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zoom RSS 『ふくわらい』1

<<   作成日時 : 2018/07/09 06:52   >>

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<『ふくわらい』1>
図書館で『ふくわらい』という本を手にしたのです。
帰国子女にして、関西弁の使い手というのが、大使の認識であるが・・・
この小説は、かなりインターナショナルな場面設定になっているようです。


【ふくわらい】


西加奈子著、朝日新聞出版、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
マルキ・ド・サドをもじって名づけられた、書籍編集者の鳴木戸定。25歳。唯一の趣味は、暗闇でのひとり遊びー。

<読む前の大使寸評>
帰国子女にして、関西弁の使い手というのが、大使の認識であるが・・・
この小説は、かなりインターナショナルな場面設定になっているようです。

rakutenふくわらい



この小説の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。
p69〜71
 初めは、何かの映画だと思った。だがすぐに、これが「現実」に起こっていることだと気付いた。気付いたが、理解することは出来なかった。あんなにたくさんの人が同時に死ぬ瞬間を、定は初めて見た。定だけではない。恐らく世界中の人が、そうだった。

 斜めに滑空して突っ込んできたもう一機、白煙を上げて崩れ落ちるビル、理解するにはあと数百年かかりそうな出来事を見ながら、結局定の心をとらえたのは、画面に映った、逃げまどう皆の顔だった。

 場所はニューヨークであるらしい。褐色の肌の男、頭にターバンを巻いた男、ほとんど白に近いブロンドの髪の女に、多恵に似た顔の若い女。様々な人種の、様々な顔が、そこのあった。
 定は、ほとんど画面にかじりつくようにして、「人」を見た。旅客機がビルにつっこんでゆく映像は、朝まで何度も何度も流れたため、いつしか定は、画面に映っている顔、顔、顔が、たった今死んでいった人達のそれだと、思うようになってしまった。

 定は、もっとたくさんの国の、たくさんの人の顔が見たい、と思った。
 アングロサクソンの青い目を、イタリア系の高い鷲鼻を、赤道直下で暮らす人々の、厚い唇を見たかった。
 何が彼らを、「彼ら」たらしめているのか。言語以外に、自分が彼らとどう違うのか。その違いが、あのように理解しがたい「現実」を生む理由は、何なのか。

 定は自分の目で見たかった。早く見ないと、彼らが死んでしまうと思った。
 定は、高校生活のほぼ3年間を、彼らの顔を想像し、それらで「遊ぶ」ことに費やした。情熱は尽きなかった。その情熱のままに、高校を卒業すると同時に、日本を離れた。

 悦子以外に、報告する人間はいなかった。定はとても身軽だったのだ。若かった頃の栄蔵のように。
 定は、旅先ですれ違う人間の、顔を、見て、見て、見続けた。
 そして、彼らのパーツを、彼らからやすやすと取り上げ、掌で、舌で、慈しんだ。
 モスクワで会った少女の、灰色の大きな目を持ちかえり、内モンゴルの草原に住む少年の、針のように細い目と取り替えた。
 ハバナで見た老人の木細工のような鼻を、ザグレブで給仕してくれた男性の、鷲のような鼻と取り替えた。ポートモレスビーのガイドの厚い唇は、香港の露天商の男の歪んだ唇と替え、アムステルダムのタトウー職人女性のアーチ型の眉を、モントリオールの漁師の立派なそれと替えた。

 どれほど長い旅をしても、飛行機を乗り継ぎ、船に乗り、世界の反対側へ行ったとしても、それらは、必ず持ち主の顔へ帰って行った。あるものはひらひらと蝶のように、あるものは弾丸のようにまっすぐ。パーツを取り替えられたままの顔でいる人間は、いなかった。

 パスポートに押された判子が、20ヶ国目、自分の年齢になったとき、定はバグダッドの空港にいた。ラマダンの時期だったが、治外法権である空港の中では、男たちが悠々と煙草をふかし、甘い紅茶を飲んでいた。


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