『図書館奇譚』1

<『図書館奇譚』1>
図書館で『図書館奇譚』という本を、手にしたのです。
つい最近、村上春樹著『ねむり』という本を読んだが、カット・メンシックさんの挿絵が独特ですばらしかった。この『図書館奇譚』でもカット・メンシックさんの挿絵が見られるのが、ええでぇ♪


【図書館奇譚】


村上春樹著、新潮社、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
図書館の地下のその奥深く、羊男と恐怖と美少女のはざまで、ぼくは新月の闇を待っていた。あの名短篇が、ドイツの気鋭画家によるミステリアスなイラストと響きあう。新感覚アートブック第三弾!

<読む前の大使寸評>
つい最近、村上春樹著『ねむり』という本を読んだが、カット・メンシックさんの挿絵が独特ですばらしかった。この『図書館奇譚』でもカット・メンシックさんの挿絵が見られるのが、ええでぇ♪

rakuten図書館奇譚


この本の冒頭の語り口を、見てみましょう。
p7~9
 図書館はしんとしていた。本が音という音をすべて吸いとってしまうのだ。
 本に吸いとられた音はいったいどうなるのだろう?もちろんどうもならない。要するに音が消えたのではなく、空気の振動が吸いとられただけなのだ。

 それでは本に吸いとられた振動はいったいどうなるのだろう? どうにもならない。振動はただ単に消え失せただけだ。振動はどうせいつか消える。なぜならこの世界に永久運動は存在しないから。永久運動は永久に存在しない。

 時間だって永久運動ではない。来週のない今週だってあるのだ。先週のない今週だってあったのだ。
 それでは今週のない来週は・・・
 もうやめよう。

 とにかくぼくは図書館にいた。そして図書館はとてもしんとしていた。必要以上にしんとしていた。
 ぼくは買ったばかりの茶色の革靴をはいていたので、グレーのリノリウムの床はこつんこつんという堅く乾いた音を立てた。なんだか自分の靴音じゃないみたいだ。新しい革靴をはくと自分の足音に慣れるまでにずいぶん時間がかかる。

 貸出しカウンターには、見たことのない中年の女性が座って本を読んでいた。とてもぶ厚い本で、右側に外国語の、左側に日本語の文章が印刷されていた。同じ文章ではないようだった。左右で段落や改行がまるで違っていたし、さし絵も違っていた。左のページのさし絵あ太陽系の軌道図で、右側のは揚水機についたバルブみたいな金属部品だった。何についての本なのか、まるでわからない。しかし彼女はうんうんと熱心に肯きながら本に目を走らせていた。目の動きから見ると左目で左のページを、右目で右のページを読んでいるらしい。

「すみません」
 彼女は本をわきに押しやってぼくを見上げた。
「本を返しに来たんです」とぼくは言って二冊の本をカウンターに置いた。一冊は『潜水艦建造史』で、、もう一冊は『ある羊飼いの回想』だった。『ある羊飼いの回想』はなかなか愉快な本だ。羊は冗談と音楽が大好きな動物なのだ。そのことをぼくはこの本で初めて知った。

 彼女は本の裏表紙をめくって期限を調べた。もちろん期限内だ。ぼくは日にちや時間は必ず守る。そのようにしつけられているのだ。羊飼いも同じだ。時間を守らないと羊たちはとりかえしがつかないくらい混乱してしまうから。

 彼女は慣れた手つきで借出しカードのストックを調べ、二枚のカードを返してくれた。それからまた自分の読書にとりかかった。
「本を捜しているんです」とぼくは言った。
「階段を下りて右。107号室」と彼女は目も上げず、手短に言った。

 階段を下りて右に曲がると、たしかに107というドアがあった。深くて薄暗い地下室で、ドアを開けたらそのままブラジルにでも出てしまいそうな気がする。この図書館には百回も来ているかど、地下室があったなんて初耳だ。



デジタル朝日にカット・メンシックさんが紹介されていたので、見てみましょう。

村上春樹作品に添える奇想イラスト ドイツのカット・メンシックさんより


村上春樹さんの短編に、ドイツ発のミステリアスな絵がついたアートブックのイラストレーター、カット・メンシックさんが来日した。2010年以降、『ねむり』『パン屋を襲う』『図書館奇譚』『バースデイ・ガール』の4冊を刊行してきた(いずれも新潮社)。村上作品は絵心を強く刺激する。

 メンシックさんは1968年、旧東ドイツのルッケンバルデ生まれ。20代で『羊をめぐる冒険』に出あって以降の愛読者。「初めて読んだときには驚きました。文体も内容も新しさがあった。そのイラストを手がけることはチャレンジで、とにかく楽しかった」

 贈り物になる大人向けの本を、というドイツの出版社の企画。メンシックさんの絵は線が強く、幻想的で、物語に登場しない昆虫や貝、クラゲが描き込まれている。「村上さんの短編には複数の層がある。書かれていないものを絵で対峙させたかった」

 図書館に本を探していた「ぼく」が地下の部屋に捕らわれる『図書館奇譚』には、村上作品おなじみの「羊男」が登場する。日本では佐々木マキさんのポップなイラストが思い浮かぶが、メンシックさんの「羊男」は不気味だ。「気に入っている登場人物。悪い人なのか良い人なのか。可哀想にも見え、シンパシーを感じます」



『ねむり』1

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