『神戸ものがたり』4

<『神戸ものがたり』4>
図書館で『神戸ものがたり』という本を、手にしたのです。
おお 神戸っ子でもある陳舜臣さんが案内する(昔の)神戸とはいかなるものか…期待できそうやでぇ♪


【神戸ものがたり】
ものがたり

陳舜臣著、平凡社、1998年刊

<「BOOK」データベース>より
【目次】
新しい土地/金星台から/異人館地帯/南北の道/布引と六甲/二つの海/軽い精神/あの町この町/そぞろ歩き/水と火/ふりむかず/一月十七日のこと

<読む前の大使寸評>
神戸っ子でもある陳舜臣さんが案内する(昔の)神戸とはいかなるものか…期待できそうやでぇ♪

rakuten神戸ものがたり



ドングリ国(三宮の西隣)がピンポイントに語られているので、見てみましょう。
p153~157
<あの町この町>
 東京あたりでは、神戸といえば年輩の人はすぐに元町のショッピングを連想するようだ。それほど神戸のモトマチは、ほかの土地の人にも親しまれている。

 東の1丁目から西の6丁目にいたるまで、鈴蘭型に電灯をいくつもぶらさげた灯柱がならび、雨の日などは、とくに風情があった。元町情緒のなかで、雨の日が最高だったのではあるまいか。雨に濡れた歩道のうえに、灯火の影が映って、それが思い思いにゆがんでいた。
 しかしいまはそんな風情もなくなった。戦災後、鈴蘭灯はついに復活しなかった。世は蛍光灯の時代となったのである。しかも元町は、もう雨に濡れることもなくなった。アーケードがすっぽり歩道のうえにかぶせられたのだ。

 舶来品で、日本じゅうさがしてもここでしか売っていないというのがあったが、そんな商品もめっきりすくなくなった。むかしはカミッソリの刃にしても、ジレットはレンクロフォード商会、バーレイは丸善にしか置いてなかったが、いまはその程度の著名商品なら、田舎町でも売っている。
(中略)

 ちかごろ、すこし気がかりなことがある。いま4丁目から以西、6丁目にいたるまでは、昔日の活気を失っているとおぼしい点である。おなじ元町でも、西に行くに従って、さびれているようだ。
 これはさきにものべた、神戸の重心の東漸と大いに関係がある。元町の東部、すなわち1、2丁目は、港と結びつき、5、6丁目という西部は、旧市役所、湊川神社、神戸駅などと結ばれている。楠公さんを中心とする旧都心が衰微の傾向をみせている以上、元町の西側は、その影響を受けざるを得ない。

 6丁目の出口に、三越がある。天下の三越のことだから、支店を設けるとき、ここを神戸の最繁華地と判定したのであろう。西は楠公さんとその前の殷賑な多聞通りをひかえ、東は6丁にわたる元町をしたがえ、まさに扇の要のような絶好の場所である。が、あにはからんや、西側が振るわなくなった。とくに戦後、多聞通りの焼跡が米軍に接収され、長いあいだキャンプになってからは、再起不能に近いかとも思えた。

 港が神戸をひきよせる。どうしても港のほうに重心が傾くのは、神戸の宿命であろう。そのうえ、遠くはなれた大阪までが、神戸の都心をたぐりよせようとする。たいていの人は、引っ越しをするさい、西方へ移るのは二の足をふむ。大阪が遠くなる感じがするのである。そんなにしばしば大阪に行くことはないのだが、西へ行けば大阪から離れるという辺鄙感はどうしようもない。
(中略)

 ここにおいて脚光を浴びるのが、西神住宅地化である。ポートアイランドの埋め立て用の土砂を採った高倉山跡なども、いまは団地化された。とかく軽くなる傾向のあった西に、一つの分銅が秤にのせられた感じである。東西に長い神戸のまちは、そのバランスをとるのが宿命的な課題でありつづけるだろう。

 元町6丁目の三越の話が出たついでだが、筆者は幼年時代、そのあたりに住んでいた。白鶴の酒蔵の裏である。小学校にあがるまえだから、記憶もさだかではない。ただ三越の1階にこどもの赤い靴が陳列してあって、それがほしくてたまらなかったことを覚えている。父にねだるとお正月に買ってやるという。それまで売れるとアウトなので、毎朝、三越の開店とともにかけこんで、赤い靴の健在をたしかめたものだ。

 ところがある朝、陳列ケースからその赤い靴が忽然とすがたを消したのである。こどもの筆者には、それは天地がひっくり返ったようなショックであった。生れてはじめての挫折である。

ウーム 三越や楠公さんあたりに神戸の重心があったのか…そう感じたのは、我々より上の世代なんでしょうね。


『神戸ものがたり』1:三宮~新開地そぞろ歩き
『神戸ものがたり』2:昭和13年の大水害
『神戸ものがたり』3:阪神・淡路大震災の跡

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