『ねじまき鳥クロニクル・第三部』1

<『ねじまき鳥クロニクル・第三部』1>
図書館で『ねじまき鳥クロニクル・第三部』という本を、手にしたのです。
これまで第一部、第二部と読んできたのだが・・・
妻のクミコとその兄の綿谷ノボルの動きが読めないというか、謎めいているのです。



【ねじまき鳥クロニクル・第三部】


村上春樹著、新潮社、1995年刊

<「BOOK」データベース>より
奇妙な夏が終わり、井戸は埋められた。そして人々はみんなどこかに去っていった。ねじまき鳥の声ももう聞こえない。僕に残されたのは、頬の深く青いあざと、謎の青年から引き渡された野球のバットだけだ。でも僕はやがて知ることになるー何かが僕を新しい場所に導こうとしていることを。意識と過去の帳の奥に隠されたねじのありかを求めて、地図のない冒険の旅が開始される。そしてその僕の前に、ねじまき鳥の年代記(クロニクル)が、橇の鈴音とともに静かにひもとかれる。完結編。

<読む前の大使寸評>
これまで第一部、第二部と読んできたのだが・・・
妻のクミコとその兄の綿谷ノボルの動きが読めないというか、謎めいているのです。

rakutenねじまき鳥クロニクル・第三部



この本の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。
p33~35
<3 冬のねじまき鳥>
「これからもっと下がりますか?」
 老人はしっかりとうなづいた。「もちろん下がる。坪90万までは文句なく下がる。90というのが連中の買った値段だからね、そこまでは下がるさ。連中も今ではちょっとやばいと思っているし、もとが取れたら大喜びだろう。その下まではわしにもわからんね。もし連中が現金を必要としていたら、多少は腹を切って安く売るかもしれん。金に困っていなかったらじっと抱えているかもしらん。会社の内部事情まではちょっとわからんからね。まあただひとつ確実に言えることは、連中は今ではあの土地を買ったことを後悔しているということだな。あの土地にかかわるとロクなことはないんだ」、そして灰皿の上で煙草の灰をとんとんと叩いて落とした。

「あの家の庭には井戸がありますね」と僕は訊いた。「井戸のことで何か市川さんがご存じのことはありますか?」
「うん、井戸はある」と市川さんは言った。「深い井戸だ。でもついこないだ埋めちまったようだよ。どうせ涸れた井戸だったものね。あったところで役には立たない」
「いつごろあの井戸が涸れたかご存じではありませんか?」

 老人はしばらく腕組みしながら天井を睨んでいた。「ずいぶん昔のことだから、私にもはっきりとは思いだせんけれどね、戦前には水は出ていたということだったよ。出なくなったのは戦後のことだね。いつから出なくなったのかまでは私にもわからんね。でも女優さんが入ったときにはもう水は涸れていて、そのときに井戸を埋めようかどうしようかという話はたしかあったよ。しかしその話もなんとなくそれっきりになってしまったな。わざわざ井戸を埋めるというのもまあ面倒なものだからね」

「すぐ近くの笠原さんの家の井戸水は今でもまだ出るし、良い水だということでしたね」「そうかね、あるいはそうかもしれんね。あの辺は地質の関係で昔からけっこううまい水が出るんだ。それに水脈というのは微妙なもんで、あっちで水がでるのに、ほんの少しこちらでは水が出ないというのは珍しいことではない。しかしあの井戸に何か興味でもあるのかね?」
「実を言いますと、あの土地を買いたいと思っているのです」

 老人は顔をあげて、あらためて僕の顔に目の焦点をあわせた。茶碗を手に取り、静かに一口飲んだ。「あの土地を買いたい?」
 僕はうなづいただけで返事をしなかった。
 老人は煙草の箱を取って1本新しく抜き出し、先端をテーブルの上でとんとんと叩いた。でもっそれを指のあいだに挟んだきり火は点けなかった。舌先で唇をちらりとなめた。
「さっきからずっと言っているように、あれは問題のある土地だよ。これまであそこに住んでうまく行ったためしはひとつもない。それはわかっているね? はっきり言って、あれは多少値段が安くたって決して得な買い物じゃない。それでもかまわないんだね?」

「そのことはもちろん承知の上です。もっともいくら相場より格段に安いとは言っても、あの土地が買えるようなお金はまだ手元にはありません。でも時間はかかってもなんとか都合するつもりでいます。だからあの物件についての情報をもらいたいんです。価格の変動とか、取引の動きとかがあったら教えてもらえますか」


この土地を買おうとした「赤坂リサーチ」という自称「経済リサーチコンサルタント」という連中がなんとも胡散臭いのである。


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