『GOSICK RED(レッド)』1

<『GOSICK RED(レッド)』1>
図書館で『GOSICK RED(レッド)』という本を、手にしたのです。
たまには気楽に小説を読んでみるかということでチョイスした次第でおます。
朝日新聞に週1回、著者の小説『火の鳥』が連載されていて、エンタメの実力は申し分なしだし。


【GOSICK RED(レッド)】


桜庭一樹著、KADOKAWA、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
時は1930年代初頭、ニューヨーク。超頭脳“知恵の泉”を持つ少女ヴィクトリカは探偵事務所を構え、久城一弥は新聞社で働いている。街は好景気に沸き、禁酒法下の退廃が人々を闇へと誘う。ある日、闇社会からの依頼人がヴィクトリカを訪れ、奇怪な連続殺人の解決を依頼する。一方、一弥は「心の科学で人々の精神的外傷を癒やす」という精神分析医のもとに取材に向かっていた。やがてすべての謎はひとつに繋がり、恐るべき陰謀が姿を現すー。新シリーズスタート!!

<読む前の大使寸評>
たまには気楽に小説を読んでみるかということでチョイスした次第でおます。
朝日新聞に週1回、著者の小説『火の鳥』が連載されていて、エンタメの実力は申し分なしだし。

rakutenGOSICK RED(レッド)




「第1章 Hello! New York』の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。
p11~14
<1>
 朝の八時。
 ニューヨークはまだ目が覚めたばかりの風情。
 冬の風が吹き抜けるリトルイタリーの街角を、三つ揃いのスーツの上からチェスターコートを羽織った眠たそうな通勤人と、彼ら目当ての朝ご飯の屋台、行儀よく登校する制服姿の子供が交差していく。

 赤と白と緑のカフェやレストラン、バーのカラフルな看板が雪交じりの風に揺れている。
 そんな平和な街の一角に、藍色の制服に身を包んだ警官と真っ黒なパトカーが集まって、なにかを取り囲んでいた。どうも物騒な空気・・・。でも道行く人たちは、いつものことだとでもいうようにまるで気にしていない。

 警官たちの頭上を越えて、大きなカメラを構えて撮影している長身のイタリア人青年がいた。パシャッ、パシャッとシャッター音を響かせるたびに、警官が振りかえっては、うるさい虫を追うように腕を振り回すけれど、気にする様子もなく、
「おーい!」
 と、ファインダーを覗いたまま、のんきな声で誰かを呼んだ。

「今朝の死体もなかなかだぜぇ? えっと、昨日の朝に発見されたのは、靴だけ女物の真っ赤なハイヒールに変わってたんだっけな? ・・・ギャングの報復殺人も年々凝ってきてるっていうけどよ。あいつら、殺人に慣れちゃって退屈してんじゃねぇの?」

 話しかけても返事がないので、おおげさなほど口を曲げてみせる。
 囲まれている主・・・マシンガンで蜂の巣にされたうえ、赤い薔薇の花をくわえさせられているギャングの死体から目を離し、キョロキョロする。

「あれッ? 久城~?」
 警官に押しやられながら、
「久城~?」
「・・・ふん、ふん! 夜中というよりもう明け方というころだったんですね。銃声が聞こえた、と。・・・あの、話し声などは? なるほど!しかし、この地域の昔からの住人として最近のギャングの横暴についてどう思われますか? ふん・・・!」

 どこからか、いかにも生真面目そうな男の子の声がした。
 警官が集まった一角の向かいにあるちいさなイタリアンレストランの前で、自分の身長の半分ぐらいのおばあさんの前にしゃがんで、丁寧に話を聞いているところだ。

 漆黒の髪は、前髪が少し伸びて、冬の風に柔らかく揺れている。ネイビーのブレザーにフランネルのズボン姿。着古したPコートに、じいさんみたいな年代物の帽子。メモを取りながらうなずく目は、闇に吸いこむまれそうなほど濃い黒だった。

 小柄な、よくいるタイプの東洋人の青年だ。
 一見とっつきにくそうに見えるが、つぶらな瞳は素直そうに澄んでいる。視線の柔らかなまっすぐさには、見る人の心を打つなにかがある。
 青年がなんども「久城~。久城~。久城~」と呼ばれて「・・・えっ?」と顔を上げた。

 そのとき。角を曲がって新たなパトカーが押し寄せてきた。降りてきた警官にたちまち蹴散らされてしまう。小柄な東洋人の記者のほうは、おばあさんに向かってじじむさすぎるポーズでお礼を言い、長身のイタリア人のカメラマンは、ふざけてカメラを頭の上にのっけた格好のまま、スタコラと退散していった。

「・・・で、ちゃんと現場写真は撮れたんだよね。ニコ?」
「たぶんぜったい大丈夫かな?まぁ、心配すんなって!」
「えぇっ、たぶんぜったいって、どっちだよっ」

 東洋人の青年は・・・久城一弥
 戦禍を抜けた東洋の島国を出て、新しい大きな国に移民として渡って、ようやく数ヶ月。新興新聞社<デイリーロード>紙で見習い記者を始めたところだ。

 隣でいかにも適当そうに長い腕をぶらぶらさせているのは、相棒になったカメラマン見習い・・・ニコラス・サッコ。リトルイタリー育ちの生粋のニューヨークっ子だ。長身で、黄緑のコートに大きな目。口の周りに濃すぎる髭を生やしている。

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