『歓待する文学』2

<『歓待する文学』2>
図書館で『歓待する文学』という本を手にしたのです。
小野正嗣が選りすぐりの作品について十三回の放送で紹介する構成であるが、取りあげた作品が、ええでぇ♪


【歓待する文学】


小野正嗣著、NHK出版、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
文学は私たちの心にどう入り込み、個人の生活や社会に影響を与えるのか。芥川賞作家である著者が欧米、アフリカ、中東、アジアの選りすぐりの作品を紹介。書き手がどのような土地に根ざし、どういう言語で作品を生み出したのか、それが読み手にどう作用するのかを探る。

<読む前の大使寸評>
小野正嗣が選りすぐりの作品について十三回の放送で紹介する構成であるが、取りあげた作品が、ええでぇ♪

rakuten歓待する文学




村上春樹が語られているので、見てみましょう。
p140~142
<第10回 翻訳は母語の可動域を広げる>
 村上春樹はいまやもっとも著名な日本の作家と言ってよいでしょう。フランク・オコナー短編賞、カフカ賞、エルサレム賞を受賞するなど世界中で評価されています。そして多くの読者に愛されています。アメリカの空港の書店で、ドイツの駅の書店で、その小説が平積みになって売られている日本の作家がほかにいるでしょうか。

 作家村上春樹はどのようにして生れたのでしょうか。それについては村上春樹自身が『職業としての小説家』という自伝的エッセイで詳細に語っています。

 村上春樹が作家として活動を開始するのは、1979年です。当時、ジャズ喫茶を経営していた村上春樹は、神宮球場にプロ野球の開幕試合を見に行きます。がらがらの外野席の芝生の上に座って観戦しています。試合が始まり1回の裏、ピッチャーの投じた第1球を打者がレフト前にはじき返すのを見た瞬間、不意に「そうだ、僕にも小説が書けるかもしれない」と感じるのです

 そのときの感覚を、僕はまだはっきり覚えています。それは空から何かがひらひらとゆっくり落ちてきて、それを両手でうまく受け止められたような気分でした。どうしてそれがたまたま僕の手のひらに落ちてきたのか、そのわけはよくわかりません。そのときもわからなかったし、今でもわかりません。しかし理由はともあれ、とにかくそれが起こったのです。それは、なんといえばいいのか、ひとつの啓示のような出来事でした。(42頁)

 村上春樹は彼が「ひとつの啓示」と呼ぶこの経験を説明するのに、英語のepiphany(エピファニー)という単語を使っています。この感覚が以後の彼の人生の様相を変えることになるでしょう。帰宅した村上春樹は、夜遅く、仕事を終えると台所のテーブルに座って小説を書き始めます。それが彼の最初の小説『風の歌を聴け』だったのです。

 作家というのは何せ物語を書くことを生業としている人です。みずからについて語る際には、ときに脚色してしまうこともあるかもしれません。とはいえ、この「啓示」のエピソードについては、村上春樹はいろんなところで触れており、この最初の小説をめぐる逸話は、作家村上春樹の誕生を告げるひとつの「神話」のようなものとして、彼の愛読者にはよく知られています。

 そして、村上春樹の最初の小説をめぐるもうひとつの有名な、彼の読者にとってやはりほとんど神話と化した逸話が、村上春樹は最初の作品を英語で書き始めた、というものです。

 この小説を書くまで、日本の現代小説を系統的に読んだことがなく、「どんな風に日本語で小説を書けばいいのかもよくわからなかった」という村上春樹は、何ヶ月かかけて小説を書くことになります。しかしその結果に失望します。神宮球場の外野席で感じたepiphanyを実現できているとは感じられないのです。

 そのとき村上春樹は、まずは万年筆と原稿用紙でその小説を書こうとするのですが、この万年筆と原稿用紙というのがあまりに「文学的」すぎると感じます。そこでこれらの道具を放棄し、その代わりに、所有していた「オリベッティの英文タイプライター」を使って、村上春樹は、なんと、英語で書き始めるのです。

 もちろん、英語を母語としないのですから、複雑な表現や構文を使って書くことはできません。どうしてもシンプルで無骨な文章になってしまいます。しかし、その文章には自分独自のリズムが生れているように感じられます。



村上春樹の自伝的エッセイを見てみましょう。

【職業としての小説家】
村上

村上春樹著、スイッチ・パブリッシング 、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
「MONKEY」大好評連載の“村上春樹私的講演録”に、大幅な書き下ろし150枚を加え、読書界待望の渾身の一冊、ついに発刊!
【目次】
第一回 小説家は寛容な人種なのか/第二回 小説家になった頃/第三回 文学賞について/第四回 オリジナリティーについて/第五回 さて、何を書けばいいのか?/第六回 時間を味方につけるー長編小説を書くこと/第七回 どこまでも個人的でフィジカルな営み/第八回 学校について/第九回 どんな人物を登場させようか?/第十回 誰のために書くのか?/第十一回 海外へ出て行く。新しいフロンティア/第十二回 物語があるところ・河合隼雄先生の思い出

<読む前の大使寸評>
大学図書館でみっけ、市図書館の予約を解消し、借出したのであるが・・・
大学図書館は穴場やで♪

<図書館予約:(10/27予約、11/27大学図書館でみっけ、借出し)>

rakuten職業としての小説家


『歓待する文学』1:小野正嗣が語る多和田葉子

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