内田先生かく語りき(その20)

<内田先生かく語りき(その20)>
「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。
内田

最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。
(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、印鑰さんは@、櫻井さんは*、西加奈子さんは♪で区別します)

・ホ・ヨンソン『海女たち』書評
・2020年度寺子屋ゼミ受講要項
・『山本太郎から見える日本』から
・『人口減社会の未来学』から
・「サル化する世界」についてのインタビュー
・映画『Workers被災地に起つ』神戸・元町映画館でのアフタートーク
・週刊金曜日インタビュー
・桜を見る会再論
・『Give democracy a chance』2
・『Give democracy a chance』1
・沈黙する知性
・China Scare
・[週刊ポスト」問題について
・『低移民率を誇る「トランピアンの極楽」日本の瀕死』
・『ネット右翼とは何か』書評
・『最終講義』韓国語版あとがき
・『「そのうちなんとかなるだろう」あとがき』
・『参院選にあたって』
・『廃仏毀釈について』
・『論理は跳躍する』
・『「おじさん」的思考』韓国語版序文
・『市民講座』韓国語版のための序文
・空虚感を抱えたイエスマン
・大阪万博という幻想
・外国語学習について
・大学院の変容・貧乏シフト
・『知日』明治維新特集のアンケートへの回答
・カジノについて
・中国の若者たちよ、マルクスを読もう
・『街場の憂国論』文庫版のためのあとがき
・直言3月号「韓国の教育と日本のメディア」
・人口減社会に向けて
・時間意識と知性
・Madness of the King
・吉本隆明1967
・大学教育は生き延びられるのか?
・こちらは「サンデー毎日」没原稿
・奉祝「エイリアン・コヴェナント」封切り
・米朝戦争のあと(2件)
・気まずい共存について

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内田先生かく語りき8目次

(目次全文はここ)

(その20):「ホ・ヨンソン『海女たち』書評」を追記



25020/05/11ホ・ヨンソン『海女たち』書評より

 私は韓国文学についてほとんど何も知らない。まして詩は私のもっとも苦手とする分野である。だから、日本の詩歌についてさえ一度も書評を書いたことがない。どうしてそんな人間に書評を依頼してきたのか、よく理由がわからない。おそらく訳者の姜信子さんとのご縁だろうと思う。姜さんは「かもめ組」という三人組(浪曲の玉川奈々福さん、パンソリの安聖民さんとのトリオ)で、私の主宰する凱風館で浪曲とパンソリのジョイントコンサートをしたことがある。

 韓国文学には無縁の人間だが、さいわい済州島には二度だけ行ったことがある。一度は講演のために、二度目は済州島の生活文化にもその地の痛ましい歴史にも詳しい大阪市大の伊地知紀子さん引率の「修学旅行」として。でも、変な話だけれど、済州島というと一番印象に残っているのは、最初の訪問のときにたまたま立ち寄った漁港の大衆食堂で食べた「さばの味噌煮」ある。この島の人たちが私たちと同じ仕方で調理されたものを、同じように美味しく食べているのだと消化器が証言したときに、日韓の思いがけない近さと、そして遠さを私は同時に感じた。

 遠く感じたのは、ほとんど同じ生活文化で身を養ってきたにもかかわらず、その隣人が、この島やあるいは対馬や大阪でどんなことを経験をしてきたのか私はほとんど何も知らないという事実の前にひるんだからである。

 私は済州島の潮風に研がれた生活者の顔を前にすると「ひるむ」。それはこの詩集のすべての頁に対した時の私の正直な感懐である。それは恐怖とも嫌悪とも違和感とも違う。見知らぬ老女に不意に「百年前にあんたに最初に会ったのも、こんな風の日だったね」と告げられて、そうだったのか、俺はこの人と血縁だったのに、何か「ひどいこと」をして、それきりになったんだ。そんな漱石の『夢十夜』のような、存在しない記憶が甦ってくるのである。





25020/04/172020年度寺子屋ゼミ受講要項より

 さて、すでに告知しておりました通り、2020年度の前期のテーマは「中国」です。
 今回のコロナ禍への対処では中国とアメリカが対照的でしたね。
 中国は、最初は感染リスクを過小評価し、情報隠蔽など初動で悪手を打ちましたが、途中から都市封鎖、「一夜城」的病院建設、医療資源の集中的投下などで、感染拡大を抑え込みました。これは中国のような強権的な国家でしかできないことで、「私権の制限できて羨ましい」と感じた人もきっと世界中にはいたはずです。

 その後、中国は人工呼吸器、防護服、マスクなどの製造拠点であることの利を生かして、いち早く医療支援国になりました。イタリアが医療崩壊で苦しんでいた時、EUは手を差し伸べませんでしたが、中国は医療支援を申し出て、これでイタリア人の対中国感情は一気にプラスに振れました。

 中国はこの「成功体験」を踏まえて、これから「医療支援カード」を最大限外交的に活用してくるだろうと思います。アメリカが感染の止まらない拡大と「アメリカファースト」と大統領選で、国際社会への医療支援の余力がないのに対して、中国の方がこの領域ではあきらかにアドバンテージがあります。
 興味深いのは「ワクチンと治療薬の開発」です(これは兪先生からの請け売りです)。
 いま、世界でコロナウィルスのワクチンと治療薬を開発できる科学力を持っているのは、アメリカとEUと中国だけです(残念ながら日本には誰も期待していません)。
 アメリカが開発した場合、アメリカは自国民の次にはカナダ、メキシコという三国協定加盟国に配布して、あとはできるだけ高値で売りつけようとするでしょう。EUが開発した場合は、自分たちの次には移民労働者の送り出し国に優先的にワクチンを配布する(しておかないと、移民流入で第二波、第三波が来てしまいますから)。だから、マグレブとトルコですね。EU開発のワクチンが日本に回ってくるのはずいぶん後回しになるはず(というのが兪先生の予測でした)。

 さて、中国がワクチンを開発した場合はどうなるか。この場合は、日本にはかなり早く来ると僕は思います。たぶん、それも「友だち価格」で。両国民の行き来が盛んですから、日本を「安全」にしておかないと中国も困るからですが、それだけではありません・・・
 これを機に中国は一気に70年代の日中共同声明時点のような「日中の蜜月」を再構築しようとするのではないか、と僕は予測しております。
 トランプのアメリカが日本を「搾れるだけ搾れる植民地」とみなしていることが日々明らかになる中で、中国が日本を「たいせつな友邦」として遇してくれたら、日本人はどう対応するでしょう?
  
 僕は習近平は、ポストコロナ期の東アジアで、日本を取り込んで、アメリカから心理的に離反させ、あわせて韓国・台湾との「東アジア共同体」構想の真ん中に地政学的なくさびを打ち込む・・・という戦略で来るんじゃないかと思っています。つまり、日本を「経済的属国」にするというプランです。

 日本は東アジアの中で最も「属国慣れ」している国ですから、宗主国がアメリカから中国に代わっても、あまり体制に変化がない。




(以降、全文は内田先生かく語りき(その19)による)

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