『“機関銃要塞”の少年たち』1

<『“機関銃要塞”の少年たち』1>
図書館に予約していた『“機関銃要塞”の少年たち』という本を、図書館に借出し予約して4日後にゲットしたのです。
『ブラッカムの爆撃機』を読んだあとに、同じ著者の本を読むことになってしまったが・・・チェーン状に読む癖があるのです。


【“機関銃要塞”の少年たち】


ロバート・ウェストール著、評論社、1980年刊

<カスタマーレビュー>より
「機関銃要塞」って何だろう?と軍事知識のある人は思うだろう。そんな軍事用語は存在しないからだ。しかし、本書を読み終わると、この題名もなかなか味わい深いと思うようになった。予備知識なしの日本人には、むしろこちらの方が作品の内容にふさわしいかも知れない。原題は『THE MACHINE-GUNNERS』、『機関銃手たち』である。読み終わって原題を確認してナルホドと納得した。

<読む前の大使寸評>
『ブラッカムの爆撃機』を読んだあとに、同じ著者の本を読むことになってしまったが・・・チェーン状に読む癖があるのです。

<図書館予約:(7/07予約、副本2、予約0)>

amazon“機関銃要塞”の少年たち



冒頭の語り口を、見てみましょう。
p9~13
<1奇妙なコレクション>
 チャスが目をさましたとき、防空ごうのなかは静まり返っていた。入口のカーテンに陰気な冬の光がまつわりついている。なん時ともいい切れない明るさだ。母はいなくなっていた。それと保険証書や救急用のブランデーを入れた茶色の小さなアタッシェ・ケースも消えている。広場をまわってくる牛乳売りの車の音が聞こえた。きっと空襲警報解除のサイレンが鳴ったのにちがいない。

 かれは頭をすりむきながら防空ごうを出て、注意深くあたりを見まわした。なにも変わったところはない。おなじみの牛乳売りがいつものように口笛を吹いている。かれの車もいつも見なれたものだ。だが車につんだ牛乳びんの数がいつもより多すぎる。これはよいことではない。びんが一本でもふえるごとに、どこかの家族が前夜のうちに爆撃で焼けだされたことになるのだ。

 チャスは裏口へまわった。母が灯油ストーブをつけて、パンを揚げていた。その匂いをかぐとホッとした。窓ガラスがまた二枚割れている。父がそのあとをネスル牛乳のボール箱でふさいでいた。ボール箱にすられた字がきちんと上を向くように、窓わくへはめこんである。父はそういう点にうるさかった。

 父は一パイント入りの専用の紅茶カップを持って、ストーブのそばにすわっていた。つかれた顔つきをしてはいたが、それでも警防団の制服をきちんと着こみ、肩つりの下へベレー帽をたくしこんでいた。

「八百屋の娘っこ覚えてるかい?」
「しょうが色の髪の毛したほう?」ストーブの上にかがみこんだまま、母が聞き返した。「そうだ。直撃弾さ。あのこのからだ半分が前庭で見つかったのに、残り半分は向かいの家とのあいだに落ちてたんだぜ」
「あのこは防空ごうへ退避したってなんにもならないって考えだったのよ。ごうのなかで生き埋めになるのがこわかったのね」母が肩を丸めているようすから、チャスはかの女が泣くのをこらえているのがわかった。

 父がチャスのほうに顔をむけた。
「おまえのウサギはみんな大丈夫だぞ。チニーの敷ワラのなかにガラスの破片がちょいととびこんでいたけど、おとうさんがどけといたから。でも温室のガラスが6枚も割れちまった。この調子だと、今年のクリスマスには菊の花が拝めないかもしれんな」
「菊なしじゃだいなしだわね」と、母がいった。きゅっと結んだくちびるが、かすかにふるえている。「さあ、ごはんですよ」

 チャスは元気をとりもどした。うす切りにしたパンを数枚丸ごと揚げたやつに、ほんのりピンク色をしたソーセージのかたまりひとつ。へんな味だ。戦争前のソーセージとは似ても似つかない。しかしかれは、そのへんな味すら好きになり始めていった。両親の話を聞きながら、チャスはだまりこくって食事を続けた。
(中略)

 チャスはていねいにサイの目に切り刻んでおいた揚げパンの最後のひと切れをたいらげると、期待を顔に現わして父に目を向けた。
「行って見てきていい?」
「ああ、いいとも。でも、あるのはレンガくらいのもんだぞ。なにもかもけしとんじまったからな。だから高射砲の音がちっとも聞こえないのさ」

 母は心配そうな顔になった。「行かせないほうがいいんじゃない?」
「行かせてやれよ、かあさん。なんにも残っちゃいないんだから」
「不発弾は?」
「だいじょうぶ、こんやはまったく静かなもんさ。友軍機がいっぱいとんでるからな。だから高射砲の音がちっとも聞こえないのさ」

「古い買物かご借りていい?」とチャスが聞いた。
「いいと思うけど。でもなくさないでね。それからいつもみたいにガラクタを家のなかへ持って帰らないこと。まっすぐ温室へ持ってってちょうだい」
「学校はなん時だ?」と、父が聞いた。
「十時半。空襲があったのは真夜中すぎだもんね」
 戦争中にも少しはいいことがあるものだ。

 チャスはガーマスでも二番目にいい戦争コレクションを持っていた。いいコレクションを集めるには、どこをさがせばいいか心得ておくことがかんじんだ。ばかな子供たちは舗道か溝のなかに目をつける。まるでそういう場所が爆撃直後にさらえられてしまったりしないと思いこんでいるらしい。

 一番いい目のつけ所は、ほかの連中がだれ一人夢にも思いつかないような場所、たとえばいぼたの生け垣の根元の乾いた土の上などだ。そんな所にはよく機関砲弾が地面にぶつかった衝撃で金属の小さなきのこみたいにつぶれて転がっている。まのぬけた連中には、生け垣からそんなものが落ちてくるなど思いもよらないのだ。

 歩きながら、チャスはいたる所に目を配っていた。マーストン・ロードの角では、舗道が1ヤードばかり焼けただれて白っぽくなっていた。焼夷弾だ! 爆弾の尾びれがどこか近くにあるはずだった・・・ふつう地上で炸裂したとき大きくはねとばされるのである。


『ブラッカムの爆撃機』3:ブラッカムの爆撃機(続き)
『ブラッカムの爆撃機』2:ロバート・ウェストールの生涯
『ブラッカムの爆撃機』1:ブラッカムの爆撃機

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