『村上春樹、方法としての小説』4

<『村上春樹、方法としての小説』4>
図書館で『村上春樹、方法としての小説』という本を手にしたのです。
村上さんの物語の秘密が載っているとのことで・・・借りる決め手になりました。



【村上春樹、方法としての小説】


山愛美著、新曜社、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
洞窟の中のストーリーテラー、村上春樹。その創作の原点はどこにあるのか?幼少期のエピソード、作品・インタビュー中の言葉に着目し、独自の方法で紡ぎつづける物語の秘密に迫る!
【目次】
序章 自発的に語り始める「物語」/第1章 方法としての小説、そしてはじまりの時/第2章 初めての物語としての『風の歌を聴け』/第3章 デレク・ハートフィールドの世界/第4章 言葉・身体/第5章 記憶・イメージ/第6章 創作過程を探る/終章 想像力と効率

<読む前の大使寸評>
村上さんの物語の秘密が載っているとのことで・・・借りる決め手になりました。

rakuten村上春樹、方法としての小説



第6章で「物語の力」あたりを、見てみましょう。
p206~209
<4 デレク・ハートフィールドの世界からの帰還>
『風の歌を聴け』の最後は、デレク・ハートフィールドの墓碑に刻まれていたとされる「昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか」(『全作品1979~1989①』p.120)という言葉で締めくくられている。この闇こそが、村上春樹が創作の過程で、下降し、沈潜していたところだったのではないか。それは幼い日、彼が川で溺れた時に一瞬見てしまった向こうの世界の暗闇とも重なる。

 村上春樹は、創作活動を通して、ハートフィールドの世界観を含んだ新たな自分の世界観を確立し、「自己」を探る作業を行ってきたと言ってもよいであろう。その際、暗闇の世界を自分から切り離すのではなく、暗闇の中に入り、そこで留まり、そこにあるものを見届け、それを「私」の中に組み入れていったのである。

<5 村上春樹の物語の力>
 次に、深みへの下降によって創作された村上春樹の物語の持つ力について、村上の言葉を読み解くことによって理解を深めたい。村上は、「書くことによって、多数の地層からなる地面を掘り下げているんです。僕はいつでも、もっと深くまで行きたい」()と述べている。最近はもっぱら家のメタファーを用いて地下1階、地下1階へ降りていくという表現を用いているが、これはシンプルにすることで、読者たちにとってよりイメージしやすくするためだと思われる。

 村上は
この深みに達することができれば、みんなと共通の基層に触れ、読者と交流することができるんですから。つながりが生れるんです。もし十分遠くまで行かないとしたら、何も起こらないでしょうね。(p.120)

 と述べている。河合隼雄との対談において、コミットメントについて話題にいているところで、「コミットメントというのは何かというと、人と人のかかわり合いだと思うのだけれど、これまでにあるような『あなたの言っていることはわかるわかる、じゃ、手をつなごう』というのではなくて、『井戸』を掘って掘っていくと、そこでまったくつながるはずのない壁を越えてつながる、というコミットメントのありように、ぼくは非常に惹かれたのだと思うのです」(河合・村上1996、p.70-71)と述べている。これは、『ねじまき鳥クロニクル』を書くことを通して彼自身が体験した「壁抜け」で知り得た感覚であろう。

 このことは、心理療法において、セラピストとクライエントの具体的な背景や体験、年齢などが違っていても、セラピストが体験を深めることができれば、心の深いところで、言うならば魂の次元での共感、共鳴が生じるのと似ている。

 一般的には、同じような境遇の者同士の方がわかり合いやすいと思われがちだが、これは上記の村上の言葉で言えば、「あなたの言っていることはわかるわかる、じゃ、手をつなごう」といった意味でのわかるということである。人の話を聞いて「わかる」、共感するということにも、いろいろな次元がある。専門的な内容になるので本著ではこれ以上触れないが、関心がある読者の方は拙著『言葉の深みへ』(2003)を参照していただければ幸いである。

 最後に村上春樹の物語の力について探る。インタビュー「『海辺のカフカ』を中心に」(初出2003/2012c)の中で、村上は次のように述べている。

ある一人の人間の自我を、今そこにあるその人の抱え込んでいる暗闇の中に浸して物語を立ち上げるとして、その作業は、人それぞれ全部違うんだということです。(p.120)

『村上春樹、方法としての小説』3:使いみちのない風景
『村上春樹、方法としての小説』2:「騎士団長殺し」あたり
『村上春樹、方法としての小説』1:初期の三部作



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