『世界の辺境とハードボイルド室町時代』3

<『世界の辺境とハードボイルド室町時代』3>
図書館に予約していた『世界の辺境とハードボイルド室町時代』という本をゲットしたのです。
これまで高野さんの本を3冊よんでいるがどれも面白かった。・・・この高野さんの対談本も面白いはずである。


【世界の辺境とハードボイルド室町時代】
高野

高野秀行, 清水克行著、集英社、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
人々の心の動きから法体系まで、こんなにも似ている社会が時空を超えて存在したとは!その驚きからノンフィクション作家と歴史家が世界の辺境と日本史を徹底比較。辺境を知れば日本史の謎が、日本史を知れば、辺境の謎が解けてきた…。
【目次】
第1章 かぶりすぎている室町社会とソマリ社会/第2章 未来に向かってバックせよ!/第3章 伊達政宗のイタい恋/第4章 独裁者は平和がお好き/第5章 異端のふたりにできること/第6章 むしろ特殊な現代日本

<読む前の大使寸評>
これまで高野さんの本を3冊よんでいるがどれも面白かった。・・・この高野さんの対談本も面白いはずである。

<図書館予約:(3/28予約、6/16受取)>

rakuten世界の辺境とハードボイルド室町時代

 
刀狩りとかかぶき者のあたりを見てみましょう。
p54~57
<戦いの世の終わらせ方>より
高野:僕が刀狩りに興味をもったのは、戦争を終結させる最大の問題が武装解除だからなんです。戦争が終わっても、兵隊と武器が残っちゃって、それをどうするかっていうのは今でも大問題じゃないですか。その状態が一番危険で、戦争が終わった後の方が治安が悪くなるケースもよくあるわけですよね。

 日本の戦国時代が終わっていく過程でも、あぶれちゃった牢人をどうするかということが大変なテーマだったに違いないと思うんです。

清水:武士は職業軍人ですし、牢人になったとしても戦うための力や技を備えている。その職業だけをいきなり奪ったからといっても、じゃあ彼らが一般社会にすぐに溶け込めるかというと、やはりそれは難しいですよね。だから、まず武士たちのあり余るエネルギーを放出させなくてはいけないという理由で秀吉の朝鮮出兵は行われたというのが藤木さんの説です。

 あり余ったエネルギーを外にでも向けないと、とてもじゃないけど治安が保てないから。戦争は始めるより終わらせる方が難しいんです。

高野:ソマリランドでもいろいろと紆余曲折はあったようなんです。最初のうちはやっぱり民兵が山賊みたいになって、勝手に関所をつくって人々からお金を巻き上げたりしていたみたいですけど、徐々に正規兵として、あるいは警察官として吸収していって、国の安全を守る人たちに再編成していった。それがわりとうまくいったんですね。

清水:『謎の独立国家ソマリランド』の中で、高野さんは、モガディショの氏族自治区で出会った民兵を「かぶき者」にたとえていますよね。わざと着崩した服装をしたり、女物のスカーフを頭に巻きつけたりしているという。その風体をかぶき者になぞらえたのは言い得て妙だなあと思いました。

 江戸時代初期に現れたかぶき者は戦国時代の兵士の生き残りみたいなもので、街をふらふらして愚連隊みたいな振る舞いをしていたんですが、元禄期に入ってもまだそういう連中がいて、社会問題になるんですよね。

高野:元禄までそういう風潮があったんですか。

清水:ええ。実際に彼らはもう従軍経験なんかない世代なんですが、それでも同時代に対する反発から戦国時代風の義侠心や男気にあこがれるんですね。刀のさやに「生きすぎたりや二十五」なんて書いたりして、死に急ぎたがるんですよ。

 あと、かぶき者は犬を食べるんですね。中世の日本人はわりとふつうに犬を食べていて、江戸時代になると食べなくなるんですが、かぶき者はわざと食べるんです。「戦国っぽい料理だから」という理由で。みんなで犬鍋か何かを囲んでわいわい騒いで、「俺たち、ぐれてるぜ」という雰囲気を出す。「かぶく」という行為を犬食に象徴させていたんです。

