松本大洋とバンド・デシネ ③

<松本大洋とバンド・デシネ>
『バンド・デシネ徹底ガイド』というムック本に松本大洋へのインタビューが載っていたので紹介します。
松本大洋とバンド・デシネとの関係なんか、興味深いですね

松本


<今の自分を形作ったバンド・デシネ>p73~74
Q:大友克洋さんの「童夢」がマンガ家になるきっかけだったそうですが、大友さんも「BDに影響を受けた」と言っています。大友さん経由でBDを知ったわけではないのですね?
松本:そうですね。「童夢」はすり切れるくらい読んでいましたが、大友さんのインタビューも当時は読んだことがなかったですし、大友さんがどんな人なのかも知らなかったですね。今でこそインターネットもあって、いろいろ調べられますけど、当時はBDの存在も大友さんが何に影響を受けたとかも知らなかったですからね。

Q:初めて買ったBDは誰の作品でしたか?
松本:ミゲランショ・プラード、メビウス、エンキ・ビラルです。当時は、特にプラードに一番びっくりしました。

Q:彼は日本ではほとんど紹介されていない作家ですよね。今日は所有の本をお持ちいただきました。これは白黒ですが、買った作品も白黒でしたか?
松本:違います。カラーの作品で、とにかくかっこ良いと思って。こんなふうに描きたいなと思いましたね。

Q:プラードは厚塗りの印象がありますが…
松本:色は厚く塗っていなかったですね。最近は油絵っぽくなっていますけど、23、24年前の話なので、プラードもデビューしたてかもしれませんね。そこから僕は『ZERO』『花男』『鉄コン筋クリート』を描くんですが、プラードの影響はあったと思います。

Q:本人に会ったことは?
松本:一度だけあります。16、17年前に、アングレーム国際漫画祭に呼ばれたんです。その場にプラードもメビウスもいて、でもうれしさのあまり何も話せませんでした(笑)

Q:メビウスに影響を受けたマンガ家は、日本にもたくさんいます。彼が亡くなった(2012年)後に大友さん、谷口ジローさん、寺田克也さん、松本さんの4人で会って話をしたそうですね。
松本:大友さんと谷口さんはもともと、メビウスと面識がありましたし、彼の家も訪ねていらっしゃって。でも、僕はあまり知らなくて、話についていけなかったんですよね(笑)。作品も『アンカル』くらいしか知らないですし、僕がそこにいるのはなんだか場違いな感じもしましたけど、僕は大友さんと谷口さん、寺田さんの3人が話しているところを見られただけでも楽しかったです。

Q:メビウスから何か影響を受けましたか?
松本:線ですね。彼のような描き込みも僕は知りませんでしたし、空間のあけ方、顔の描き方もすごいです。特別ですよね。

Q:特に好きな作品はありますか?
松本:ないんですよねぇ・・・メビウスの絵は大好きなんですが、読んだことがないんです。僕、BD自体もあまり数多くは読んでいないので・・・・。

Q:浦沢直樹さんも「絵だけで十分」とおっしゃっていました。
松本:BD界は、絵の中に哲学があってナンボじゃないですか。その中でも、メビウスは特出していると思います。

Q:メビウス作品の浮遊感にもやはり特別な物を感じますか?
松本:そうですね。ご本人に会う機会がたくさんあればあ、パーソナリティも見えてくるんでしょうけれど。一瞬だけお会いしたり、インタビューの文字を通して接すると、哲学者のように見えてきて、とても憧れました。アングレーム国際漫画祭に出席した当時、僕は20代でしたが「自分もしっかりしないと」って思ってしまったほどです。

