『スペイン旅行記』1

<『スペイン旅行記』1>
図書館で『スペイン旅行記』という本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくると、ユーモラスな挿絵が多くて親しみを覚えるのです。
この本の挿絵はチャペックの自筆とのことで・・・多芸な人である♪
大使も若い頃、列車で南仏からスペインに入ったことがあるので、この本は、まあセンチメンタル・ジャーニーみたいなものでおます。


【スペイン旅行記】


カレル・チャペック著、恒文社、1997年刊

<「BOOK」データベース>より
イスラムやキリスト教はじめ多種多様な文化が混在して豊かな趣をたたえたスペインの風物を、独自の観察と描写で紹介!マドリード、トレド諸都市の風景、ベラスケスやゴヤなどの絵画、闘牛やフラメンコ、壮大な建築、魅力的な美女な風俗一般を、巧みに描写。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると、ユーモラスな挿絵が多くて親しみを覚えるのです。
この本の挿絵はチャペックの自筆とのことで・・・多芸な人である♪

rakutenスペイン旅行記

カスティーリャ=ラ・マンチャ州

1929年、チャペックはプラハからスペインを目指して出発したので、その一部を見てみましょう。
p21~27
<ドイツ、ベルギー、フランスを通って>
 さて、つぎは、ふたたび自由な領域になる。それはフランス・・・・ハンノキとポプラとプラタナス、プラタナスとぶどう園の国だ。
 銀色がかった緑、そうだ、銀色がかった緑が、フランスの色だ。ピンクの煉瓦と、青っぽいスレート。軽やかな霧のヴェール、色というよりは光。まるでコローの絵そのものだ。

 畑には、人っ子一人いない。たぶん、ぶどうの収穫で忙しいのだろう。トゥレーヌのワイン、アンジューのワイン、バルザックのワイン、それに、ド・ラ・フェール伯爵様のワイン。
 「ギャルソン・ユーヌ・デミブティーユ(ボーイさん、ハーフ・ボトルを1本だ)」
 そこで、ロワール渓谷の塔よ、乾杯!

 黒服を着た黒髪の女性。なんだ、やっとボルドーか? 樹脂の香りがひと晩じゅうただよう。ここは南西フランスのランド県、マツの国だ。それから別の香り、きつく、気分をたかぶらせる香り・・・海だ。

 アンディエ、乗り換え!
 ぴかぴかの三角帽をかぶった、若きカリギュラ(ローマ皇帝カエサルのあだ名)を思わせるような警官が、スーツケースになにか魔法の印をなぐり書きし、でかい態度でわたしたちをプラットフォームへ追いやる。もはやかくのごとし。わたしはスペインにいる。

 「カルメロ、ウナ・メディア・デル・ヘレス(ボーイさん、シェリー酒のハーフ・ボトルだ)」
 もはやかくのごとし。赤茶色のヘンナ染料でマニキュアをした、あやしい魅力をふりまくスペイン女。
 
 とんでもない、きみ、彼女はきみには向かない。だがせめて、この警官を詰め込んで、家にはこんでいけたらなあ!

<カスティーリャ地方>
 そうだ、わたしはスペインを旅したのだ。
 そのことについては、自分自身でもたしかにそう思うし、スペインを旅行した多くの証拠も、たとえばスーツケースに貼るあちこちのホテルのラベルも持っている。にもかかわらず、スペインの地は、わたしにとって、見通しのきかぬ神秘のヴェールにつつまれている。

 その最大の理由は、わたしがスペイン国内に足を踏み入れたときも、スペインの地から出てきたときも、夜の闇が支配していたからである。わたしたちはまるで、目かくしされて、アケローン川(冥界の川)を越えたり、夢の山を通過しているようだった。

 わたしは窓外の暗闇から、なにかを見分けようと試みた。むき出しの山腹に、なにか、しわが寄って黒く汚れたようなものが見えた。岩だったか、木だったか、大きな動物だったかもしれない。それらの山々は、きびしく、不思議な構造を持っていた。
(中略)

 やがて、もう一度目をさまし、窓ごしに外を見たとき、わたしは、熱病にかかったのではなく、別の土地にいるのだということがわかった。その土地とは、ピレネーの南、アフリカなのである。

 どう言ったらよいか、わたしにはわからない。その土地は緑だが、わたしたちの土地との緑とは異なって、暗く灰色がかっている。その土地は褐色だが、わたしたちの土地とは異なる。それは耕土の褐色ではなく、岩と黄土の褐色だ。その地には赤い岩山があるが、その赤さはどこか哀愁をただよわせている。

 そしてその地には山があるが、その山々は、たんなる岩山ではなく、厚い粘土質と玉石でできている。それらの玉石は、地面から生れてきたのではなく、まるで、天から降ってきたかのように見える。その山脈は、シェラ・デ・グアダラマと呼ばれる。

 その山脈をつくった神様は、たいへんな力持ちであったにちがいない。そうでなかったら、どうしてこれだけの石を積み上げられたろう!

 玉石のあいだに、ふつうのカシが生えている。ほかにはもう、ほとんどなにもない。ただ、タチジャコウと、ブライヤーだけだ。その地は、荒れ果てて大きく、砂漠のように乾いており、シナイ半島のように神秘的である。
 わたしには、どう言ったらよいか、わからない。そこは、別の大陸だ。とてもヨーロッパとは思えない。そこはヨーロッパよりもきびしく、恐ろしく、ヨーロッパより古い。

 とはいえ、メランコリックな不毛の地ではない。栄光にみちていて、奇妙で、粗野でありながら、気高い。黒衣をまとった人たち、黒い山羊、黒い豚が、熱い褐色の背景から浮かびあがる。燃えるような石のあいだで、苦しくも黒く燻される生活。

 ここかしこ、小川が流れているのではなく、ごろごろした丸石が集まっているのであり、平野ではなく、むき出しの岩場であったりする。カスティーリャの民家は、石造りの荒壁である。


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