民主主義 生かすために

<民主主義 生かすために>
 政治学者のダニエル・ジブラットさんがオピニオン欄で「選挙で民意得た後、自由脅かす指導者、常に制度鍛えねば」と説いているので、紹介します。


(ダニエル・ジブラットさんのオピニオンを1/08デジタル朝日から転記しました)


 自由や平等、他者への敬意に裏打ちされる民主主義というシステム。最近の世界の動きをみると、その先行きに、何か不穏な空気を感じてしまう。そこで、民主主義の危機を論じた著書が評判になったダニエル・ジブラットさんを米ハーバード大学に訪ねた。民主主義を守り、育てるため、何が必要か。新年を機に、改めて考えた。

Q:2018年の著書「民主主義の死に方」(新潮社)が評価を受けています。刺激的な題名ですが、民主主義は、もはや機能しなくなったということですか。
A:ハーバード大の同僚と書いた本ですが、ドイツ語や日本語、ポルトガル語、トルコ語など15ヵ国語に訳され、世界中で出版されました。昨秋の大統領選で軍事独裁を賛美する極右候補が勝利したブラジルでは、一時的とはいえ、あらゆるジャンルの中でベストセラーになりました。強権的な指導者が世界各地で誕生するなか、民主主義への危機感が高まっているのでしょう。

 題名から勘違いしてほしくないのですが、民主主義は死んでいないし、死にかけているとも思っていません。この米国でも、トランプ政権の誕生前も今も民主主義は確かに、脈を打っています。ただ、過去200年以上存在しなかったような危機に直面しているのは事実です。

Q:どんな危機ですか。
A:三つの脅威があります。民主主義的なルールに従おうとしない大統領がホワイトハウスにいることが一つ。政治的な二極化、分裂が深まっていることが二つめ。そして三つめが、経済的な不平等や格差の拡大です。それぞれが民主主義にとっては慢性の病気のように深刻な問題です。放っておくと死に至る可能性があります。

Q:トランプ氏は民主主義的なルールに従おうとしない、と指摘されましたが、彼自身は、大統領選挙という民主主義のシステムによって選ばれていますよね。
A:その通り。そこがまさに、現代の民主主義の大きな問題です。

Q:というと?
A:独裁者はクーデターや暴力的な事件を通して権力を掌握することがかつては多かった。ただ、現代の独裁者は違います。銃声ではなく、選挙で権力の座に就く。最初は社会の抱える問題を打破してくれるとの期待を背負った人気者として、民主的に登場してくるのです。だが権力を握った後、メディアを含む対立相手の自由を奪うことなどによって、民主主義を侵食していくのが特徴です。

Q:民主主義を脅かす指導者にみられる特徴を「四つのリトマス試験紙」として示していますね。
A:民主主義のルールを軽んじること、対立相手の正当性を否定すること、暴力を許容・促進すること、メディアを含む対立相手の市民的自由を奪おうとする姿勢――です。私の教え子で、(米政治誌『アメリカン・アフェアーズ』創刊編集長の)ジュリアス・クライン氏は選挙中、トランプ氏を支援する活動をしましたが、その後暴力を容認する姿勢にショックを受けて決別したそうです。もっと早くこの『四つの基準』を世に出しておけば、すべて当てはまったトランプ氏の問題に多くの人が気づいてくれたのでは、と思います。
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Q:民主主義に迫る脅威は、米国だけの現象ではありません。
A:欧州や中南米、アジアでも同様です。ハンガリーやトルコ、ポーランド、ブラジル、フィリピンなどの国々で、移民への厳しい姿勢など極端な政策を掲げる政治家や政党が台頭しています。オーストリア、フランス、ドイツ、オランダなどでも票を伸ばしています。ただ、こうした状況をみていたずらに自暴自棄になっても、何の解決にもなりません。民主主義を脅かす事態がいつ起きても耐えられるように、それぞれの国の民主主義を鍛え直し、機構と機能を強固にする、という備えを常にし続けることが何よりも重要です。

Q:民主主義を担う我々有権者にはどんな備えが必要ですか。
A:民主主義とは、スイッチを押すだけで自動で動く機械ではないのです。どんなに優れた憲法や仕組みがあったとしても、不断の努力が求められ、常にエネルギーを注ぎ込まなければならない。人々がしっかり政治について考え、語り合い、意見を表明することがまず大事です。何年かに一度だけ、選挙にさえ行けばそれで済む、のではないのです。そうした努力によって人々の不満や怒りをしっかりと政治の場に反映させることができ、変化し続けることができるのです。

