『巨匠のメティエ・黒澤明』

<『巨匠のメティエ・黒澤明』>
図書館で『巨匠のメティエ・黒澤明』という本を手にしたのです。
黒澤天皇を支えたスタッフ、俳優たちへのインタビュー集であるが・・・まさに黒澤レジェンドという感があるのです。


【巨匠のメティエ・黒澤明】
黒澤

西村雄一郎著、フィルムア-ト社、1987年刊

<「BOOK」データベース>より
古書につき、データなし

<読む前の大使寸評>
黒澤天皇を支えたスタッフ、俳優たちへのインタビュー集であるが・・・まさに黒澤レジェンドという感があるのです。

rakuten巨匠のメティエ・黒澤明


大使としては美術が気になるので、美術の村木与四郎さんのところを見てみました。
p150~162
<村木与四郎>
Q:『蜘蛛巣城』の城門にしても、とてつもなく大きいですものね。

村木:実際、あんな巨大な門なんかありませんよ。黒澤さん何しろ大きいのや、太いのが好きみたい(笑)。

Q:それは、黒澤さんの視点を考えるうえで面白い事実ですね。

村木:『乱』でも、酒を注ぐ白磁の銚子を型にとらせて、実際焼かせて作らせたんです。それも、実際のよりかなり大きくて、図太い(笑)。

Q:そうすると、黒澤作品の場合でも、ずいぶん、史実と異なることがあるんですか?

村木:あります。大いにあります。『用心棒』の宿場の道の幅も、スクリーンがワイドだから、あれほど、広くしなければならなかったのです。『赤ひげ』の小石川養生所のセットにしても、実際の患者の部屋は少ないんですが、本に合わせて、部屋数を多くして、自由に出入りできるようにしたのです。養生所の制服も、まるっきり創作したもので、ああいう御仕着せ的なものがあったわけじゃない。その後、テレビの『赤ひげ』で、あのままの形で着せてましたけどね。手術台のセットにしても、当時は油紙を敷いて、手術していたんですが、それだと絵的に面白くないから、あんな形になったんです。

Q:つまり、視覚的にいかに写るかが優先するわけですね。
村木:そうです。

Q:クソリアリズムじゃない。

村木:それだと動きがとれないですよ。『蜘蛛巣城』の城郭にしても、清水寺のような長い束柱に支えられた舞台が面白い、と採用になったんです。

Q:『影武者』でも、天守閣がいろいろ出てきましたが、黒澤さんは、「天正年間の城は、山城で、平城の天守閣は本当はなかったが、それでは映画として面白くない」と、さかんにおっしゃってましたね。それが、封切られると、平城はおかしいと批判される。だから、時代考証家が実際とは違うと批判するのは、ナンセンスだという気がしますね。だけど、黒澤映画の場合、スクリーンに写ってしまうと、それが現実に存在したんじゃないかと思うくらいに説得力がある。これは、なぜですか?

村木:それは、理論的な裏づけができているからですよ。さっきもいったように、全くかけ離れたところから想像したものでなくて、

Q:その意味では、黒澤さんは一流の批評家でもありますね。

村木:そういうことです。

Q:じゃあ、黒澤さんは、相当な資料を持っておられるんですか?

村木:ものすごいですよ。美術書なんか、専門の僕でもかなわない。

Q:ユニークな発想も、それだけ資料を読みこなした上での発想なんですね。黒澤映画は、どこ切っても、黒澤さんの教養が出てますものね。

村木:なにしろ、黒澤さん、何かやり出すと、趣味でなくなっちゃいますからね。多摩川の鯉釣りやり始めたら、潜って鯉の道筋まで描いたりする(笑)。その時、スイス製のリールを使ったことから、『七人の侍』の矢のアイデアが出てきたんですよ。矢が刺さる所に板を隠しておいて、その板と射る矢を透明なテグスで結ぶんです。矢の中は空洞になっていて、その間にテグスを通す。矢はテグスを伝わっていくわけだから、確実に狙った所に届くんです。つまり、黒澤さんは、自分の趣味を、実にうまく映画に利用するんです。
Q:黒澤さんは何か、無意識のうちに、やっていることすべてを、映画に結びつけているって感じがしますね。
(中略)

Q:『用心棒』は舞台は上州?

村木:そうです。空っ風が吹くところという設定なので、むこうの家屋を参考にしてます。倉のつくり方、汚し方も、ずいぶん調べました。映画では一方の親分が、最初はお米屋だったんです。でも、僕の親父が酒問屋の番頭やってましてね。小さい時から造り酒屋へ行ってたものですから、そっちのイメージのほうがいいんじゃないかって黒澤さんに話したら、「じゃあ、酒屋にしよう」とOKが出たんです。でも、そこまでは良かったんですが、両方の親分の組が、お互いのものを壊しあう時に、酒樽から酒が飛び出すシーンがあるでしょう。あの時、「酒樽が小さい。倍ぐらい大きいものを作れ!」って(笑)。でも、あんな巨大な樽なんて日本にないでしょう。だから、樽をたがねるタガがなくて作るのに大変でした。この印象的なカットも、実際より、ビジュアルに写るほうを優先させた例ですね。

Q:桑畑三十郎が酒を飲んでる時のとっくりは、黒澤さんが所有されてる骨董品だそうですね。

村木:あれ、京都で買ったんですよね。小物の場合は、黒澤さん骨董が好きだから、持ってるもの使うんです。『七人の侍』の木賃宿の時使ったお米の壷は、鎌倉時代の物なんですよ。

Q:『用心棒』で、空っ風が吹いているのを現わすのに、埃を利用されてますね。それを散らすのに大扇風機を回してるんですが、実際の撮影の時は、ものすごい轟音だったそうですね。

村木:そうそう、あれ飛行機のプロペラで回してるんですよ。昔のものだから、もううるさくってね。あれは、西部劇で草の固まりがころがるシーンがあるでしょう。あれからヒントを得たんじゃないのかな。


ところで・・・
黒澤監督に影のようにつき従った記録係(スクリプター)の野上照代さんがいるんですが・・・
彼女が出した黒澤エピソード満載の本が面白いので、お奨めします。

この記事も黒澤明の世界に収めておきます。

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