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zoom RSS 『ヴィクトリア朝空想科学小説』1

<<   作成日時 : 2018/10/12 07:32   >>

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<『ヴィクトリア朝空想科学小説』1>
図書館で『ヴィクトリア朝空想科学小説』という本を、手にしたのです。
帰って日記を見たら、11年前にこの本を読んでいたことが分かったのです…覚えていなくて当然でんがな。


【ヴィクトリア朝空想科学小説】


風間賢二編、筑摩書房、1994年刊

<「BOOK」データベース>より
科学の時代への扉が大きく開かれた頃、最新の知識や技術は人々の好奇心と想像力をかきたてていた。未来は限りない可能性を秘め、その前で畏れと憧れに身を震わせる作家たちがいた。19世紀後半から20世紀初頭にかけて書かれた空想科学小説の傑作を集めて、当時の人々が思い描いた壮大な夢の跡をたどる。

<読む前の大使寸評>
日記を見たら、11年前にこの本を読んでいたことが分かったのです…覚えていなくて当然でんがな。

amazonヴィクトリア朝空想科学小説
ヴィクトリア朝空想科学小説byドングリ


アメリカの作家エドワード・ベラミイのSFの冒頭を、見てみましょう。

<来るべき能力>p99〜102
 わたしがカルカッタでニューヨーク行きの客船アデラード号に乗りこんだのは、もう1年も前である。ニュー・ムステルダム島(ニューヨークの呼び名)が見えるまでは、変わりやすい天候に難渋させられたが、わたしたちはその地点から新しい航海の途についあた。
 三日後、ひどい嵐が襲いかかった。四日間、わたしたちは嵐の一歩前方を逃げに逃げた。その間じゅう、太陽も月も星もまったく姿を見せず、方角を知る手立てさえ掴めなかった。4日目の深夜に近いころ、稲妻の閃光が、目の前に低く横たわる陸地へ一直線に進んでいるアドラード号の窮状を照らしだした。

 船体の優位ばかりか、船尾を遠くへだたった海中にも、これまで船が暗礁に乗りあげなかったことが奇跡に思えるほど無数の暗礁や浅瀬が、一面に岩頭を突きだしていた。あもなく船は岩場に激突し、あっという間に分解した。海の猛威はそれほどすさまじかったのだ。

 さすがのわたしも生存の希望を投げだした。それも無理はない、はげしい衝撃とともに陸へ打ちあげられ、正気をとりもどしたとき、わたしはほんとうに溺死の一歩手前までたち至っていたのだから。肉体には、波間から身を起こすだけの力しか残っていなかった。その証拠に、わたしはそのあとすぐ足もとから崩れ落ち、それっきり正気を失ってしまった。

 気がついたとき、嵐は去っていた。すでに中天を越えた太陽が、服をすっかり乾かし、傷ついて傷みの走る四肢に活力をよみがえらせていた。海上にも陸地にも、船の残骸ひとつ乗船員ひとり見えない。どうやらわたしが唯一の生き残りらしかった。だが、わたしは一人ぼっちではなかった。あきらかにこの土地の住民と思われる人間が、幾人か群れになって傍らに立っていた。一見しただけで、わたしへの処遇に関する懸念を吹きとばしてくれるほどの親しみの表情で、じっとわたしを見つめている。

 白い膚をした。上品な顔だちの人間たちだ。容姿の特徴は、わたしの知っているどの民族のそれともちがっていたが、高度な文明を営んでいることは疑いなかった。

 会話のきっかけを、まず異邦人にゆずるのがかれらの礼儀らしいと知って、わたしは英語で問いかけたが、あいそ笑い以上の反応を得ることはできなかった。そこで今度は、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、オランダ語、それにポルトガル語を使ってたてつづけに話しかけてみたのだが、より以上の成果を得ることは難しかった。

 白人種で、しかもあきらかに文明化している民族であるのに、強大な海運諸国の言語をまったく知らないこの人間たちの国籍は、いったい何なのだろうと、わたしはひどく頭を悩ましはじめた。とりわけ奇異に映ったのは、かれらと意志の疎通を計ろうとするわたしへの侮蔑ともなった、いつまでも破れないかれらの沈黙だった。

 たとえ囁きひとつによっても、自分たちの言語を知らせる手掛かりを与えまいとするような、堅い沈黙だった。おたがいに意味ありげな笑顔を交わしあいはするが、先ほどから一度もくちびるを開かないのだ。しかし、この行動がほんとうにわたしをなぶっているものだとしても、かれらの全体的な態度からうかがえる、見まごうべくもない親愛の情と同情心とが、そんな憶測を拒否した。

 まったく突飛としかいいようのない憶測が頭に浮かんだ。この異邦人たちは、ひょっとするとことばが話せないのではなかろうか? 一民族全体がそうした障害者として生まれてきたという話は、聞いたことがなかったけれど、広大な南洋の未探検海域が今日まで人間の眼からひた隠しに隠してきた奇蹟がなにもなかったとはいえるはずもない。
(中略)

 わたしの当惑がいよいよ絶望的な色あいを深めだした丁度そのとき、助け舟が出された。民衆の環が開き、息せき切ってここへ駆けつけたことがすぐに分かる、かなり年長の男があたしの前にすすみ出、おそろしく慇懃に一礼すると、英語で語りかけてきた。だがその声は、わたしが耳にしたものの中でも、いちばんひどい出来そこないの声だった。


さらに読み進めました。
p118
 わたしが彼女にはじめてめぐり会ったのは、社交の席であった。その時わたしはとつぜん一座の空気が変わったのに驚いた。うるんだひとみの婦人たちが一斉にわたしの方を向き、じっと視線をそそいだとき、その顔に浮かんだ微笑みと慈しみにあふれた注視の表情に、わたしは狼狽した。彼女がわたしを見つめたとき、婦人たちは彼女の心を読んでいた。しかしそれをわたしが知ろうはずはなかった。

 こうした場合、人は普通どんな行動をとるべきものなのかさえ、ずっと後になるまで知らなかったわたしだ。といっても、彼女がはじめてわたしにひとみを注いだ瞬間から、彼女の心がわたしの内面をじっと見つめだしたことは感じていた。


ウン このSFは一種の言語学的小説にもなっているわけで・・・
大使のツボに当たったのです

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