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zoom RSS 「満州国化」する日本

<<   作成日時 : 2014/01/10 21:18   >>

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<「満州国化」する日本>
 京大人文科学研究所長・山室信一さんががインタビューで「一元的な政権が米国の傀儡の性格を強めている」と説いているので、紹介します。(1/10デジタル朝日から転記)
山室


 かつて中国の東北部に、13年間だけ存在した「国」があった。満州国と呼ばれたその国は、高い理想を掲げながら、矛盾と偽りに満ちていた。安倍政権の誕生から1年を経た今、山室信一さんは「いま進んでいることは、日本の満州国化だと思っています」という。2014年の日本は、あの国とどこが似てきているのだろうか

Q:いまの日本が「満州国化」しているというのは、どういうことでしょうか
A:安倍さんは『自立する国家』を掲げてきました。でも現実には、特定秘密保護法やTPPなどで、アメリカのかいらい国家という性格が強くなってきているのではないか。理想国家の建設を掲げながら、日本のかいらい国家への道を歩んだ満州国に似てきています。

Q:安倍首相は『新しい国へ』という著書があるように、国をつくり直す意識が強いようにも思えます
A:強いでしょうね。『戦後レジームからの脱却』と言いますが、日本国憲法のもとで国家意識が薄れていったのが戦後だという意識があるのでしょう。だから、もう一度、国家主導体制をつくることが戦後民主主義から『日本を取り戻す』ことに直結すると意識されているようです。

Q:安倍首相の祖父の岸信介・元首相は、満州国の高級官僚として統制経済を進めた人でした
A:岸と安倍さんは発想がよく似ています。2人とも多元的な勢力の存在が嫌いのようですね。権力が一元化されていないと、物事がうまく進まないと考える。満州国では関東軍と革新官僚だけで全部を決めた。今の安倍政権のように1強多弱になってしまうと、自民・公明という一元的な権力で全て決められる。満州国と同じシステムが今、小選挙区制の下で偶然にでき上がっています。

Q:決められない政治への国民の失望が、1強多弱を生んだのでは
A:これも戦前と同じで、1920年代の対外的危機に際し、民政党と政友会が党争に明け暮れて何も決められなかった。政党政治に対する幻滅が国民に広まり、軍の統率力や官僚の統制に期待したところがあった。もちろん今とは状況が大きく違いますが、出てきている情景は重なって見えます。

Q:情景が再現されてきたと
A:満州国にいた官僚たちは、戦後の経済政策を担った経済安定本部にもたくさん入っています。『秩序と統制』が国家のあるべき姿だと考えた岸は、満州国で試みたことを戦後に実施し、高度成長の基盤をつくった。岸だけではなく、椎名悦三郎などの満州派は自民党内で力を持ちました。統制国家の実験室であった満州国はある意味で、海を越えて戦後の日本と地続きでもあるのです。

 それが一番よく表れているのは軍隊です。もともと満州国は関東軍による占領下に置かれて、独自の軍隊を持たず警察組織だけあればいいとして出発した。それがやがて満州国軍として肥大化していき、関東軍に牛耳られるようになった。これはまさに戦後の自衛隊と米軍の関係です。警察予備隊から自衛隊に肥大し、米軍に依存することなしには存続できない体制となっている。

     ■     ■
Q:安倍政権は特定秘密保護法をかなり強引に成立させました
A:それもアメリカへの従属とともに、権力の一元化とつながっています。情報の偏在は権力を生む。満州国で岸がやろうとした統制経済も、基本的に政府に情報が全部集まらなければできない。

 特定秘密保護法と、岸の日米安保条約改定も重なって見えます。安保反対のデモが国会を取り巻いていたとき、『国会周辺は騒がしいが、銀座や後楽園球場はいつも通りである。私には声なき声が聞こえる』と岸は言いました。おそらく安倍さんはそれを思い浮かべていたのではないか。今度も騒いでいるのは国会の周りの少数派だけで、背後には声なき多数派が自分を支持している、だから一部の反対を押し切ってでも法案を通すことが自分の政治家としての歴史的使命だ、と。

Q:安倍政権のアジアへの姿勢はやはり岸政権に近いのでしょうか
A:岸は戦後初めて東南アジアを訪問した首相でした。『日本がアジアの盟主にならなければならないという私の意識は、実は私が満州国に行ったときの意識と同じで戦前も戦後も一貫している』と語っています。日本がアジアの先頭に立っているという意識を持ち、東南アジア諸国との関係を深めることでアメリカに対抗しようとした。アジアを盾に『対米対等』を目指す二重性があった。

