『亜米利加ニモ負ケズ』

<『亜米利加ニモ負ケズ』>
図書館に予約していた『亜米利加ニモ負ケズ』という本を、待つこと3日の超速でゲットしたのです。
著者のアーサー・ビナードと言えば・・・・
宮沢賢治やベン・シャーンの紹介、自身の詩作で知られる、日本語ぺらぺらの詩人ではないか♪ 


【亜米利加ニモ負ケズ】
sアメリカ

アーサー・ビナード著、日本経済新聞出版社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
「日本人」のあなたのルーツは、日本語のどこにある?「アメリカン」の意味は、これからどこへ広がる?生活の根っこをさぐり、ユーモアの種を大胆にまくこの一冊から、本物の「対等な日米関係」が始まる!最新エッセイ集。

<読む前の大使寸評>
著者のアーサー・ビナードと言えば・・・・
宮沢賢治やベン・シャーンの紹介、自身の詩作で知られる、日本語ぺらぺらの詩人ではないか♪ 

<図書館予約:(3/02予約、3/05受取)>

amazon亜米利加ニモ負ケズ


エッセイの一つを、見てみましょう。
p125~128
<ソバガキソング>
 「上を向いて歩こう」のイングリッシュバージョンを作った人は、おそらく日本語のにの字も知らなかっただろう。

 坂本九の唄が聞き取れず、レコードジャケットに印刷された永六輔の歌詞も読めず、ただ中村八大のメロディーに合わせて、英語で失恋の歌詞をつづっただけではないか。

 「ぼくがこんなに落ち込んでブルーなのは、きみのせいだ。きみと会えなくなって、毎日ぼくの心は雨模様。きみは永遠に知らない、ぼくがどんなにきみのことを愛しているのか」と、そんな惚れたはれたの文句が延々とつづく。
 最後まで聞いて、ひとつの疑問がわく。鍋も牛肉も豆腐も、ネギの1本だって出てこないのに、いったいどこがSukiyaki Songか。

 そのタイトルが気になって、いつかクリスマスに一時帰国した際、ぼくは親類を対象に「スキヤキって何?」の聞き取り調査を行った。伯母の回答が典型的だった。
 「スキヤキって日本のものよ・・・・それは、えーっと・・・・料理かしら」

 多くのアメリカ人の頭には、具体的に鍋料理が浮かぶのではなく、漠然とした「ジャパニーズ」の雰囲気がかもし出される程度。Sukiyaki SongでもTempura Songでもよかっただろうが、そうすると逆に分かりすぎてしまい、Fujiyama Songもしかり。意味に邪魔されないですむイメージがほしくてSukiyakiに白羽の矢が立ったみたいだ。

 調査したあと、その結果をまとめようと思い、まず百科事典を引いてそこで初めて、「すきやき」の漢字表記を知った。「好き焼き」ではなく、「鋤焼き」と書くのだ。むかし、鉄鍋の代わりに鋤の幅広い刃を用いて、肉を焼いたことからの名称らしい。

 その一風変わった語源説に、ぼくはにわかに納得した。というのは英語にも、農具が調理器具に代用された話が伝わるからだ。

 「ホットケーキ」のことを、現代のアメリカ人はpancakesともhot cakesとも呼ぶが、古くからhoe cakesのネーミングも使われてきた。hoeとは、土を掘り起こすための「鍬」。畑の隅で火を焚き、鍬の刃で焼いたホットケーキが、「鍬焼き」と名づけられたわけだ。

 ぼくはフライパンでしか焼いたことがないが、ホットケーキの腕にはそこそこ自信がある。ミシガンの釣り小屋での朝食は、ホットケーキと相場が決まっていて、その担当がいつからか長男のぼくの仕事と定められた。

小麦粉と卵、牛乳とベーキングパウダー、少々の砂糖と塩さえあれば、充分おいしくできる。けれどソバ粉が加わると、香ばしさは倍増して、メープルシロップも引き立って絶品の域に入る。一度食べたら、ホットケーキはソバ粉入りbuckwheat cakesに限ると、自然と思えるのだ。

 wheatイコール「小麦」。そしてその頭についてるbuckは、「ブナ」を意味するbeechが変形したものらしい。
 ブナの木とソバと、どこが類似しているかというと、種の形だ。ブナの実は三角形で、そのとがった稜が目立ち、ソバの実もそれをうんと縮小した感じだ。したがって「ブナ麦」と呼ばれる。

 日本語の「ソバ」の語源を調べてみると、着眼点はまったく同じだ。「そばだつ」や「聳える」とルーツがいっしょで、とんがった「稜(そば)を持つ実」としてそう呼ばれた。
 ついでに「ブナ」のことも調べれば、その古称の「そば」とか「そばの木」があり、漢字で書けば、やはり同根の「稜」。つまりbuckwheatという英語の「ブナ麦」の視点が、最初から日本語にも組み込まれていたのだ。

 日本に住む喜びのひとつは、好きなbuckwheatをヌードルの形でいつでも食べられること。来日してからぼくは練習に練習を重ねて、啜る音を一人前に立てられるようになった。それから2年目の冬だったか、東京の友人にアメリカのソバ粉入りホットケーキの話をしたら、日本の伝統食の「そばがき」のことを教わった。醤油味が一般的のようだが、友人は黒砂糖を入れて作ってくれた。
 
 香り豊かなオートミールとして、「そばがき」がもしアメリカで紹介されれば、ブレックファストに食べる人が出てくるのではないかと思う。ローマ字に置き換えてもSobagakiという響きが魅力的で、うまくいけば歌のタイトルに抜擢されることもありうるか。

 願わくは失恋じゃなくて、もっと楽しい内容がよろしいが。


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック