吉岡桂子記者の渾身記事35

<吉岡桂子記者の渾身記事35>
朝日新聞の吉岡記者といえば、チャイナウォッチャーとして個人的に注目しているわけで・・・・
その論調は骨太で、かつ生産的である。
中国経済がらみで好き勝手に吹きまくる経済評論家連中より、よっぽどしっかりしていると思うわけです。
吉岡


朝日のコラム「多事奏論」に吉岡桂子記者の記事を見かけたので紹介します。
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2020年2月22日(多事奏論)隠される情報 声をあげなければウソは続くより
 ひとりの医師が死んだ。
 湖北省武漢市の病院で働く李文亮さん(33)は、隔離された患者の存在を昨年末にSNSで伝えた。「デマ」と当局から批判されたまま、コロナウイルスに感染して亡くなった。「健全な社会の声は一つであるべきではない」という言葉を残して。

 ひとりの記者が消えた。
 武漢市に高速鉄道で乗り込み、取材を続けていたジャーナリストで弁護士の陳秋実さん(34)が行方不明だ。中国では認められていないが、独立した市民記者として、病院や葬儀場で撮影した動画を解説しながらインターネットを通じて伝えていた。「記者は現場に入るものだ」と。

 ひとりの活動家がまた、捕らえられた。
 許志永さん(46)。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)を機に広がった市民運動の旗手だった。人権や民主を訴えた活動で何年も捕らえられた。釈放から約2年が過ぎた今月、新型肺炎への対応を批判して習近平国家主席に退任を求めた。「悪人ではないが、政治家にあるべき賢さがない」。そして、消息が途絶えた。

 ひとりの大学教授が軟禁された。
 「憤怒する人々はもう恐れない」。そんな文章をインターネットに発表した清華大学教授の許章潤さん(57)の自宅前に、監視がついた。

「最初は口を閉ざして真実を隠し、続いて責任を逃れ、感染拡大を防ぐ機会を逸した」と政権を糾弾したからだ。
 それでも、500人超の知識人が公開書簡で続いた。李医師の名誉回復と言論の自由を強く求めている。SNSのアカウントを当局から繰り返し閉鎖されながらも。
     *
 これに対して、中国共産党中央宣伝部は300人の記者を湖北省に投入するという。感動的で前向きなニュースを紡ぎ、世論を「正しく導く」ためだ。現場の人々の善意や頑張りまでも、権力は動員し、体制を支える物語として回収していく。

 国家が事実とウソの線を引く中国で、ロシアのノーベル賞作家、故ソルジェニーツィンがよみがえっている。「収容所群島」などでソ連の全体主義による民衆への抑圧を告発した彼の言葉として、中国のネットをさまよう詩を見つけた。ロシアに伝わるアネクドート(風刺小話)が、ソルジェニーツィンの名を借りて拡散しているのかもしれない。

 《我々は彼らのウソを知っている
 彼らも 彼ら自身がウソをついていることを知っている
 彼らは 我々が彼らのウソを知っていることを知っている
 我々も知っている 彼らは我々が彼らのウソを知ることを知っていることを
 それでも彼らはウソをつき続ける》
     *
 17年前のSARSを機に中国各地で環境NGOが活発化した。私も民主主義の芽吹きを期待した。伝染病も公害も、貧富の格差や思想信条を超えて同じ苦しみを広く面で与える。高度成長期の日本では、公害が地方自治体の首長を次々に交代させた。自由な選挙がない中国でも、人々が連帯して権力に物申し、実態として政治のパワーを持つかもしれないと思ったのだ。

 しかし、いや、だからこそ、中国共産党は人々の連帯を注意深く断ち、政府系NGOという倒錯した組織に収斂させていった。社会の分断は市民の力をそぎ、権力者のウソが追及される恐れを減らす。そして、権力は増長し、情報は隠蔽される。
 独裁国家だけだろうか。
 新型肺炎だけだろうか。

 文書が気楽に消えてしまう国では、経験の英知も気軽に崩れる。ともに声をあげなければ、それはウソだと言わなければ、彼らはウソをつき続けられる。事実とウソの境界が溶けたとき、不信は連鎖し、社会は不安に陥る。
 私は声をあげるひとりでありたい。 (編集委員)


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多事奏論一覧に吉岡記者の中国論が載っています。

<吉岡桂子記者の渾身記事34>:2020年1月25日
<吉岡桂子記者の渾身記事33>:2019年12月21日
<吉岡桂子記者の渾身記事32>:2019年11月23日






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