『「ユダヤ」の世界史』3

<『「ユダヤ」の世界史』3>
図書館で『「ユダヤ」の世界史』という本を借りて読んでいるのだが・・・
この本の目次を見てもわかるように、視点の広さ、歴史の深さ、迫害の悲劇は驚くばかりでおます。


【「ユダヤ」の世界史】


臼杵陽著、作品社、2019年刊

<商品説明より>
「ユダヤ」の人々は数千年にわたって、信仰や記憶を通じて一つに結びついてきた一方で、自らが生きた時代や地域の中で、きわめて多様な姿を見せることとなった。一神教の誕生から、離散と定住、キリスト教・イスラームとの共存・対立、国際的ネットワークの展開、多彩な才能の開花、迫害の悲劇、国家建設の夢、現在の紛争・テロ問題にいたるまで、そこにはこの世界の複雑さが映し出されてもいる。「民族」であると同時に「信徒」である「ユダヤ人/教徒」の豊かな歴史を辿り、さらには、そこから逆照射して世界史そのものの見方をも深化させる。

<読む前の大使寸評>
この本の目次を見てもわかるように、視点の広さ、歴史の深さ、迫害の悲劇は驚くばかりでおます。

rakuten「ユダヤ」の世界史



第6章「十字軍からレコンキスタへ」を、見てみましょう。

「内なる敵」としてのユダヤ人よりp119~121
 ヨーロッパとイスラーム世界の関係を考える上で、十字軍とレコンキスタという二つの重要な事件があるが、両者はユダヤ教徒の歴史を考える際も必ず取り上げられる。

 ヨーロッパにとって十字軍は大変重要な意味を持っている。11世紀から13世紀にかけてヨーロッパのキリスト教徒が、聖地エルサレムをイスラーム教徒の手から奪還しようとした企てという説明が一般的である。十字軍そのものの企ては結果的には失敗に終わる。

 十字軍が再び語られ始めるのは第一次世界大戦である。1916年に、預言者ムハンマドの直系ハーシム家のシャリーフ・フサインが、イギリスの支援を受けてオスマン帝国に対しアラブの反乱を呼びかけた。その際に、かの有名な「アラビアのロレンス」(トーマス・E・ロレンス)がエルサレムから少し東側にあったヒジャーズ鉄道に沿って北上した。

 それに対応し、カイロに拠点を置くエドモンド・アレンビーというイギリス軍の将軍も地中海海岸沿いに北上し、ガザを通ってエルサレムに入った。そのイギリス軍がエルサレムを占領した時に、再び思い起こされたのが「十字軍」という名称なのだ。

 つまりキリスト教徒がついにエルサレムを奪還したということになる。ただし、それは当時のイギリスとしては公言できないことであった。圧倒的にイスラーム教徒が多いエルサレムにおいて「十字軍」という言葉を使ってしまうと、その後のイギリス支配に影響するという理由からだ。とはいえ、公然の秘密という形で、そのような理解が多かったのは事実である。

「十字軍」という言葉は現在に至るまで散見される。例えば2001年の「9・11事件」の際、当時のアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領がテロとの戦いのことを「十字軍」だと言ったというエピソードは有名だ。欧米のキリスト教世界においては潜在的なところで、十字軍の問題は決して忘れ得ない事件として記憶されているのだ。

 ユダヤ教徒の視点から十字軍を考える際、イスラームからの聖地奪還とは別の問題がある。イスラーム教徒はヨーロッパのキリスト教徒から見ると「外なる敵」であった。そして、当時ヨーロッパ内に住んでいたユダヤ教徒は「内なる敵」と位置付けられていた。つまり、ユダヤ教徒はスパイ的にイスラーム教徒と手を組み、内側から撹乱しようとしている存在と見られていたのだ。

 十字軍の時代から、イスラーム教徒と同一視される形でユダヤ教徒に対する迫害が激しくなったという歴史的事実があったのである。キリスト教徒が地中海を隔てたイスラーム世界へ軍を派遣することが活発化すればするほど、近くにいるユダヤ教徒に対する迫害が激しくなっていくという側面があったのだ。

 ヨーロッパとイスラーム世界との関係を考えた際、十字軍は13-15世紀の「レコンキスタ」への歴史的連続性を持っていることが分かる。レコンキスタとは「再征服」を意味するスペイン語であり、イスラーム教徒に支配されたイベリア半島をキリスト教徒が奪還する運動のことだ。当時、イベリア半島はイスラーム世界とヨーロッパ世界の間での衝突の最前線の一つであった。つまりレコンキスタが達成されれば、十字軍以来のヨーロッパによるイスラーム教徒追討作戦がここでとりあえず完了することになる。

 「レコンキスタ」に続く大公開時代はヨーロッパによる世界の一体化、すなわちグローバル化の最初の段階と言われる。ヨーロッパによる世界征服の第一歩ということだ。それはイスラーム世界とキリスト教世界の対立の中で、地中海貿易を牛耳っていたイスラーム教徒、あるいは一緒に行動していたユダヤ教徒が排斥されていったことを意味する。


『「ユダヤ」の世界史』2:イスラエル国の建国
『「ユダヤ」の世界史』1:十字軍の遠征

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