『小川洋子対話集』4

<『小川洋子対話集』4>
図書館で『小川洋子対話集』という本を、手にしたのです。
小川洋子対話集ってか…目次を見ると対話者が異色で、期待できそうである♪


【小川洋子対話集】
小川

小川洋子著、幻冬舎、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
日ごろ孤独に仕事をしている著者が、詩人、翻訳家、ミュージシャン、スポーツ選手と語り合った。キョロキョロして落ち着きがなかった子供時代のこと、想像力をかきたてられる言葉や文体について、愛する阪神タイガースへの熱い想い、名作『博士の愛した数式』秘話など心に残るエピソードが満載。世界の深みと、新たな発見に心震える珠玉の対話集。

<読む前の大使寸評>
小川洋子対話集ってか…目次を見ると対話者が異色で、期待できそうである♪

amazon小川洋子対話集


翻訳家の岸本佐知子さんとの対談を、見てみましょう。
p48~51
<魂を読む翻訳者vs妖気を漂わす作家>
岸本:私だけかもしれないんですけど、翻訳者は<空っぽ>な人のほうが向いてると思うことがあるんです。私、本当に空っぽで何もないんですよ。

小川:たくさん言葉が詰まっていそうですけど。

岸本:私はいつも「つぼ」という言葉で考えているんですが、翻訳者というのは中身が空っぽのつぼみたいなもので、棒でコンと叩くと共鳴して音が鳴る。その棒が作品で、音が翻訳の出てきた結果である、ということを考えたんですけど…。

小川:なるほどね。空っぽのほうがよく共鳴する。余計な不純物がなにかあると、音が濁っちゃうから。

岸本:ええ、でもこの「つぼ理論」、ほうぼうで言ってみたけど誰にも賛同してもらえなかったので「超つぼ理論」というのを考えまして。どういうのかというと、つぼのなかにはなみなみと水が蓄えられているんだと。

 つまり、なかにはいろんな言葉が溜まっていて、それがいっぱいになってほど澄んだいい音がするんだって。これも賛同者はいなかったんですけどね(笑)。

小川:その言葉もあまり手垢が付いたものじゃなくて、言葉の原始の姿に近い言葉といいますか、言葉本来の特性を失っていない言葉のほうがいいのかしら?

岸本:うーん、でも私がそのつぼに溜めている言葉のなかには、汚い言葉や陳腐な表現もいっぱいあるんですよ。ギャルがテレビで喋っている言葉とか(笑)。あ、我ながらいい訳語を思いついちゃったぞっていうのが、実は昔、漫画で読んだフレーズだったり、雑誌のキャプションだったりすることがけっこうあります。

小川:だから、どこに宝石が落ちているかわからないってことですよね。

岸本:ええ、だから、いろんなタイプの言葉をごちゃごちゃに入れておいたほうがいいんじゃないかなって思うんです。

小川:なるほどね。変な常識で取捨選択せずにね。ところっで、私は英語が全然できないのでわからないんですけど、英語の文体の違いって、どういうところに現れるものなんですか?

岸本:(困って)わぁー、それを訊かれると、私もそんなに英語がすごくできるわけじゃないので。

小川:またぁー。

岸本:ほんとですよ。海外に住んだこともないし、あの、陸サーファーみたいなもんですね。

小川:アッハッハ、オカ翻訳者なんですね。

岸本:ええ。でも何となく響いてくるものが違うんです。原文を読んでいると、何かが自分のなかで共鳴している感じがすることがある。もっとアカデミックな訓練を積んでいる方だったら、関係代名詞の使い方とかから論理的に説明できるのかもしれないですが…。でも何となく立ち昇ってくる…何でしょう、波長ですかねえ。

小川:言われてみれば、日本語もそれぞれみんな個性があって、自分の好きな文体とかリズムのある文章がありますものね。でも、じゃあこっちの嫌いなのとはどう違うの?って問われると、説明するのは難しい。日本語と同じように英語にもおれがあるんですねぇ。

岸本:ええ、あると思います。それは数を読んでいるうちに、わかってくるのかもしれませんけれども…って、それほどの数も読んでいないけど(笑)。言葉のリズムなんかはわかりやすいですね。あとは何となく否応なしに行間からにじんでくるその人の魂みたいなものは、やっぱりあるんじゃないでしょうか。

小川:ほう、魂まで読んじゃう。だからもしかしたらね、書いた作者よりも翻訳者のほうが作品の深いところまでいってるんじゃないかって思うことがある。

岸本:あ、それはあります。作者以外だったら、たぶんこの作品について自分が一番深いところまで読んでるなって。でも、もしかしたら作者だってここまで考えてないかも?って思うこともありますね。

小川:ええ、さっきも言いましたけれど、私も作品を書いてる時に、作品自体が持っている力に導かれて、あとを追いかける感じで書くことがある。それで後ろを振り返った時、どうしてこうなったのか説明がつかないまま、とにかく、書けたから書けたものとして次へ行くんです。

 翻訳者の方はね、そういうふうに作家がほとんど無意識のうちに導かれて、手を引かれて歩いた道筋を意識的にたどり直さなければいけないんでしょうね。
 

『小川洋子対話集』1:翻訳家の柴田元幸さん、作家のレベッカ・ブラウンさんとの対談
『小川洋子対話集』2:翻訳家の柴田元幸さん、作家のレベッカ・ブラウンさんとの対談の続き
『小川洋子対話集』3:田辺聖子さんとの対談

この本も小川洋子ミニブームに収めるものとします。

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