『昭和の刻印』4

<『昭和の刻印』4>
図書館で『昭和の刻印』という本を、手にしたのです。
副題が「変容する景観の記憶」となっているが・・・
自分の来し方を重ねて見るのも一興かと思うのでおます♪



【昭和の刻印】
昭和

窪田陽一著、柏書房、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
東京オリンピックを機に突如出現した未来的な景観は、半世紀を経て、昭和の面影を今に伝える証しとなった。戦後日本の国土開発を見つめ直し、時代の来し方行く末を考える、珠玉のエッセイ。カラー写真多数収録。

<読む前の大使寸評>
副題が「変容する景観の記憶」となっているが・・・
自分の来し方を重ねて見るのも一興かと思うのでおます♪

amazon昭和の刻印

座漁荘座漁荘の展望

白砂青松の海岸は今どうなっているか、見てみましょう。
p245~252
<渚の行方【人工海岸】> 
 子供の頃、静岡に隠居していた祖父母のもとに逗留し、海や山へ遊びに行くことが毎夏の我が家の恒例行事だった。海水浴には三保や袖師が定番だったが、磯遊びに興じた興津には度々訪れたところがあった。東海道から山の斜面を登ってすぐの所にある、古刹の清見寺がその一つ。そして明治の元老西園寺公望の別邸、座漁荘である。

 海を手前に富士を仰ぎ見る駿河湾沿いは、岩場と砂浜が交互に綾なす、日本の海岸風景の模範と言える海浜だった。興津は西に袖師の浜の渚が大らかな弧を描く海岸線に連なる磯で、打つ寄せる波飛沫が見える間合いで座漁荘は建っていた。
(中略)

 明治12年(1879)、お雇い外国人医師ベルツが片瀬東浜を医療目的の海水浴場適地としたことを契機に、湘南の浜辺が脚光を浴びるようになる。その後、自然を克服すべき相手として対峙する近代思想が色濃く社会を染めていく時勢の下、日清戦争勃発の明治27年に志賀重昴が世に問うた『日本風景論』以降、日本固有の風景に改めて眼差しが向けられ、海辺の風趣を追い求める識者が相次いだ。興津の座漁荘はその流れを汲むと言えよう。しかし昭和日本の海辺の近代化は、悦楽の場として海浜を見つめた欧米とは様相を異にした。

 まずもって、海岸浸食を防ぎ、陸地を維持するため、更には埋立てにより土地を生み出すために、大量のコンクリート構造物を海辺に投入して人工の海岸線を生み出し、国土を防御することを国も地方も最優先とした。万策を講じて海辺の土地を獲得しようとするこの趨勢が各地で卓越した戦後昭和に、天然の渚や磯は、波浪や海岸浸食への対策のため、硬派な堤防や消波ブロックに置換され、白砂青松の景観は激変したのだった。

 白砂青松と言われる海岸は、日本の各地にあるように思われるかも知れないが、岩場や磯も多い。しかも、磯の多くは黒色に近い暗い色をしている。そして、砂浜も必ずしも白くはない。火山国の日本では、砂の原材料となる岩石に、黒い石が多く含まれているため、太陽に照らされて乾燥していれば白く見えることもあるが、濡れていれば黒っぽく見える。

 フランスの友人の娘姉妹が日本に来た時、「日本の砂浜は黒っぽくて、あまり歩きたいとは思わない」と言った。なぜかと訊ねたらところ、「流出した石油か何かで汚れているような気がする」という、ややショッキングな答えが返ってきた。
 高校時代の級友の外科医に、医院兼住宅の設計を頼まれ、ちょうどその地鎮祭がとり行われることになったため、二人を現地へ連れて行った時の話である。
(中略)

 感性の歴史学を紐解いたフランスの歴史学者アラン・コルバンは大著『浜辺の誕生』で、恐怖と嫌悪の対象だった浜辺を、近代社会が海辺のリゾートに変容させた過程を活写している。浜辺は、海と空の陸の狭間で、自然の諸力と人間の欲望が交錯する場となり、近代を謳歌する社交と愉悦の空間を形成した。イギリスのブライトン、フランスのビアリッツやアルカシォン、地中海のカンヌ、オランダのスヘヴェニンゲンなど、各地を彩る艶やかな海辺は国を越えて今も人々を惹きつけている。

 これらのリゾート地の港や海岸線には、ほぼ例外なく、コンクリートが剥き出しで見える所はない。見えるとしても見ようと思わなければ気がつかないように、自然の岩を表面に積み上げて隠している。渚の姿が経済価値に直結する所では、場違いはまかりならぬ所業に扱われるということのようだ。風景価値の生成過程を厳しく見つめた公共投資が、世界にはある、という実例である。


『昭和の刻印』3:庭のある街【郊外住宅地開発】
『昭和の刻印』2:団地の風景(続き)
『昭和の刻印』1:団地の風景

住宅の行く末を考える意味で『人口減少時代の住宅政策』という本を見てみましょう。
『人口減少時代の住宅政策』1:住宅問題の概観p6~7、黎明期のプレハブ住宅p68~69、現代の時代状況p160~161、これからの住宅課題p215
『人口減少時代の住宅政策』2:コンパクトシティ論p174~175
『人口減少時代の住宅政策』3:これからの民間市場政策の方向性p190~191、今後の住宅政策の課題p195~196

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