『鉄の胃袋中国漫遊』4

<『鉄の胃袋中国漫遊』4>
図書館の放出本で『鉄の胃袋中国漫遊』という本を入手したのです。
ぱらぱらとめくってみると、思いのほかカラー写真が多くてビジュアルである。
・・・これは、まったくありがたい放出本であった。


【鉄の胃袋中国漫遊】


石毛直道著、平凡社、1996年刊

<「BOOK」データベース>より
上海、鎮江、揚州、南京、重慶、済南、広州…強靱な胃袋にものをいわせて大中国を食べ尽くす。市場を巡り、露店・屋台でつまみ、庶民の食卓に連なってとどめは名菜のフルコース。食の第一人者が堪能した、驚異の中国「食」紀行。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくってみると、思いのほかカラー写真が多くてビジュアルである。
・・・これは、まったくありがたい放出本であった。

amazon鉄の胃袋中国漫遊


太子の好物でもある羊肉料理を、見てみましょう。
p164~171
<清真菜>
 中国の都市の飲食店の看板を仔細に観察しながら歩いたならば、清真菜館とか回民食堂、回族食料品店といった文字にたびたび出くわす。回民、回族とは回教すなわち、清真(イスラム)教を信じる人びとをします。コーランのおきてによって、イスラム教徒は不浄な動物とされるブタの肉を食べること、異教徒が屠殺した肉を食用にすることが禁じられている。

 ところが、肉といったら、ふつうはブタ肉をさす国のことだ。メニューにも、牛肉湯麺、羊肉湯麺といったふうに、ブタ以外の肉料理には断り書きがあるが、ブタ肉料理のときは、肉糸湯麺と記すだけで、わざわざ猪肉とは断らない。ついでながらのべると、猪とは家ブタのことで、イノシシは野猪という。

 このようにブタ肉が常食化している漢人の食堂に、回族の人びとが出入りするわけにはいかないので、都市の生活では、イスラム教の戒律にのっとった料理を食べさせる料理店や、宗教的に清浄な食品を売る食料品店が必用となる。

 中国は多民族国家である。公認されている少数民族の数は五十五あるが、回族はその一つ。少数民族のなかにも、ウイグル族、カザフ族、タジク族など、トルコ系やイラン系のイスラム教を信じる人びとによって構成されている民族がいくつもある。

 これらイスラム系の少数民族は、辺境地域に分布して地域集団を構成し、独自の言語や、風俗習慣や顔つきのちがいなどで、漢民族と区別さsれるのだが、その点回族はいささか趣きを異にする。
 回族は寧夏回族自治区に集中するほかは、中国全土に分散し、顔つきも漢族と区別できないし、回族独自の言語もない。

 回族は昔、アラビア、トルコ、イランなど、西方各地から中国へやってきたイスラム教徒たちの子孫であり、単一の民族に起源する集団ではない。かれらは、各地に清真寺という回教寺院をつくり、イスラムへの信仰を主軸としたコミュニティを形成して生活をしてきたが、漢民族との結婚をくりかえしたり、中国風の姓名に改姓したり、漢族のなかのイスラム教に改宗した人びとを加えたりするうちに、イスラム教の信仰とイスラム的生活習慣をのぞくと、漢族とは区別ができないような集団になってしまった。

 全世界のイスラム教徒はラマダンといって一年一度の断食月には、昼間は飲食をしないことになっているが、回族の人びともその戒律を守っているだろうか?
 イスラム教徒に許される肉は、「アッラーの御名において、アッラーは偉大なり」と唱えつつ、刃物で喉笛をかき切って屠殺した動物にかぎられるが、中国の屠殺場にはイスラム教徒の屠殺人がいるのだろうか?

 そんな疑問を解消するために、南京市太平路の清真寺を訪ねることにした。
 清真寺はアラビア語のモスクにあたる。だが、ミナレットとドームをもつモスク建築は、中央アジア方面をのぞく中国本土では定着しなかった。わたしの訪れた清真寺も、外観上は仏教や道教の寺院建築と変わらない。アラビア文字の書かれた額があることと、本堂の奥に、人びとが祈りをささげるメッカの方角にむけて、ミラーブが設けてあることだけが、かろうじてイスラム教の寺院であることをしめしている。

 白いイスラム服をまとった恰幅のよい人物が近寄ってきた。
「アッサーム、マレイコム!」とイスラム教徒のあいさつの言葉をのべると、ちょっとおどろいた様子で、「マレイコム、サラー」と型どおりの返礼がかえってきた。
「あなたは日本人のイスラム教徒か?」
「そうではありませんが、イスラム教の人びとのあいだでくらしたことがあり、イスラムに関心をもつ者です」と答えると、こころを許してくれたらしい。この人は馬国賢さんといい、ここの阿衛(アホン)であった。アホンとは、清真寺の教長のことである。
(中略)

 四人組追放後は、政府が回族に特別の配慮をおこなうようになり、南京市には、回族のための屠殺兼食肉加工場がつくられ、そこでは牛や羊肉が巨大な冷凍庫に保存されて、回族の需要に応えられるようになった。
「あなたもごぞんじのように、イスラム教徒は食事をハラムとハラルにわける」といって、馬さんはハラムを「禁止」、ハラルを「不禁止」といいかえた。「禁止」の食物を口にしたら、四十日間身をつつしんで宗教的功徳を積んだぶんが、ふいになってしまうので、信者からは「この食物を食べていいかどうか?」といった問い合わせがよくあるという。(中略)

<美人の肝料理>
 馬祥興は南京でいちばん有名な清真館である。南京は一時太平天国の都となったが、太平天国に参加した人びとには、回族も含まれていたという。たぶんそんなことで南京へやって来たと思われる、河南省出身の馬盛祥という回族の人が料理屋をはじめ、自分の名前に店名が繁盛するようにと、興の字を加えて馬祥興という店名をつけた。

 馬という姓はイスラム教徒におおい。はじめは牛の内臓のごった煮などを売っていたのだが、しだいに料理屋の体裁をととのえた。そのうち、この店の四大料理である美人肝、鳳尾蝦、蛋焼売、松鼠魚の評判が広まり有名料理店になった。

 子供の頃からこの店で働き、馬祥興の四名菜を育ててきた、名コック長の馬定松さんに話を聞いてみた。
「この店には総計七十人の従業員がいるが、うち十八人がイスラム教徒だ。自分は清真寺へお参りもするし、ラマダンのあいだ日中は飲食をしない。回族以外の客がおおいので、ラマダン中も店は開いている」

 ラマダンの期間は、味見をしないで料理をつくるのかどうかは聞きもらしたが、そこは長年の経験で舌にのせずとも、自信をもって味つけできるのだろう。

2018年ころからウイグル族への弾圧が強まったが・・・
この本の発刊当時は中国のイスラム教徒は牧歌的な生活を続けていたようですね。

『鉄の胃袋中国漫遊』3:米飯の味の違い
『鉄の胃袋中国漫遊』2:日中の酢豚の味
『鉄の胃袋中国漫遊』1:南京のウドン


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