『セレモニー』

<『セレモニー』>
図書館に予約していた『セレモニー』という本を、図書館に借出し予約して4日後にゲットしたのです。
このところ、『紙の動物園』を読んで以来、中国人のSFにはまっているが・・・
この本の冒頭で、ウィルス対応の手洗いがでてくるのが、なにやら気になるのです。


【セレモニー】


王力雄著、藤原書店、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
共産党建党記念祝賀行事と北京万博が重なる空前の式典年に勃発した感染症パニックと、その背後で密かにうごめき始めた極秘の暗殺計画ー。SARS事件、ウイグル問題、ファーウェイ疑惑など、現代中国をめぐる事態を髣髴とさせる、インターネット時代の『一九八四年』。現在、行動の自由を厳しく制限されている反体制作家による、中国本国で未公刊の問題作、邦訳刊行!

<読む前の大使寸評>
このところ、『紙の動物園』を読んで以来、中国人のSFにはまっているが・・・
この本の冒頭で、ウィルス対応の手洗いがでてくるのが、なにやら気になるのです。

<図書館予約:(6/30予約、7/04受取)>

rakutenセレモニー



冒頭の語り口を、見てみましょう。
p17~20
<靴のインターネット>
 元旦の夕方。細かな雪が、厚いスモッグに覆われた北京を舞っている。この世の始まりにあったという“混沌”を思わせた。李博(リーポー)は、娘を妻の両親のもとへ送り届けて帰宅すると、まず手を洗った。これは妻の伊好(イーハオ)が決めたルールだ。

 手を洗わないうちは、なにも触ることができない。医療関係者の手洗いマニュアルどおりに、指のひとつひとつ、爪の間まで綺麗に洗う。そのあとは、紫外線ライトで乾かした。娘がインフルエンザウイルスに特別に敏感だということが分かってから、数年間実行されているあいだに、それはこの家の本能のようになっていた。励行しているうちに、李博は、手を洗わないと、その手がウイルスの手袋をしているような感じがするようになっていた。北京の言葉遣いでいえば、「うざったい」のだ。

 元日は、本来、法で定められた休日だった。だが今年はそうではなかった。公務員は全員出勤しなければならない。北京市疾病予防センターの防疫専門スタッフのチーフとして伊好は、日中だけでなく、夜間も、所属部門で勤務しなければならない。李博は、国家安全委員会情報管理センターのシステムエンジニアだ。しかし技術職は、総合職に比べればいくらか縛りがゆるい。彼の所属部門は、昼のあいだ家で子供をみて、晩から夜勤に出ることを許してくれた。

 李博は、40歳になったばかりだった。身長1メートル81センチ、世に言う“どうしても太らない体型”をしていた。姿勢が良くて、衣服がしゃれていれば、ずいぶんと恰好がいいはずだ。だが、長年のキーボードのまえに座る習慣が、彼を猫背にしてしまって、背が実際よりも低く見えた。実家を出てから20年あまりが経っている。しかしながら、伊好が彼のために選んだイタリア製のメガネなしでは、いまもひと言でいえば、全体的に地方出身者の雰囲気を漂わせていた。
(中略)

 娘がウイルスに感染しないように、伊好は、家ではスリッパを使わせなかった。スリッパは不潔になりやすい。いつでも洗えるソックスの清潔さにおよばないというのが、その理由である。これには李博も大賛成だった。ただ、彼の賛成には、清潔さのほかにも理由があった。プロジェクトを運営・管理するメンバー以外で、この秘密を知る人間はふた桁にいかないと李博は信じているが・・・最近の数年間に生産された国産の靴には、スリッパや正規のルートで輸入された外国産の靴も含めて、すべてSID(セキュリティ識別子)が取り付けられていたからだ。どの靴一足も、いやそのどちらの一個も、移動体通信ネットワークに紛れている高周波によって、認識と追跡が可能となっていた。
 
 このネットワークは、靴のインターネットと呼ばれていた。理論的には、そこには目新しいところは、あまりない。数十年前に持てはやされた、モノのインターネットを、靴に応用しただけのことである。ⅠoTは、モノに無線通信タグをとりつけて、管理・計画・リソースの配置といった方面へと、広範囲に使用する。そしてその前途は無限だとされる。

 しかし、このⅠoSは、そういった用途には使われていない。それは国家の安全に関わる機密事項だった。彼が初めて携わってからすでに数年が経つ。しかし、彼はこの機密について、伊好にはひとことも話したことはなかった。

 李博は、SIDの責任者だった。SIDとは、ある種の特殊なナノ材料である。靴の任意の場所において閉ループを形成し、離れた場所からのアクティベーションが可能な識別タグ
となる。これが、ⅠoSの基本的な機能だ。
(中略)

 ⅠoSは四六時中、両足に仕込まれた靴のSIDを追跡し、リアルタイムであらゆるデータを記録し、必要とあれば、さらなる追跡調査を実施する。いついかなる時にも、人々は、その監視下にあるのだ。


 ウーム、まるで現在の中国共産党の監視社会を見るようで、怖いのである。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント