『村上春樹と私』6

<『村上春樹と私』6>
図書館で『村上春樹と私』という本を、手にしたのです。
著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです


【村上春樹と私】


ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊

<商品の説明>より
『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。

<読む前の大使寸評>
著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです。

rakuten村上春樹と私


文学鑑賞と年齢の関係について、見てみましょう。
p134~137
<後期高齢者なのか>
■村上作品に魅了されてしまった
 2015年5月7日、ニューヨークのジャパンソサエティでアメリカ文学の翻訳者柴田元幸さんや若い作家の松田青子さん他数人とともに「翻訳の魅力:村上春樹から若手作品まで」という講演会に参加する光栄に浴した。

 その題名は誰の発想だったか分からないが、初めて見た瞬間に、自分は老人になったなあと思った。私が初めて村上さんの作品に出合ったのは1989年だったが、それ以来、村上春樹という作家の名前は出発点ではなくて、到達点として見ることに慣れていた。

 これまでは、「漱石から村上まで」や「川端から村上まで」だったので、急に、現代日本文学の老大家の作品を翻訳したり研究したりする老学者としての役が回ってきたようだった。講演会の講師として、若い作家たちと、そして新しい作家の一人である30代の松田さんがステージのすぐそばに座っていた。とにかく、この経験はショックだった。

 私が初めて村上作品を読んだ1989年は、村上さんは40歳で、まだ「若い作家」と言われていたし、彼の主な読者は10代から20代の人々だった。私は48歳になろうとしていたので、村上さんのような若い作家を研究対象にするには年を取り過ぎていたかもしれない。

 その当時、海外の評論家や学者の多くは、村上さんことを批評に値する作家とは思っていなかったようだ。いい年をして、若者向きのポップ小説家をそう真剣に扱っているのはなぜかと私はよく聞かれたのだが、いつも冗談半分に「僕は未熟だから」と答えたものだ。今、村上さんご自身もすでに67歳になっていて、村上作品を翻訳したり論文を書いたりしてきたこの老学者は75歳になっている。(2016年当時)

 漱石と芥川の場合でも、年齢の問題は忘れてはならない。芥川はもちろん夭折したと言えるが、漱石も比較的若くして亡くなっている。漱石も漱石の時代もある意味で未熟だった。

 近代・現代日本文学史の本は明治・大正・昭和の作家を個人ではなく、流派のメンバーとして論じるのが普通だが、漱石は別格で、個人として扱われることが多い。漱石が小説家として出発した時、文壇を支配していたのは自然主義派だったが、漱石にはよく反自然主義のレッテルが貼られている。
(中略)

 世代間の衝突や反抗や自己発見や孤独というテーマがいくらか青臭く聞こえるなら、あるいは明治という時代を日本の青春期と見ていいかもしれない。時代が移って、次々に現れてくる若い読者層は常に漱石を再発見する。また、西洋においても現代の知識人の姿を漱石に見出す。

■情熱は冷めていなかった
 漱石の小説の中で、私が翻訳したいという要求が抑えられなかったのは『三四郎』であった。翻訳したくなったというよりは、すぐ翻訳しないと、年を取ったらその若い雰囲気が鑑賞できなくなるのではないかと心配したと言った方が正確かもしれない。

 私が『三四郎』を初めて読んだのは33歳か34歳の時で、その若い主人公に惹かれた。ストーリーの初め、主人公の三四郎は23歳で、終わりになると24歳になっている。ハーバード大学のファカルティ・ハウジング・コンプレックスの庭に座って、赤ん坊だった娘を抱きながら4歳のわんぱくな息子に目をやっている妻に、漱石の原文と私の翻訳をセンテンスごとに読み上げて、翻訳のチェックをしている光景がありありと思い出させる。

 とにかく、早く翻訳しないと、若い主人公への思いがなくなると思ったが、後になって分かったのはそういう心配はまったく要らないということだった。ペンギン社の2009年版のために翻訳を改定した時、私は60代後半だったが、『三四郎』への情熱は全然冷めていなかったから。


『村上春樹と私』5:世界中の翻訳仲間
『村上春樹と私』4:アメリカでの村上講演会
『村上春樹と私』3:村上作品の英訳
『村上春樹と私』2:翻訳者の仕事
『村上春樹と私』1:翻訳の苦労


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