『群像(2020年6月号)』2

<『群像(2020年6月号)』2>
本屋の店頭で『群像(2020年6月号)』という雑誌を、手にしたのです。
表紙に出ている特集「多和田葉子」「翻訳小説」というコピーに太子のツボが疼くわけでこれは買うっきゃないで・・・
ということで久しぶりに雑誌を買い求めたのでおます。


【群像(2020年6月号)】


雑誌、講談社、2020年刊

<商品説明>より
[小特集 多和田葉子]
・インタビュー
「離れていても、孤独ではない人間たちの闘争」 聞き手・構成:小澤英実
・評論
「多和田葉子の『星座小説』--『星に仄めかされて』をめぐって」岩川ありさ

[特集 翻訳小説]
・アンケート「最新翻訳小説地図」

<読む前の大使寸評>
表紙に出ている特集「多和田葉子」「翻訳小説」というコピーに太子のツボが疼くわけでこれは買うっきゃないで・・・
ということで久しぶりに雑誌を買い求めたのでおます。

rakuten群像(2020年6月号)



多和田葉子のインタビューを、見てみましょう。インタビュアーは小澤英実という人です。
p178~179
<コロナ禍で浮び上る国家間のズレ>
小澤:このお話を伺っている今、日本では東京をはじめ七都府県に緊急事態宣言が発出されたばかりです。コロナウィルス感染拡大の影響で、直接お会いする予定が変更になり、急遽ドイツにいる多和田さんに電話でインタビューすることになりました。

 こうした世界的な危機のさなかに、前作『地球にちりばめられて』とその続編である『星に仄めかされて』を読むと、ここで描かれている開かれた世界のありようがひどく遠く離れてしまったことを痛切に感じました。

 この作品は、世界のさまざまな場所から集い、自由に移動しつづける若者たちの物語です。ところが現在では、世界中で国境が封鎖されて、出入国が厳しく規制されている。くしくもHirukoの状況が現実味を帯びてしまったようです。

多和田:『地球にちりばめられて』と『星に仄めかされて』、それとたぶんもう一冊続くのですが、これらの作品に描かれた世界では、ヨーロッパのなかは自由に移動することができるけれども、日本と思われる国には全然行かれないし、連絡がつかないという状況になっています。鎖国とグローバル化の両方が共存する状況ですね。

 今、新型コロナウィルスのせいで世界中が鎖国状態にあります。ドイツの場合、仕事なら大丈夫ですが、友達に会いに行くとか湖に遊びに行くという目的では、国内の隣の州にも入れません。それだけではなくて、国境を閉じるか閉じないかを決めている段階で、ヨーロッパのなかの心の境界線みたいなものや、それぞれの国の考え方のズレのようなものが浮上してきて、ヨーロッパがばらばらになるんじゃないかと心配しました。
(中略)

 私も知らなかったのですが、国境というのは、こちら側からと向こう側からのそれぞれで開け閉めできるものなんですね。二重ドアです。例えばポーランドとドイツの国境の場合、ポーランド側はすぐ閉めたけれども、ドイツ側からはすぐには閉めなかった。

 スタートはばらばらでしたが、それではいけないという気持ちもあって、フランスのマクロン大統領は、コロナウィルスに対してヨーロッパが足並みをそろえてやっていかなければ意味がないとよびかけました。確かにそうなんです。地続きなので、それぞれが勝手な政策をとってもしようがないわけです。ただ、その国によって犠牲者の数には大きな差があり、その理由はまだ判明していません。

 死者の数でいうと今の時点でフランスではドイツの五倍くらい死者が出ています。毎日新しいニュースが入るので、今ここで言ったことが活字になる頃には違っている可能性もありますが、今の時点では、ひどい被害を受けたイタリアやスペインに北ヨーロッパの国々がどんなかたちで経済的な援助をするのかで、もめています。

 私が小説で描きたかったヨーロッパも、いろいろな文化が喧嘩したり、仲直りしたり、もめたり、混ざったり、別れたりしている流動的な世界です。ヨーロッパの中でもデンマークとイタリアは違うし、しかもそれぞれの国にまた別の大陸から来た人たちがたくさん住んでいるという構図です。

『地球にちりばめられて』の場合は、スカンジナビアと、かつて古代ローマ帝国に属していた部分、という二つの世界があって、その間を登場人物たちが行き来します。『星に仄めかされて』では移動は一回きりで、今はドイツの都市だけどもかつて古代ローマ帝国の重要な都市であったトリアーから、コペンハーゲンへの旅です。

 ナヌークの場合と、ノラ、アカッシュの場合で、移動のルートは違うのですが、いずれにしても巨大な暗い森のようなドイツという国を通っていかなければなりません。昔のローマ人にとって現在ドイツのあるところは、恐ろしい森のなかにゲルマン人が隠れていて、いつ襲われるかわからないというイメージだったようです。でもそれがいつかドイツ・ロマン派の森になって、その森に入ることで自分の内部に分け入っていく、という意味合いが生まれるんですね。

小澤:なるほど。今作での移動はなによりそのルートや手段の多彩さに読みごたえがありました。
(後略)



『群像(2020年6月号)』1:翻訳小説に関する辛島デイヴィッドのレポート
『群像(2020年6月号)』2:多和田葉子のインタビュー



【地球にちりばめられて】


多和田葉子著、講談社、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語“パンスカ”をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る―。言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。

<読む前の大使寸評>
言語学的なSFは、モロに太子のツボであるが・・・
ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語“パンスカ”をつくり出したHirukoという元ニッポン人が、興味深いのです。

<図書館予約:(2/18予約、8/28受取)>

rakuten地球にちりばめられて

『地球にちりばめられて』3:「第9章 Hirukoは語る3」
『地球にちりばめられて』2:「第6章 Hirukoは語る2」
『地球にちりばめられて』1:「第2章 Hirukoは語る」

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