 だから、五代将軍徳川綱吉が「生類憐れみの令」を出して犬を殺すことを禁じたのは、かぶき者対策だったんじゃないかとも考えられているんです。かぶき者は辻斬りや犬でためし斬りをするような連中ですから、取り締まる必要がありました。そのために綱吉はあの法令を出したんじゃないか。

 戦国時代は百年も前に終わったのに、何をやっているんだというのが彼のメッセージで、そのためのシンボルが犬だったんじゃないかって、近年は言われていますね。

高野:歴史の解釈もどんどん変わっていくんですね(笑)。

清水:綱吉のやり方はちょっとエキセントリックだし、やりすぎなところもあったから、人々の反感を買ったことは間違いないんですよ。あと、あの人の治世には、富士山の噴火とか地震とかいろいろな天変地異も起きたんで、悪いことの一切合財が綱吉のせいにされてしまった面もあったんですよね。

 しかし、犬は殺してはいけませんとか、捨て子をしてはいけません、といった政策を打ち出したのは、都市治安対策、人心教化策として、ある程度成功したんだろうと近年では評価されていますね。

高野:一般的な評価とは違うものなんですね。

清水:一般にはまだあまり浸透していないかもしれないですね。綱吉はキャラクター的には過剰なところがあるんで、あんまりいい人とは思えないんですけど、百年たってもなお残り続けていた戦国っぽい風潮をどうやってなくすかということを、たぶん考えていたんだと思います。


実践的な民俗学的フィールドワークのあたりを見てみましょう。
p259~261
<黄門様だった宮本常一>より
清水;僕らは大規模な調査をやるときには、上からと下からでやるんですよ。教育委員会とか名刺の利く世界からアプローチするグループと、それこそ宮本常一さんみたいにふらっと村に現れて人々に溶け込んでいくグループに分かれてやると、うまくいくことが多いんです。

高野:上からのアプローチだけだと、本当の話ってなかなか出てこないですよね。

清水;聞いた話なんで本当かどうかわからないんですけど、宮本常一さんがある学会調査に同行することになって、その頃の農村調査って、公民館みたいな所に人を集めて集団聞き取りをするっていう方法だったらしいんですけど、宮本さんはそこへは行かずに「ちょっと外を見てきます」って言って、夕方くらいまで出かけていたそうなんです。

 それで夜になって、聞き取りの成果を報告し合っているとき、誰かから「この村はこうらしいです」みたいな報告が上がると、宮本さんが「違うんじゃないかな」と異論を挟んで、確認してみると、宮本さんの方が正しかったっていう。

 公民館に集まってくる人っていうのは村の上層部の人たちで、そういう人たちからの情報は歪んでいたりすることもあるんですね。宮本さんは、村の中をふらふら歩いている間にいろいろ村人たちから聞いて、正しい情報をつかんでいた。まるで水戸黄門だっていう(笑)。

高野:すべてお見通し(笑)。「こういうことを聞きたいんだ」と言って人を集めちゃうと、公式声明みたいな情報しか得られなかったりするんですよね。

清水;あと、しゃべりたい人が来るんですよね。

高野:声のでかい人ですね。

清水;ええ。だから本当の生活者の声が聞けないことが往々にしてあるんですよね。

高野:その宮本常一の『忘れられた日本人』の冒頭の部分に、対馬で話し合いが行われるシーンがありますよ。

清水;はい、村人に古文書を見せてくれって頼んだんだけど、いつまでも話し合いをだらだらやっているという。

高野:コンゴに行ったときにそっくりなことを経験しました。湖に行くには許可がいるというんで、村の人たちに頼むと、延々と話をしてるんだけど、ちゃんとした議論になっていないんですよね、ぜんぜん。

清水;ああ、でもそれが大事なんでしょ。

高野:そうそう。休み時間になると、長老に促されて軒下に連れていかれて、いくらだとかって値段を提示されて、「それは高い」って言うと、また戻って議論して。あれ、本当に似てるなって思ったんですよ。

探検部出身の高野さんだから・・・・
好奇心のかたまりというか、民俗学的フィールドワークの素養があったんでしょうね♪
(間違う力も強かったりして)

この本も 高野秀行の世界R1に収めておきます。
『世界の辺境とハードボイルド室町時代』1
『世界の辺境とハードボイルド室町時代』2
 

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