『ペンの力』2

<『ペンの力』2>
図書館で『ペンの力』という新書を手にしたのです。
おお 「政治と文学」をめぐる巨頭の緊急対談ってか・・・これは興味深いのでおます。



【ペンの力】


浅田次郎×吉岡忍、集英社、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
戦後70年間、暗黙のうちに、政治的な立場を表明せずに中立を保つことが作家のとるべき理想的態度とされてきた。だが、特定秘密保護法案やいわゆる「共謀罪」が可決され、言論の自由が岐路に立たされつつあるいま、「政治と文学」をめぐる従来的なスタンスは根本から問い直されている。閉塞感にあふれた「もの言えぬ時代」の中で、日本ペンクラブ前会長・浅田次郎と現会長・吉岡忍が、もはや絵空事とはいえなくなった「言論弾圧」の悪夢に対して警鐘を鳴らした緊急対談。

<読む前の大使寸評>
「政治と文学」をめぐる巨頭の緊急対談ってか・・・これは興味深いのでおます。

rakutenペンの力


第4章で日中戦争期あたりを、見てみましょう。
p130~134
<第4章 日中戦争期の戦争と文学>
■作家が従軍するもう一つの理由
浅田:で、じゃあ、貧乏なやつだけ好んで行くかというと、やっぱり軍部は作家の名前が欲しいでしょう。

吉岡:送るほうとしてはね。

浅田:名前があるやつがなぜ行くかといったら、その間、連載休止になると思うんだよ。僕だったら理由はそれだよ。700円じゃなくて。

 いま、新聞連載を含めて5本。月に200枚以上。こういう地獄の状態のときにだね、この話、菊池寛から行かないかと話がくるんだよ(笑)。

吉岡:それはいいね(笑)。

浅田:浅田さん、いまの「オール読物」も、「週刊文春」も、そりゃあ、連載中断でいいよとか。しかも、金をもらって。ほかの版元さんだって同じ。国策で行くんだから連載休止。

吉岡:国策だからね。

浅田:これは、一部の作家の従軍理由は、それだと思う。仕事しなくていい(苦笑)。

吉岡:なるほど。リアリティーがあるな(笑)。

浅田:原則として、小説家というのは、こえは、吉岡さんをみていてわかるんだけれども、ノンフィクション系の作家というのは、根が働き者。でもね、フィクション系の作家というのは根が遊び好き。根がずぼら、できれば、働きたくない(苦笑)。いわゆる小説家たちが小説家になった最大の動機、みんな、いろいろなこと、きれいごとを言うけれども、最大の動機は、会社に行きたくない。

吉岡:それは、おれも遺書だよ(笑)。

浅田:だからさ、小説家になって、原稿を全然書かないやつもいるわけだよ。どう考えたって、1年に1冊のペースで単行本を出すとしても、小説家は暇で暇で、しようがない。1日1枚書いて、それで1冊になるんだからね。

吉岡:そうだね。

浅田:でしょう。そんな仕事がほかにあるわけないじゃない。ということは、小説家は、全部ずぼらでね、だから、売れる前に700円欲しいっていうやつか、もうともかく働きたくないから上海でも行ってね、うまいもの食って兵隊のエッセイでも書いてというぐらいで、金をもらえるのか、よし、それで行こうっていう、これは、どっちかだと思う。いま、そのことを小説に書いています。

■林芙美子と火野葦平
吉岡:林芙美子も、そうだったんですかね。林芙美子は南京攻略(1937/昭和12年)のとき、毎日新聞の特派記者として従軍し、翌年は内閣情報部のペン部隊に加わり、朝日新聞の特派記者となって漢江攻略戦に一番乗りをしますね。たくさんの従軍記者を書きますが、それをもとに書き下したのが『戦線』(1938年)。あのとき、朝日新聞社は彼女に腕っこきの記者たちをつけ、航空機や宿の手配など、相当な便宜も図っています。

浅田:はいはい。

吉岡:次の北岸部隊なんかでは、1日、重たい荷物を背負って歩きづめに歩いてどうのこうのという話があるんだけど、ほとんどはトラックで移動しているよね。

 でも、そういうことは書いてなくて、もう死体が転がるところに、私も一緒に寝るんだみたいなことが書いてあるけど、彼女自身はそんなに強行軍だったはずはないね・・・。いや、もちろん、あるときは歩いたんですよ。銃声に怯えたこともあったでしょうし、死体もみたでしょう。だけどね、戦場であっても、けっこういい旅しているよ。

浅田:林芙美子は苦労人だからね、この条件だったら、絶対行く(笑)。

吉岡:ま、もともと行商人の娘だから、歩くことは別にいいと思うんだけど、でも、ちゃんと風呂にも入っているし、いい部屋にも泊まっている。とはいえ、一生懸命書いてはいますけどね。

 でも、やっぱり林芙美子は、この『戦線』や『北岸部隊』よりも、戦後だよね。戦後の骨つぼの話があるじゃないですか。『骨』(1949年)とか、戦後庶民ものはいくつかありますけど、家族を亡くして塗炭の苦しみに沈んだ人たちを書いた小説はうまい。小説としてうまい、というだけじゃなくって、これこそ自分が書くべきものだ、という覚悟が伝わってくるものね。


『ペンの力』1

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