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zoom RSS 『熱帯雨林の彼方へ』

<<   作成日時 : 2017/05/15 17:55   >>

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<『熱帯雨林の彼方へ』>
図書館の海外小説の棚で『熱帯雨林の彼方へ』という本を、偶然に手にしたのです。
熱帯雨林というタイトルと日系の著者名が気になったのだが、解説を見ると翻訳者がオールタイム・ベストと絶賛しているので、これが決め手になったのです。
・・・・期待できるかも♪


【熱帯雨林の彼方へ】
熱帯

カレン・テイ・ヤマシタ著、新潮社、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
アマゾンの密林に出現した万能の力を持つ物質マタカン。時を同じくして登場する人々の苦痛を癒す魔法の羽、幸運の予言をもたらす伝書鳩、腕や乳房が三つある男女。そして物語の語り手は、日系移民カズマサの顔前で回転する謎の球体…歓喜と興奮の坩堝と化したこの地に、何が起きようとしているのか?  

<読む前の大使寸評>
熱帯雨林というタイトルと日系の著者名が気になったのだが、解説を見ると翻訳者がオールタイム・ベストと絶賛しているので、これが決め手になったのです。
・・・・期待できるかも♪

rakuten熱帯雨林の彼方へ


この小説の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。
p14〜17
 日がたつにつれて、カズマサの額の傷も徐々に癒え、肌にピンク色の跡をかすかに残すのみとなった。ボールはあいかわらず、どこで何をしていようとカズマサの額のすぐ前にあったが、彼も両親も、しだいにその存在を受け入れるようになっていた。

 カズマサがそのボールから自信と安心感を得ている様子を見るにつけ、両親も、当初の不安を忘れていった。子どもを持ったせいで自分自身の自由を失ったことを嘆くおおかたの親たちと同様、カズマサの両親も、しだいにボールを頼りにしはじめていた。

 つかの間、子どもたちを慰めて両親はほっと一息つく時間を与えてくれる。おしゃぶりや古ぼけたぬいぐるみと同じ役割を果たすものとしてボールの存在価値を認めたのである。
 父親は、しかるべき機関に連絡するという考えを捨て、母親も、息子の将来を思ってそれに反対したのはやはり間違っていなかったと満足げだった…母親というものは、人生のいかなる場面においても、こうした満足感にひたるものである。

 もうカズマサはけっしてひとりぼっちになることはなかった。日中は、育ちゆく筋肉のリズミカルな動きをおのずと感じとって跳ねまわる少年の活発な動きに呼応して、ボールも彼の前で楽しげに飛びまわり、学校がひけると、彼らはいっしょに、ものすごい勢いで走って帰ってきた。そして夜は夜で、ボールはまるで救命ブイのように、枕元で甘く呟くような音をたてるのだった。

 ボールはカズマサのペットであり友だちだった。それでいて、カズマサにはボールに対して何か特別な注意をはらったり、責任を持ったりする必要はなかった。特にやりたいこともないようなとき、カズマサはただぼんやりと、ボールの動きを目で追っていた。いっぽう、勉強や遊びで忙しいとき、何か目新しいことに取り組んでいるようなときには、いつもボールは文句も言わず、忠実に彼につき従っていた。

 どういうわけか、ボールはカズマサの周囲の人たちにも不思議な影響力をおよぼした。人々はこのボールを驚嘆の目で眺めこそすれ、カズマサの両親が心配したように嘲笑ったりすることはけっしてなかった。
(中略)

 こうして何年かが過ぎ、カズマサのボールは、誰からも当然のものとして認められるようになった。額のすぐ側にぶら下がっているにもかかわらず、たいていの人は、それがあることさえ、ほとんど忘れてしまっていた。ただしみんなは、カズマサと真正面から視線を合わせることは避けていた。何か人を落ち着かなくさせる邪魔者、あるいは第三者の視線といったものをどうしても感じてしまうからだ。
(中略)

 高校を卒業すると、カズマサは鉄道会社に就職した。彼は切符に鋏を入れ、郵便物の袋をはこんだ。また、遺失物の棚から乗客の忘れ物を見つけてやり、通過する、あるいは停車する列車にそれぞれ正しい旗を振った。時刻表を貼ったり、改札口を開け閉めしたり、列車通過時に子どもたちをホームの白い線の内側にさがらせたりするのも彼の仕事だった。そんなある日、鉄道会社における彼のほんとうの才能が発見された。

 カズマサはときおり、乗客の切符を回収するために隣町まで列車に乗り込むことがあった。動いている列車の通路をバランスをとって進みながら切符を受け取り、「ご乗車ありがとうございます」と挨拶する。ところが、ある地点を通過するとき、きまってボールが急に跳ね上がり、めちゃくちゃに動きだすのに気づいた。そのようなことが起こるたびに記録をつけたが、何度か同じことが繰り返されたのち、カズマサは上司にそのことを報告した。

 上司は半信半疑だったが、石橋を叩いて渡るような男だったので、ある日、ボールが明らかに異常なほど動きまわる問題の地点に列車を止めると、カズマサといっしょに線路に降りて注意深く調べてみた。すると驚いたことに、線路のその部分が危険なほどすり減っていたのだ。そのまま線路の交換が行われなかったら、列車は間違いなく脱線していただろう。

 突然、カズマサは時の人となった。彼のボールが何百人もの命を救ったのだ。彼こそ、日本の鉄道システムの安全のためになくてはならない人物だ、というわけで、給料は一気に上がり、「線路保安・修理監督」という新しい肩書が与えられた。そして、国鉄本社から、国じゅうの線路網をくまなく点検するよう依頼された。以来カズマサは、日本海に面した浜辺にあるわが家にはほとんど帰らなくなった。北は雪深い北海道から、南は陽光の満ち溢れる長崎の港まで、およそ列車の通る場所なら日本じゅうどこへでも、ボールとともに旅して歩いたのである。


 ちょっと漫画チックな世界を斜めから見るような著者の視線が独特であり・・・けっこう引き込まれるのです。
 このあと、カズマサとボールのコンビは、勇躍として海外に飛び立つのであるが・・・そのあたりはこの本を読んでみては如何でしょう♪

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