Q:常に鍛え、磨いていく必要があるということですね。
A:そうです。完成はなく、永遠に進化を続けなければならないのです。米国は代表的な民主主義の国ですが、だれもが投票できるという、今では当たり前と思われている制度が米国で成立したのは1960年代に入ってからです。逆にこの国でそれが完成する前の40年代に、米国は西ドイツや日本の民主化を後押しし、だれもが投票できる社会を実現させていたというのも興味深い事実です。私は米国も他の国から民主主義について学ぶことがあると思い、研究を続けています。

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Q:17年の別の著書「保守政党と民主主義の誕生」(未邦訳)では民主主義で重要な役割を果たす政党の存在に注目していますね。現代は、その政党が社会の分断と分裂を助長しているのでは?
A:確かに政党が強くなると『我々と敵』といった意識をあおってしまうことがあります。健全な民主主義の課題は過度な党派対立を防ぐことですが、米国では今、ご指摘のように政党が分断をあおっている面があります。95年に下院議長に就いたギングリッチ氏のような指導者によって共和党は急進化、過激化しました。民主党を敵と見なすことで、『白人プロテスタントの不安』を求心力とした利益団体になってしまい、党派闘争を激しくさせてきました。

Q:その共和党で圧倒的な支持を集めるのがトランプ氏です。
A:(トランプ氏が当選した)16年の米国の大統領選結果がなぜ起きたのか、いまだにみんなが原因を探しています。ただ、二大政党制では、どんなに極端な候補者でもどちらかの政党の正式な候補になってしまえばあとは五分五分です。前回の大統領選挙でも、共和党支持者の9割はトランプ氏に投票しました。民主主義を守るために、民主党のクリントン候補に投票しようという共和党の指導者はほとんど出ませんでした。

 なぜトランプ氏が共和党の候補になれたのか、という問いが重要だと思います。かつて米国の政党は自動車王フォードや、大西洋無着陸横断飛行を行ったリンドバーグらが過激な主張で一般有権者の人気を得た時にも、党の候補から排除しました。ところが前回の大統領選で共和党は、米国の政党が過去には果たしてきた『門番』の機能を果たせなかったのです。

Q:トランプ大統領は選挙中から、既存メディアを敵視する発言を繰り返し、自らツイッターなどで直接、有権者と世界にメッセージを発信し続けています。
A:現代はインターネットやソーシャルメディアの発達が人々の行動を大きく変えています。19世紀以来、各国の政党が開発してきた手法がそれほど効果を発揮しなくなりました。世界中の政党と政党指導者が、この時代に合った、有権者とつながり、有権者を動員する新しい方法を創造的に生み出そうと模索している最中だと思います。先日もドイツの『緑の党』の幹部がここを訪れ、同じテーマで話し合いました。

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Q:なるほど。ではシンプルな質問を一つ。民主主義を機能させるうえで、権力を持つ指導者の側に問われることは何でしょうか。
A:政治で競い合う相手は敵ではなく、正当な存在であると認める『相互的寛容』。政治家が特権を行使するときに節度をわきまえるという『自制心』。これらが何よりも大事でしょう。この二つを私たちは民主主義を守る『柔らかいガードレール』と呼んでいます。非常に、非常に重要です。

 政治における寛容とは、政治的ライバルを敵や危険な脅威だとみなさないことです。第2次世界大戦前のヒトラー、ムソリーニやフランコ、冷戦期のカストロやピノチェト、最近のプーチンやチャベス、エルドアンといった指導者はみな、対立相手に『存在を揺るがす脅威』というレッテルを貼って権力の集中を正当化しました。

Q:人々がしっかり政治について考えることが重要との指摘がありました。日本では安倍晋三政権のもと、そうした議論の前提になる公文書の改ざんや隠蔽、政策決定における官僚の忖度といったことが大きな問題になっています。
A:それは警告を発しているといえるでしょう。一般論になりますが、本来、公務員は政治権力から一定の距離を保ち、公平でなければなりませんし、そうでなければ健全な民主主義を守ることも難しくなります。不可欠な前提が揺らぐことで、民主主義の空洞化は、少しずつ、ゆっくりと、目に見えない形で進むのです。 (聞き手・池田伸壹)
    *
ダニエル・ジブラット:1972年、米国生まれ。2003年からハーバード大で教え、現在は教授。共著「民主主義の死に方」は15ヵ国語に訳されている。

ウン 勝てば官軍の安倍さんと、それに忖度する官僚どもが悪いというわけでんな。・・・だけど今の若者は選挙に行かないから政権にアホ扱いされてるしなあ。

民主主義 生かすためにダニエル・ジブラット2019.1.08


この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR9に収めておきます。

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