『セレモニー』2

<『セレモニー』2>
図書館に予約していた『セレモニー』という本を、図書館に借出し予約して4日後にゲットしたのです。
このところ、『紙の動物園』を読んで以来、中国人のSFにはまっているが・・・
この本の冒頭で、ウィルス対応の手洗いがでてくるのが、なにやら気になるのです。


【セレモニー】


王力雄著、藤原書店、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
共産党建党記念祝賀行事と北京万博が重なる空前の式典年に勃発した感染症パニックと、その背後で密かにうごめき始めた極秘の暗殺計画ー。SARS事件、ウイグル問題、ファーウェイ疑惑など、現代中国をめぐる事態を髣髴とさせる、インターネット時代の『一九八四年』。現在、行動の自由を厳しく制限されている反体制作家による、中国本国で未公刊の問題作、邦訳刊行!

<読む前の大使寸評>
このところ、『紙の動物園』を読んで以来、中国人のSFにはまっているが・・・
この本の冒頭で、ウィルス対応の手洗いがでてくるのが、なにやら気になるのです。

<図書館予約:(6/30予約、7/04受取)>

rakutenセレモニー



もう少し読んで、みましょう。
p25~27
<2>
 李博(リーポー)は、実のところ、たいした秘密などなかった。こんな手間をかけたのは、スパイ活動をするためではないし、なにか大それたことをしようというわけでもない。ただ、シエ老板(「靴メーカーの社長」という意味のあだ名)のところへ行くというだけのことだった。

 監視システムの関係者が監視されている事実は、本人にははっきり告げられていた。
その方法は、機械によるモニタリングとアルゴリズム分析のみであるが、アルゴリズムで異常がみとめられると、人の手による介入が行われて調査される。なにか重大な問題が発見されれば、人間の目による常時監視へと移行する。こうなると、監視されている当の彼や彼女はまだなにも知らないうちに、彼らの前途にはすでに暗い影が差している。

 李博が会おうとしている“シエ老板”という人物は、その名の示すとおり、靴のメーカーだった。ⅠoSを立ち上げて以後、市場に出回る靴のすべてにSIDタグが確実に取付けられるように、偽物を取り締まるという口実のもと、党と政府の上層部は、各級の政府を通じ、監視の目が行き届きにくい小規模靴製造業者を、廃業へと追い込んだ。

 その一方で、大メーカーには優遇政策を取って、それ以外のメーカーを、マーケットから閉め出した。いまでは国内に二十三社が残っているだけになっているが、それらはすべてメガ企業である。シエ老板の富は、往年の煤老板(石炭の生産業者。富豪の代名詞)のそれに勝るとも劣らない。李博がこれから会うのはそのうちの一人だった。

 案内の女性の後について入ってきた李博を見ると、シエ老板はそれまでかけていた電話を下へおろした。
「ハハハ、大先生、あんたの考え出したやりかたは、まったくしち面倒だよ!」
 シエ老板のいかにも南方式の大きな声が、部屋の壁に反響した。彼の前のテーブルの上には、有名メーカーの名前の入ったスマートフォンが、いくつも並んでいた。
「北京に来るときには、こんなにたくさんの携帯を持ってこなきゃならん・・・一、二、三、四、五、六、六個もだよ! しかもふだん使うのはこれとは別ときた。ほんとに、面倒くさくてたまらん! ハハハッ。」

 シエ老板は福建のプー田(有名ブランド運動靴のコピー商品の生産地として有名)出身である。年齢は四十をいくつか越したというところである。背は低く、ずんぐりした体つきで、丸刈りの頭にしもぶくれの顔が脂ぎって光っていた。鋭い眼光が、商売人としての抜け目なさを、みるからに表していた。

 李博は、自分で気がつかないうちに、指で眼鏡を押し上げたり、乱れた髪をなでつけたりしていた。彼は基本的に社交的な性格ではなかった。誰かにからかわれたりした時、うまく受け流すことができなかった。

 彼がシエ老板に教えたやりかたというのは、こういうものだ。まず日常使用するスマホで、型どおりの挨拶文を発信する。そのさい、「お体大切に」の文句を、「御自愛を」に変えておく。それを受けて、李博からは、MACアドレスを毎回変えるIP電話で、シエ老板が前もって準備している匿名の携帯電話へとかけなおす。監視システムは、これに対応できない。よって、二人が会うことは感知されない。

 ウーム、まるで現在の中国共産党の監視社会を見るようで、怖いのである。

『セレモニー』1





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