさをやっていたが、そのネコってのが、灰色の毛布の中に隠れるのが好きなんだ。それで、なぜかわからないが、そいつがいるとかならずわかった。そのくせ、そいつが喉を鳴らしながら飛びだしてくると、いつもびっくりした。

 S機の中には何かがいた。ネコじゃない。ずっとでかいもんだ。おれの首のうしろの毛が逆立った。全身にふるえが走った。

 コックピットのむこうのあたりから、ぼそぼそしゃべる声がきこえてきた。かすかな風が機体をゆらし、アンテナと支柱とのあいだでしめっぽい歌をうたっている。その声は風の歌に半分かき消されていたが、それよりも大きかった。RTのあたりからきこえてくるようだ。歯切れのいい、低い声だ。おれは耳をすませた。またおれの髪が逆立った。まさか!
 ドイツ語・・・。

「ディーター、よくやった。上出来だったじゃないか。おまえがみせた以上の勇気と忠誠心はだれも要求することはできないだろう。だからこれからは・・・」
「なんだよ・・・」あとからはしごをのぼってきたキットが、おれの背中にぶつかった。
 キットはおれの顔を一目みるなり口を閉じた。それからマット、ポール、ビリーの順にあがってきた。おれたちはみんな、苦しいほどに息をつめて、きいていた。

「ディーター、そろそろいいんじゃないか。確かに死ぬのは苦しかったろうが、もう自由なんだ。義務は果たした。さあ、総統のいないところへいくがいい。イギリスの爆撃機のいないところへいくがいい・・・」
 幽霊がひとりごとをいってる。いや、そんなそんなばかなことがあってたまるか。おれの頭ときたら、このごろ一時間ごとにパンクしてる。まるで呼吸みたいに規則的だ。
「おい、たのむから、終わりにしようぜ」ビリーがうしろから、やけっぱちになっていった。

 ビリーのやつが、肝っ玉をすえてうしろからおしてきたものだから、ポールとマットとキットとおれは機体の中へおしこまれる格好になった。ビリーだって、先頭にいれば、あんな勇気はでなかったんだろうが、おれはもどって逃げだそうと、必死に暴れた。キットの野郎ったら、おれの耳元でくすくす笑ってやがった。
(中略)

「ゲアリー、しっかりしろ」親父がいった。
 親父は、着陸してからほとんどずっと、そう、七時間ほどそこにいたらしい。報告が終わるとすぐに宿舎にいって、二、三、必要な物をとってくると、まっすぐ嫌なにおいのするS機のはらわたのなかにもどっていったんだ。親父は宿舎から持ってきたものを、片手で飛行服にくっつけるようにして持っていた。かなり大きい黒い本が一冊と、黒くて丸いビーズをつなげたようなものだった。ビーズの端には小さな黒い十字架がつていた。

「メイヌースにいたときの記念品だ」親父はいった。自嘲的な、疲れきったような笑いを浮かべていた。 


【太子注】
タウンゼンド機長、大尉。経験豊富な航空士官で、英国本土防衛戦の頃から飛んでいる。アイルランド人で、熱心なカトリック教徒。仲間から呼ばれる愛称は「親父」。

『ブラッカムの爆撃機』2:ロバート・ウェストールの生涯
『ブラッカムの爆撃機』1:ブラッカムの爆撃機

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