『書き出し「世界文学全集』3

<『書き出し「世界文学全集』3>
図書館で『書き出し「世界文学全集』という本を、手にしたのです。
柴田元幸さんが選ぶ世界文学(目次参照)がなかなかのもので、期待できそうでおます♪


【書き出し「世界文学全集】


柴田元幸著、河出書房新社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
“書き出し”だけで、世界の名作一気読み!あの“柴田訳”の「新訳」で、なんと全73作品。
【目次】
書き出し「イギリス文学」篇/書き出し「アメリカ文学」篇/書き出し「重訳で読む世界文学」篇/書き出し「英米児童文学」篇/書き出し「英米怪奇幻想」篇/書き出し「英米詩」篇/書き出し「序文」篇

<読む前の大使寸評>
柴田元幸さんが選ぶ世界文学(目次参照)がなかなかのもので、期待できそうでおます♪
rakuten書き出し「世界文学全集



重訳で読む『源氏物語』を、見てみましょう。Arthur Waley訳から柴田元幸訳への重訳ということでんな。
p127~129
1 Arthur Waleyによる英訳(1929)から重訳 
 ある天皇の宮廷において(1929)、衣裳と寝室に携わる多くの淑女たちのなかで、地位はあほど高くなかったもののほかの誰よりも深い寵愛を受けた女性がいた。

 そのため、自分が選ばれればと密かに望んでいた宮殿の貴婦人らは、自分たちの夢を霧散させたこの成り上がりを蔑みと憎しみの目で見た。彼女の元の仲間である、衣裳の仕事に携わる下級の女性たちにとっても、彼女が自分らよりはるか上にのぼったことことはそれ以上に面白くない話だった。

 かくして、宮廷での彼女の立場は、圧倒的なものではあったものの、彼女を不断の嫉妬と悪意にさらすこととなった。まもなく、狭量な意地悪にほとほと疲れて、健康も衰えてゆき、気持ちもひどく憂いがちになって、頻繁に自宅に籠もるようになっていった。

 だが天皇は、もはや元気でも陽気でもなくなった彼女に嫌気がさすどころか、日に日にますます情愛を深め、彼を咎める者たちの言葉にも耳を貸さず、ついにはその振舞いが国中の噂となるに至った。直臣や廷臣までが、無分別と言うほかない寵愛を正視しえなくなった。

 彼らは仲間内で、海の向こうの国ではまさにこうした出来事が反乱と災厄につながったのだと囁きあった。事実この国の民も、じきに不平の種を数多く持つようになった。唐の玄宗皇帝の愛人であった楊貴妃に彼女をなぞらえる者もいた。にもかかわらず、不満は募っても、主人の愛が彼女を護ってくれる力は絶大であったから、誰も表立って彼女を苛みはしなかった。

2 Edward Eidenstickerによる英訳(1976)から重訳 
 ある治世に、地位は最高ではないもののほかの誰よりも天皇に愛された女性がいた。高い野心を抱く位の高い女性たちは、彼女のことを生意気な成り上がり者と考え、位の低い女性たちはそれ以上に憤慨した。彼女がやることはすべて誰かを怒らせた。

 そうした事態を身をもって感じたのであろう、彼女は重い病を患い、宮廷よりも自宅で過ごす時間が多くなった。天皇の憐れみと情愛はとどまるところを知らなかった。もはや女性たちや廷臣たちに何を言われようと構わずに、あたかも噂話をわざわざ煽るかのように天皇はふるまった。

 宮廷の者たちは、向こう見ずなのぼせ上がりとしか思えぬものを、大いなる不安とともに見守った。中国でも、まさにそういう分別を忘れた情熱が帝の没落をもたらし、国中に混乱を広めたのである。

 憤りの念が高まるにつれて、件(くだん)の女性を批判するために楊貴妃の先例が何より頻繁に引き合いに出された。煩わしいことは多かったが、愛の比類なき恵み深さに助けられて彼女は生き延びた。


『書き出し「世界文学全集』2:『不思議の国のアリス』
『書き出し「世界文学全集』1:『ガリヴァー旅行記』

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