Q:メビウスと言えば、彼の代表作Arzachの巻末に収められている短編がすごく『ナンバーファイブ吾』っぽくて。これはメビウスへのオマージュかなと思ったのですが・・・。
松本:『ナンバーファイブ吾』は自分でもBDをやりたかったんだと思います。『ピンポン』を描いていた時に、アングレーム国際漫画祭で『鉄コン筋クリート』がノミネートされたんですが、力を出し切れていないような気持ちになっていた時期で、もう少し時間をかけてマンガを作りたいなって、(今までの)作品に対して恥ずかしい気持ちになってしまったんです。その時に、BD作家みたいに自分のペースでマンガを描いてみたらどうなるんだろうって思って『GOGOモンスター』を描きました。
(中略)
 それから『スピリッツ増刊IKKI』で『ナンバーファイブ吾』を隔月で連載したんですが画力が及ばなくても、BD作家と同じように自分のペースで描いている気持ちになれたような気がします。週間ペースだとどうしても、絵の描写やストーリーを割愛しなくてはいけないことも出てきますからね。

 日本のマンガの編集さんは「読者へ分かりやすく見せる」ことを徹底するじゃないですか。日本のマンガには読者に疑問を抱かせない表現を心がけるという良さもありますが、BDは読者に「いちいち説明なんてしません」というところがあって、それぞれに良さを感じるようになりました。それに気付いた時期だったと思います。

Q:確かにBDは基本、編集者がいないこともあって、あまり読者に分かりやすく作られてはいないですよね(笑)
松本:2012年11月、ブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテンが来日した時に、学習院大学の講演を聞いたんです。ペータースは日本の編集者が口うるさいことに面食らっている様子でした(笑)


松本大洋が作画のポリシーを語っているので紹介します。
ベン・シャーンを引き合いに出すなど、マンガというよりイラストレーターのようなセンスが、ええでぇ♪


<絵と物語があってこその松本大洋>p76
Q:絵と物語どちらに比重を置いていますか?
松本:僕の場合は絵と物語両方があってなので、トータルで考えますね。

Q:松本さんは作品ごとに絵柄が変わっていくので驚かされます。日本では珍しいですね。
松本:そうですね。あまり「変えるぞ!」と意気込んでいるわけではなく、こんなテイストの絵を見つけたから挑戦してみようとか、それくらいの気持ちですね。

Q:一つの作品での統一性はもちろん考えていらっしゃいますよね?
松本:そうですね。『Sunny』を描く前は『竹光侍』のようなデフォルメをしようか、それとも写実的に描いて映画っぽくしようかとか考えましたね。

Q:『竹光侍』は浮世絵の影響も感じられるんですが。
松本:風俗、着物の資料としても浮世絵をたくさん見ましたし、線はアメリカのイラストレーターのベン・シャーンのテイストもミックスして描けたらと思ってやっていました。
Q:一時期はカメラ独特の広角レンズのひずみを絵に入れていますよね?
松本:そうですね。『花男』とか『鉄コン筋クリート』を描いていた時に、広角レンズで写真を撮っていて、それが面白くてそのまま絵に描いていたんです。だけど、編集さんには「あれはやめろ」と何度も言われて。読者にヘンなストレスを与えることを極度に避けたがるんですが、そういう編集者の視点もそれはそれでアリかなと、最近は思いますね。

Q:それに比べたら、BDはほぼ編集のチェックなしですからね。
松本:だから僕、BD作家さんはすごいなと思うんですよね。僕は普段、奥さんと二人で絵とかストーリーを作っているので、ネームも二人で話し合いや修正をした物を編集さんに見せて、それをまた直して・・・という作業なんです。
 一人だけで一連の作業をやるのは怖いですよ。良かれと思ってやったことが人に伝わらないことはたくさんあるので、僕には第三者の目が必要ですね。いずれはみんなから「全然面白くないよ」と言われても、それを押し切って作品にしても良いような時が来るのかもしれませんけど(笑)。




【バンド・デシネ徹底ガイド】
BD

原正人編、玄光社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
データなし

<読む前の大使寸評>
リドリースコット作『ブレードランナー』はメビウスの漫画に触発されて作られたそうです。
それだけ、メビウスのインパクトは大きかったわけで…
メビウスがバンド・デシネ作家であることや、バンド・デシネという言葉も後から知った次第です。
宮崎駿監督も影響を受けたようですね。

rakutenバンド・デシネ徹底ガイド


この記事も松本大洋の世界に収めておきます。

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