(耕論)個人番号カードの未来

<(耕論)個人番号カードの未来>
 映画作家の想田さんがオピニオン欄で個人番号カードについて説いているので、紹介します。
想田さんといえば、ドキュメンタリー映画の監督として以前よりフォローしていたが、これだけの論陣を張るとは、おみそれしました。


(想田さんのオピニオンを5/29デジタル朝日から転記しました)


政府がマイナンバー(個人番号)カードの利用者を増やそうと躍起になっている。カードが普及すれば、より暮らしが便利になるという理屈だ。カードが浸透した社会の「未来予想図」は。

■「国家が行動把握」に危惧 想田和弘さん(映画作家)

 マイナンバーカードの取得を勧める政府のふるまいは、まるで民間のクレジットカード会社のようです。買い物の際に出せばポイントがつきます、健康保険証としても使えます、だからお得ですよと。でも政府とカード会社は、同じなのでしょうか。

 僕は「消費者民主主義」という造語を使っています。政治家は政治サービスの提供者、主権者は投票と税金を対価とする消費者であるという構図を指します。政治家は、政治サービスを買ってもらうために主権者を慇懃無礼にお客様扱いしますが、同時に、受け身な存在として馬鹿にしています。マイナンバーカードを売り込む政府の態度には、主権者を消費者に見立てる感覚がにじんでいます。

 カード会社のサービスは嫌だと思えば利用をやめられますが、国から抜け出ることは容易ではありません。また国は「徴税権」という絶大な権力を持っています。国と会社は実は全く異質な存在だということを、忘れてはなりません。

 脱税していないから問題ない、というものではありません。独裁国家では、政府に都合の悪い発言をする人の言論を封じるために、別件で嫌がらせをするのはよくあることです。マイナンバーカードが、将来的に国家権力が個人の消費行動を把握するような目的に使われるのではないか。僕自身は、不安と抵抗を感じます。

 現代のように、さまざまな民間ITサービスや監視カメラを通じて常に監視されているような時代には、マイナンバーやマイナンバーカードによる情報の把握は、非常にささやかに見えるかもしれません。しかし、警戒感は解くべきでないと思います。

 一方で、カードを取得した人が1割強という数字からは、主権者は必ずしも消費者気分でないことがうかがえます。「政府とカード会社は違う」と本能的に感じているのでしょうか。

 普段は政治に関心がない人も、お金が絡むと政府との関係をシビアに考えるのかもしれません。あるいは「マイナンバーカードは大して便利でないから不要」という、まさに消費者的な発想で使っていないだけかもしれませんが。

 僕自身は米国の社会保障番号を持っています。当初は大恐慌後の福祉政策のために作られた制度でしたが、今では銀行口座開設や就職、納税など、社会生活を営む上で欠かせない番号となりました。

 お陰で自分の経済活動は米国政府にほぼ把握されています。大規模な番号流出やなりすまし詐欺も起きています。でも制度から抜けることは、事実上不可能です。今や仙人のような暮らしをしない限り、番号なしでは、この国では生きていけないのです。(聞き手・高重治香)
     *
想田和弘:1970年生まれ。93年から米ニューヨーク在住。「選挙」「精神」など多数のドキュメンタリー映画を監督。


(耕論)個人番号カードの未来想田和弘2019.5.29

この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR11に収めておきます。

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