『あやしい探検隊アフリカ乱入』3
<『あやしい探検隊アフリカ乱入』3>
図書館で『あやしい探検隊アフリカ乱入』という文庫本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、カラー写真の集中的収録部分と沢野画伯のヘタウマ挿絵が見られて、思いのほかビジュアル本になっているのが・・・・ええでぇ♪
キリマンジャロ
「第2章 キリマンジャロでたとこ勝負」を、覗いてみましょう。
『あやしい探検隊アフリカ乱入』2:マサイ族の生活
『あやしい探検隊アフリカ乱入』1:ボンベイのイミグレーション
図書館で『あやしい探検隊アフリカ乱入』という文庫本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、カラー写真の集中的収録部分と沢野画伯のヘタウマ挿絵が見られて、思いのほかビジュアル本になっているのが・・・・ええでぇ♪
【あやしい探検隊アフリカ乱入】 ![]() 椎名誠著、角川書店、1995年刊 <「BOOK」データベース>より マサイ族の正しい雄姿をこの目で見たい、と過激に果敢にアフリカ入りした、椎名隊長率いるあやしい探検隊の五人の面々。万事、出たとこ勝負、気分はポレポレ。サファリを歩き、野獣と遊び、マサイと話し、キリマンジャロの頂に雪を見るというような至福の日々に、思いもかけない“災い”も待っていた―。大胆不敵でありながら、哀愁にみちた「あやしい探検隊記」の第五弾、ますます楽しい熱風草原の巻。 <読む前の大使寸評> ぱらぱらとめくってみると、カラー写真の集中的収録部分と沢野画伯のヘタウマ挿絵が見られて、思いのほかビジュアル本になっているのが・・・・ええでぇ♪ amazonあやしい探検隊アフリカ乱入 |

「第2章 キリマンジャロでたとこ勝負」を、覗いてみましょう。
p149~153 <第2キャンプでダメ化する> 翌日、ビスケットと紅茶の食事をすませて、7時20分に出発した。樹林帯の急登を抜けると、30分ほどでふいに視界が開け、広々とした草原に出た。風が我々を「よく来た、よく来た」と歓迎するように、すばやく正面から吹き広がり、その向こうに雪をいただいたキリマンジャロの雄姿が望まれた。 右方向にゴツゴツしたマウエンジ峰(5150メートル)が見える。マウエンジは雲をまとい、キボ峰(5895メートル)のどちらかというと台形でなだらかに見える形とは対照的である。 「ワーッ」と、我々はきわめて素朴に、素直に、単純に異口同音の喜びの声をあげた。アフリカに入って2週間目、やっといま我々は本命の目標をこの目で見たのである。 どんどん日差しが強くなっていき、風が時おりうなりをあげて吹きわたっていく。名前のよくわからない植物が視界の左右に広がり、巨大なカラスが戦闘機のように急角度に飛び上がったりしている。 前の日までの樹林帯に囲まれた、どちらかというと閉鎖的な風景とはうって変わって、あたりは気が抜けるような開放的な世界であった。歩いていく方向にたえずキリマンジャロがある。常に目標の山をながめながら前進していくという登山はわかりやすくていい。 「さすがにでっかい国のでっかい山だなあ」と、歩きながら考えていた。これまで登った日本のいくつかの山行では、行けども行けども目的の山が見えず、やっと「あれか」と思って迫っていくと「違うんだもんね、あれはにせ××岳だもんね」などと言われて、よく欺かれた。ああいうせせっこましいあざとさがないのがとにかくいい。 途中に水場があった。なんの変哲もない、荒くれた草原の途中にふいに水の出てくるパイプがあり、そこからボコボコと気分のいい音をたてて冷たい水が流れ落ちてくる。「ヤデウデシヤ」と、両手を差しのべ、顔を洗い、二の腕まで水にひたし水を飲む。 その合間にも、体の内側まで突き刺してくるようなムキダシ型のアフリカの陽光があたりにまんべんなくふり注ぎ、風がくねって四方八方を吹きわたり、物音は何もしない。 夕べ、前後をあやしく激しく行き来していた各国入り乱れての登山隊も、きょうは出発時間がまちまちだったのか、あるいは歩くスピードがそれぞれ恐ろしく格差が出てきているのか、あたりにはほとんど見あたらない。 5時間でホロンボ・ハット(3750メートル)に着いた。着いてわかったのだが、その日何隊か出た各国パーティの中では我々が先頭だった。 うれしいことに、ここにもビールがあった。さっそくエドウィンが「ほな行ってきますねん」と言ってビールを買いにいき、我々のコテージに運び込む。この高度で登山前にビールを飲むバカは、我々と陽気でスケベなイタリア・チームだけである。 ドイツ人チームは相変わらずむずかしい顔をしてクラッカーを食べ、「デカルト、パンセ、モーツァルト・・・」とつぶやきながら詩の本を読んでいた。胴長のオーストラリア・チームはバケツを持ってウロウロ歩き回っていた。 ウィスキーの残りを飲み、ふたたびマサイ族とアフリカの未来の話をしつつ眠る。 明日は4740メートルまで行くのだ。我々のチームの中でぼくと三島が自己最高の高さである。 翌日も陽光強く、風は正面から吹きつけていた。足取りも決して軽くはないが、まあなかなかのものである。道の両側に広がっていたドライフラワーのような植物はだんだん姿を消し、いよいよ赤茶けた砂と石だらけの道になった。マウエンジ峰にはたえず白い雲がまとわりつき、そのあたりの強風にどんどん姿を変えているのが見える。背後の空は黒いような、すごいブルーである。何年か前に見たパタゴニアのパイネ山群の光景によく似ている。 昼過ぎ、いよいよキリマンジャロの全貌が見えてきた。雲が流れ、影が地表を走る。頭に荷物を乗せたポーターの姿がキリマンジャロに向かって点、点、点と続く。遠く雲海が見える。 午後二時頃にキボ・ハットに着いた。 |
『あやしい探検隊アフリカ乱入』2:マサイ族の生活
『あやしい探検隊アフリカ乱入』1:ボンベイのイミグレーション
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