 一方、安倍さんのアジア観はわかりにくい。もともとは対米対等をめざして集団的自衛権をと思っていたのでしょう。でも、中国の台頭や靖国参拝による反発などもあって、アジアの旗頭としてアメリカに対抗するという手段はとれない。それどころか、東アジアでの孤立化を招いたことで対米従属化を強めるしかなく、特定秘密保護法をつくるなど、政策選択の幅を自ら狭めています。

Q:安倍首相と岸元首相は、似ているようでも違うと
A:岸の本質は経済官僚です。経済力強化が国家の強盛に不可欠だと一貫して考えた。総力戦体制のもとでは経済力イコール軍事力ですから、富国と強兵は一致していました。

 安倍さんは、自分の領分を持っていない。官房長官以外には閣僚を経験せず、若くして首相になった。自分の核がないから、官僚やブレーンが持ち込んでくるものをバキューム効果のように取り込んでいく。それが安倍政権に対する野党の攻めにくさになっていると思われます。

     ■     ■
Q:「理想国家をつくる」という発想では共通しているのでは
A:もともと日本人は、国家というのは与えられたものだという意識が強いんです。欧米では国家は人々が契約でつくるという意識があるのですが、日本では国体が連綿と続いてきたとされて、人がつくる余地がない。明治憲法も新しくつくったのではなく、あくまでも『皇祖皇宗ノ遺訓』を明文化したにすぎないと説かれました。しかし、これは明治以後に『創られた伝統』といえます。

 岸の場合は例外的に、国家をつくるという発想があったと思われます。彼が若いときに愛読した北一輝の『日本改造法案大綱』は、憲法を停止して、華族制度廃止や私有財産制度の制限など、国家の根幹を変えてしまおうというものです。ただ、日本で国家をつくりかえようとすると、必ず天皇制の問題とぶつかる。満州だったから、ゼロから新しい国家をつくる夢を見ることができた。

Q:安倍さんも「美しい国」をつくろうとしているのでは
A:安倍さんの国家観は、自然主義的とでも言いましょうか、国はあくまで自然にあったもので、しかも国家主導は正しいという発想です。戦後レジームだけが否定すべきもので、それ以前の体制は『美しい国』だったと。国家は美しい国土という伝統の中にあって、人がつくるものではない。

 もともと存在した国が、戦後の自由主義や個人主義などの思想によって汚されてきた。汚れを除けば、美しい国を取り戻すことができるはずだと。その汚れの元凶が今の憲法なのでしょう。

Q:最近は改憲論をトーンダウンさせている印象もありますが
A:おそらく安倍さんは、憲法を変えればみんな変わると思っていたのでしょう。戦後レジームの頂点にある憲法を壊せば、すべて正常に戻ると。しかし96条改正への反対が強かったので、解釈や立法で変えてしまおうという方向に行っている。

 これは逆説的な状況で、憲法の条文を守ればいいという護憲の虚をつかれてしまった。頂点が不変でも解釈や法令で基盤を壊されれば、憲法秩序の全体が崩れてしまいます。

     ■     ■
Q:満州国の歴史から教訓として生かせるものがあるとすれば、どのようなことでしょうか
A:権力の一元化は、特定の局面突破には効果的かもしれません。しかし一点突破だけを考えていると、全体のバランスが崩れる。満州国は、軍事的な統制だけすればいいと考えたのが崩壊のもとになった。安倍政権も、アメリカとの関係さえうまくいけばいいという一点だけを考えていると、対アジア関係や国内の産業構造が崩壊していきかねません。

 満州国は、当初の理想とは全く逆の方向に動いていきました。最初は王道楽土や五族協和を掲げていたのが、対外戦争に危機感をあおって統制を強めるなかで、お互いが監視し排斥し合う『兵営国家』になっていった。安倍さんが掲げるような美しい国の理想というのが本当は一番危ない。ベクトルが反転して動き出す可能性をつねに考えておく必要があると思います。(聞き手・尾沢智史)

     *
山室信一:京都大学人文科学研究所長 51年生まれ。専門は法政思想連鎖史。京都大学人文科学研究所教授。著書に「キメラ―満洲国の肖像」「憲法9条の思想水脈」

◆キーワード
 <満州国> 1931年9月の満州事変の後、32年3月に中国東北部につくられた国家。清朝最後の皇帝・溥儀が執政(のち皇帝)となった。「王道楽土」の建設、「五族(日・満・漢・モンゴル・朝鮮)協和」を掲げたが、実質は日本のかいらい国家。国際連盟は満州国を認めなかった。45年8月、日本の敗戦とともに消滅。


対中抑止力か、TPPか、とゴリ押しするアメリカはかつて満州を収奪した日本を彷彿とするわけですが・・・・
TPP推進の経済評論家やへたれ官僚がいたりして、従米勢力も少なからずいるようです。

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