『文学的商品学』2

<『文学的商品学』2>
図書館で『文学的商品学』という本を手にしたのです。
膨大な数の書評を書いている著者だから、商品学と銘打つのは・・・いいんじゃないか。


【文学的商品学】


斎藤美奈子著、紀伊國屋書店、2004年刊

<「BOOK」データベース>より
商品情報を読むように、小説を読んでみよう。庄司薫から渡辺淳一まで、のべ70人の82作品を自在に読みとく。
【目次】
はじめにー商品情報を読むように小説を読んでみよう/1 アパレル泣かせの青春小説/2 ファッション音痴の風俗小説/3 広告代理店式カタログ小説/4 飽食の時代のフード小説/5 ホラーの館ホテル小説/6 いかす!バンド文学/7 とばす!オートバイ文学/8 人生劇場としての野球小説/9 平成不況下の貧乏小説

<読む前の大使寸評>
膨大な数の書評を書いている著者だから、商品学と銘打つのは・・・いいんじゃないか。

rakuten文学的商品学



お次はフード小説を、見てみましょう。
p97~100
<料理は男女間の距離を測る道具である>
 ちょっと気分を変えて、清水義範『12皿の特別料理』にいきましょう。
 これは『村上龍料理小説集』や『ゆで卵』とはカラーのちがった料理カタログ小説集です。前の二冊との差は、『東京デザート物語』同様、料理が「食べるもの」ではなく「作るもの」として設定されている点です。

 したがって、出てくる十二品はすべて家庭料理ないし家庭で作る本格料理です。おにぎり、ぶり大根、ドーナツ、鱈のプロバンス風、きんぴら、鯛素麺、チキンの魔女風、カレー、パエーリア、そば、八宝菜、ぬか漬け。

 物語のパターンは二種類あり、①料理の基本を知らない主人公が身のほど知らずの難料理に挑戦するドタバタを描いたもの(台所格闘技系)と、②同じ料理が地域や家庭によってまったく別のものに化ける過程を描いたもの(異文化驚愕系)に分類できます。

中鍋に水を入れて火にかけ、水のうちから大根を入れて下煮する。「お米を十粒くらいちょうだい」
 わけがわからないまま手渡すと、大根を下煮している鍋に入れた。
「どうしてそんなことするの」
「大根のアクをとるためじゃないかな」
 次にぶりのアラを冷蔵庫から取り出す。
「すっごいイキのいい色してるよね」
 伸介はカマの部分を二つに分けるぐらいに、全体を大きめサイズに切り揃えた。ヒレとか、ぐちゃぐちゃのところとかは、切り捨てる。
 それをさっと水洗いしてざるに入れ、高いところから塩を多めに振りかけた。表面に塩がまぶると、裏返してそっちにも塩をかける。
(「ぶり大根」/『12皿の特別料理』)

 暗喩もヘチマもあったものではありません。じつはこれ、小説であると同時に、その通りの手順でやれば料理も作れちゃうという一皿で二度おいしい本なのです。
(中略)

 あくまでも小説としてこの本を読むと、同じ料理でも、外食のそれと家庭内のそれとでは、まったく意味が異なることがわかります。『12皿の特別料理』には性的なニュアンスや、記憶再生装置としての力はありません。そして、注意すべきは、この短篇集の人たちが、みな安定した男女関係の中で生きていることです。

 夫の鮮やかな料理の手さばきに驚いて悲しくなる新米主婦(「ぶり大根」)、離婚した元夫に乞われて夫婦でいた頃の料理のメモを送るキャリアウーマン(「鱈のプロバンス風」)、名古屋生まれの夫の実家のきんぴらに憤然とする江戸っ子の妻(「きんぴら」)・・・。

『文学的商品学』1

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