『対談 中国を考える』5

<『対談 中国を考える』5>
図書館で『対談 中国を考える』という文庫本を、手にしたのです。
とにかく…
中国に関する対談としては、近年においてベストのお二人ではないだろうか♪

よくよく調べてみると、この本は去年の6月に借りていました。で、(その5
)とします。

【対談 中国を考える】
対談

司馬遼太郎×陳舜臣著、文藝春秋、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
古来、日本と中国は密接な関係を保ってきた。だが現実には、中国人は日本にとって極めて判りにくい民族なのではないか。ぶつからないためには理解すること、理解するためには知ることー両国の歴史に造詣の深い二大家が、この隣人をどのように捉えるべきか、長い歴史を踏まえて深く思索する中国論・日本論。

<読む前の大使寸評>
とにかく…
中国に関する対談としては、近年においてベストのお二人ではないだろうか♪

rakuten対談 中国を考える


大使のツボは漢字や言語なんだけど、そのあたりを見てみましょう。
p60~62
<翻訳語では中国より日本がうまい> 
司馬:産業革命がアジアに及んできて、中国が阿片戦争をしたことが、日本における幕末のいわゆる志士たちを奮起させることになるわけだけれども、日本は日本でいち早く西洋化したわけだ。それが中国にとってサンプルになったことは確かだね。

 明治7年にフランスからルッソーを持ち帰った中江兆民が、ルッソーの「民約論」を兆民流に演述するんだけど、それは漢文でなきゃしようがなかったわけね。漢文にはルッソーの概念をあらわすだけの抽象性の高い語彙があるわけだ。彼は非常に漢文のできる人だったけれども、もう一度勉強し直して、なるべく造語をつくらない、古い中国の哲学用語を使うということで書いている。これは長いものではないけれども、明治の名漢文の一つだろうと思うけど、そういう努力があったわけ。

 ところが、そのあとに、どっと「哲学」とかいろんな言葉が入ってきて、どんどん翻訳していく。洋学をやっているけれども、漢学の素養がキチッとある西周などという人たちが、西洋の新しい概念を漢語に翻訳していくんですね。その翻訳語を大正時代ぐらいになって中国が拾う。

陳:マルクスを最初に訳したのも漢文ですってね。

司馬:中国が奮起するのは大正時代ぐらいになってからだが、同じ文字を使っているということで、日本人がつくった言葉を中国は逆輸入する。憲法、文学、哲学という言葉がそうだし、また古くからあった人民、共和という言葉も新しい概念を持って再生される。ほとんどの言葉がそうだと思うな。だから、朝鮮民主主義人民共和国という国名も「朝鮮」を除いては全部明治の日本人がつくった翻訳語ですね。陳さんのおっしゃることですけれども、文明は共有されてはじめて文明といえるわけで、日本もこの点ですこし中国、朝鮮にお返しできたようでもある。

陳:共和という言葉は周の時代にあったんだが、二人の皇族がいっしょに政治を司るという意味ですからね。

司馬:幕末でもそのつもりでつかっていた。「君臣共和」だから共和性の共和じゃないけれど、明治2年、横井小楠が京都で保守派の激徒に殺されたとき、激徒の斬奸状では「共和をとなえた」とある。このときの共和は「史記」などに出てくる共和からリパブリックへ近づいているような気がする。

 ともかく、概念の翻訳というのは、中国人がやっても日本の漢学者がやっても同じ作業になってしまうわけだけれども、同じ近代化の必用に迫られながら、どっちが先にやるかということが重要ですね。陳さんが前にいったことがあるけれど、日本は小さいから近代化が早くやれた、中国は大きいから遅くなってしまったということだろうね。

陳:あのときは中国は文化逆流と受け取ったね。ちょっと翻訳を手がけた連中でも、日本の術語にかなわなかったわけですよ。日本はエコノミーを「経済」、中国は「理財」という訳し方をしていたけれど、しだいに「経済」に圧倒されてしまったね。

司馬:「経済」っていうのもおかしな翻訳のようですな。福沢諭吉ははじめから中国の訳のとおり「理財」をとっている。ですから慶応義塾は大正末年まで理財科があった。「経済」は明治5、6年に使われ出して、6年に江藤新平と井上馨が大ゲンカしている。

 井上は才気だけで革命時代を渡ってきた人ですが、江藤という人は大変漢学の素養がある人で、西郷隆盛もそうだったんですが、漢学を通して西洋を学んでも大筋というか根本は理解しうるんだという自信を持っていた。当時、大蔵大輔の井上が「経済、経済」と言っているのに、司法卿の江藤がひっかかって、一体お前は「経済」という言葉の原典を知っているのか、「経済」というのは字のとおり、「経世済民」のことだ、これは儒教の根本である。お前が使っているのは商売のことじゃないか(笑)。漢籍にくらい井上はシュンとしたそうだけれども。

陳:中国ではそういう語彙の点でも日本に押し流された。文化逆流ですね。


『中国を考える』1:海や島を恐れる漢民族p41~44
『中国を考える』2:宋のナショナリズムや尊皇攘夷p66~69
『対談 中国を考える』3:シルクロード、その歴史と魅力p199~203
『対談 中国を考える』4:海や島を恐れる漢民族(再掲)p41~44

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