吉岡桂子記者の渾身記事36

<吉岡桂子記者の渾身記事36>
朝日新聞の吉岡記者といえば、チャイナウォッチャーとして個人的に注目しているわけで・・・・
その論調は骨太で、かつ生産的である。
中国経済がらみで好き勝手に吹きまくる経済評論家連中より、よっぽどしっかりしていると思うわけです。
吉岡


朝日のコラム「多事奏論」に吉岡桂子記者の記事を見かけたので紹介します。
*****************************************************************************

2020年4月25日(多事奏論)コロナ禍の記憶 覚えていよう、歴史は私たちのものより
 真実をのぞく「窓」として愛された日記の作者が、中国のネット上で激しく攻撃されている。「売国奴」――。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて封鎖されていた武漢市で暮らす作家、方方さん(64)に対して、そんな言葉が飛び交う。

 日記は身近な生活や死の悲しみを丁寧につづり、情報を隠蔽した政権への怒りも隠さない。3月24日までブログに発表された全60編は、中国内外で1億人以上が読んだとも言われる。日本語への翻訳も進んでいる。ところが、英、独語での出版が公表されたとたん、中国内で攻撃が強まった。

 文明国家をはかる唯一の尺度を「弱者への接し方」と指摘しながら、自国の問題点を外国人に伝えるのは「国を売る行為」だと言うのだ。彼女を支持する読者も多いが、ネット上の罵声はやまない。国であれ会社であれ、自らが属する集団への批判は愛があるからだ。悲しい現実を伝えるのは良心があるからだ。それなのに、逆のレッテルを貼って攻撃している。

 外国人と結ぶ同胞を嫌ってきた歴史に加えて、権力の意向とも無縁ではない。感染のピークが過ぎたと判断した中国政府は、国民に感謝を求めている。マスクなどを配り医師を派遣した外国に対しても称賛を促す。発生時の隠蔽や初動の遅れに対する批判をかわし、内政と国際政治ともに「コロナ」後をにらんで動く中国政府にとって、国内の声は意に沿う一つの色の方が良い。

     *

 やりきれず鬱々している時、北京に住む作家、閻連科さん(61)とメールでやりとりする機会があった。「炸裂志」「愉楽」など話題作を連発し、日本にもファンは多い。タブーを嫌う姿勢から、中国では出版できない作品も少なくない。

 「マスクは足りていますか」

 日常を取り戻しつつある北京からあたたかな心遣いとあわせて、こう書いていた。

 「(自分も)人々から絶え間なくののしられている。新しいウイルスが中国の人々の心をここまで引き裂いているとは想像を超えていた」。多くを語らないが、方さんに対する攻撃の背景と無縁ではなかろう。

 閻さんもコロナ禍の中で、自らの言葉を投げかけてきた。「この厄災を記憶する人であれ」という題目で、教鞭をとる香港科技大学の学生らに向けて2月下旬、北京からオンライン講義を行った。文章の創作を学ぶ若者らが対象で、中国人の学生も少なくない。方さんに触れて「存在と記録」をたたえながら、呼びかけていた。

 「新型コロナとの戦争に勝利したと、国家がドラや太鼓を鳴らし、大騒ぎを始めるとき、そんな空っぽな歌を一緒に歌うような物書きではなく、自らの記憶を持つ偽りのない人間でいてほしい」

 まさにいま中国で、「ドラや太鼓」が響いている。人々の歌や踊りは権力からの指示とは限らない。誰でも悲しみや苦しみを抱えて生きることはしんどい。国家や組織の「勝利」に身を委ねて、悪者をどこかに求めたくなる。方さんはその標的の一人ではないか。こうした構図は、中国のような権威主義国家だけの話ではないはずだ。

     *

 「(当局の発表前に新しい感染症を知人らに伝えた武漢の医師)李文亮のように警鐘を鳴らす人になれなくても、その声を聞き取れる人になろう。大声で話せないなら、耳元でささやく人になろう。ささやくことすらできないなら、黙っていてもいいからおぼえている人になろう」。そう語る閻さんの講義は、中国当局から削除されながらも転載を重ねて静かに読まれている。

 社会の記憶力の乏しさこそ、権力に同じ過ちを許す。だからこそ、国家が都合良く再構成した歴史ではなく、ささやかでも消せない個人の記憶が大切なのだ。

 おぼえていよう。目の前で起きていることを。コロナ禍の中で編まれつつある歴史の手綱を、握りしめておくために。(編集委員)


*****************************************************************************

多事奏論一覧に吉岡記者の中国論が載っています。
<吉岡桂子記者の渾身記事35>:2020年3月12日
<吉岡桂子記者の渾身記事34>:2020年1月25日





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント