『飛行士たちの話』2

<『飛行士たちの話』2>
図書館に予約していた『飛行士たちの話』という本を、待つこと4日でゲットしたのです。
この短編小説集のなかでは、『あなたに似た人』が載っているそうで・・・狙い目でおます。



【飛行士たちの話】


ロアルド・ダール著、早川書房、1981年刊

<商品の説明>より
飛行士たちの話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 22-2) [文庫] ロアルド・ダール (著), Roald Dahl (原著), 永井 淳 (翻訳) 出版社: 早川書房 (1981/7/31)

<読む前の大使寸評>
この短編小説集のなかでは、『あなたに似た人』が載っているそうで・・・狙い目でおます。

<図書館予約:(11/05予約、11/09受取)>

amazon飛行士たちの話



スピットファイア機が出てくるので、見てみましょう。
p209~211
<番犬に注意>
 眼下にはてしなく広がる白い雲海のうねりしかなかった。頭上には太陽があったが、それも雲のように白かった。空の高みから見る太陽は決して黄色には見えない。

 彼はなおもスピットファイアを操縦していた。右手で操縦桿を握り、左脚1本で方向舵を操作していた。苦もなくそれをやってのけた。飛行機は快調に飛んでいたし、彼は自分のしていることを充分に心得ていた。

 万事順調だ、と彼は思った。おれはうまくやっている。りっぱなもんだ。帰り道も知っている。30分もすれば帰りつくだろう。着陸したら滑走に移って、エンジンのスイッチを切り、おい、ちょっと手をかしておれをおろしてくれないかという。

 ふだんと同じ自然な口調だから、だれも気がつかないだろう。そこでおれはこういう。だれか手をかしておれをおろしてくれよ、独りじゃ無理なんだ、なにしろ片脚を失くしちまったもんでね。みんなは笑いだし、こいつめ冗談いやがってと思うだろう。そこでまたおれはいってやる。ようし、嘘だと思うんならこっちへきてちょっと見てみな。するとヨーキーが翼にあがってなかをのぞきこむ。たぶん彼は血だらけの惨状を見て気分が悪くなるだろう。そこでおれは笑いながらいう。頼むから手をかしてくれよ。

 彼はもう一度右脚をちらと見た。といっても右脚はほとんど残っていない。砲弾の破片で大腿を、膝のすぐ上から吹っとばされ、目につくのはめちゃめちゃになった肉塊と大量の血だけだ。しかし苦痛はなかった。自分の体の一部ではないなにかを見おろしているような気がした。
(中略)

 彼はほとんど気分爽快だった。だから心がはずみ、わずかの不安もなかった。
 無線で輸血車を呼ぶ手間もいらない。と彼は思った。そんな必用はない。着陸したら、さりげなく坐ったままこういう。だれかこっちへきてちょっと手をかしてくれないか。なにしろ片脚を失くしちゃったもんでね。さぞ面白いこったろう。そういいながらちょっと笑ってみせる。落ちついた声でゆっくり言えば連中は冗談だと思うだろう。ヨーキーが翼によじのぼってきて気分が悪くなったら、ヨーキー、このろくでなしめ、もうおれの車の用意はできているのか、ときいてやる。それから、飛行機から降りて報告する。あとでロンドンへでかける。例の半分残ったウィスキーを持って行ってブルーイにやろう。彼女の部屋に坐って一緒にそいつを飲む。
(中略)

 そのとき彼は、太陽が飛行機のエンジン・カバーの上に輝いているのを見た。金属カバーのリベットに輝いているのを見て、飛行機のこと、いま自分がどこにいるかを思いだした。もう気分爽快とはいえず、吐気とめまいがすることに気がついた。頭がしだいに胸のほうにさがってくる。もう首が頭を支えきれないようだった。だがスピットファイアを飛ばしていることはわかっていた。右手の指のあいだに、操縦桿のグリップを感じることができた。

 意識がなくなるぞ、と彼は思った。もうすぐ意識がなくなる。


『飛行士たちの話』1
この本も飛行機シリーズ3-R4に収めておくものとします。

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