内田先生かく語りき(その19)

<内田先生かく語りき(その19)>
「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。
内田

最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。
(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、印鑰さんは@、櫻井さんは*、西加奈子さんは♪で区別します)

・2020年度寺子屋ゼミ受講要項
・『山本太郎から見える日本』から
・『人口減社会の未来学』から
・「サル化する世界」についてのインタビュー
・映画『Workers被災地に起つ』神戸・元町映画館でのアフタートーク
・週刊金曜日インタビュー
・桜を見る会再論
・『Give democracy a chance』2
・『Give democracy a chance』1
・沈黙する知性
・China Scare
・[週刊ポスト」問題について
・『低移民率を誇る「トランピアンの極楽」日本の瀕死』
・『ネット右翼とは何か』書評
・『最終講義』韓国語版あとがき
・『「そのうちなんとかなるだろう」あとがき』
・『参院選にあたって』
・『廃仏毀釈について』
・『論理は跳躍する』
・『「おじさん」的思考』韓国語版序文
・『市民講座』韓国語版のための序文
・空虚感を抱えたイエスマン
・大阪万博という幻想
・外国語学習について
・大学院の変容・貧乏シフト
・『知日』明治維新特集のアンケートへの回答
・カジノについて
・中国の若者たちよ、マルクスを読もう
・『街場の憂国論』文庫版のためのあとがき
・直言3月号「韓国の教育と日本のメディア」
・人口減社会に向けて
・時間意識と知性
・Madness of the King
・吉本隆明1967
・大学教育は生き延びられるのか?
・こちらは「サンデー毎日」没原稿
・奉祝「エイリアン・コヴェナント」封切り
・米朝戦争のあと(2件)
・気まずい共存について

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内田先生かく語りき8目次

(目次全文はここ)

(その19):「2020年度寺子屋ゼミ受講要項」を追記



25020/04/172020年度寺子屋ゼミ受講要項より

 さて、すでに告知しておりました通り、2020年度の前期のテーマは「中国」です。
 今回のコロナ禍への対処では中国とアメリカが対照的でしたね。
 中国は、最初は感染リスクを過小評価し、情報隠蔽など初動で悪手を打ちましたが、途中から都市封鎖、「一夜城」的病院建設、医療資源の集中的投下などで、感染拡大を抑え込みました。これは中国のような強権的な国家でしかできないことで、「私権の制限できて羨ましい」と感じた人もきっと世界中にはいたはずです。

 その後、中国は人工呼吸器、防護服、マスクなどの製造拠点であることの利を生かして、いち早く医療支援国になりました。イタリアが医療崩壊で苦しんでいた時、EUは手を差し伸べませんでしたが、中国は医療支援を申し出て、これでイタリア人の対中国感情は一気にプラスに振れました。

 中国はこの「成功体験」を踏まえて、これから「医療支援カード」を最大限外交的に活用してくるだろうと思います。アメリカが感染の止まらない拡大と「アメリカファースト」と大統領選で、国際社会への医療支援の余力がないのに対して、中国の方がこの領域ではあきらかにアドバンテージがあります。
 興味深いのは「ワクチンと治療薬の開発」です(これは兪先生からの請け売りです)。
 いま、世界でコロナウィルスのワクチンと治療薬を開発できる科学力を持っているのは、アメリカとEUと中国だけです(残念ながら日本には誰も期待していません)。
 アメリカが開発した場合、アメリカは自国民の次にはカナダ、メキシコという三国協定加盟国に配布して、あとはできるだけ高値で売りつけようとするでしょう。EUが開発した場合は、自分たちの次には移民労働者の送り出し国に優先的にワクチンを配布する(しておかないと、移民流入で第二波、第三波が来てしまいますから)。だから、マグレブとトルコですね。EU開発のワクチンが日本に回ってくるのはずいぶん後回しになるはず(というのが兪先生の予測でした)。

 さて、中国がワクチンを開発した場合はどうなるか。この場合は、日本にはかなり早く来ると僕は思います。たぶん、それも「友だち価格」で。両国民の行き来が盛んですから、日本を「安全」にしておかないと中国も困るからですが、それだけではありません・・・
 これを機に中国は一気に70年代の日中共同声明時点のような「日中の蜜月」を再構築しようとするのではないか、と僕は予測しております。
 トランプのアメリカが日本を「搾れるだけ搾れる植民地」とみなしていることが日々明らかになる中で、中国が日本を「たいせつな友邦」として遇してくれたら、日本人はどう対応するでしょう?
  
 僕は習近平は、ポストコロナ期の東アジアで、日本を取り込んで、アメリカから心理的に離反させ、あわせて韓国・台湾との「東アジア共同体」構想の真ん中に地政学的なくさびを打ち込む・・・という戦略で来るんじゃないかと思っています。つまり、日本を「経済的属国」にするというプランです。

 日本は東アジアの中で最も「属国慣れ」している国ですから、宗主国がアメリカから中国に代わっても、あまり体制に変化がない。





25020/04/10『山本太郎から見える日本』からより

山本太郎を支持する理由
──山本太郎を支持するようになったきっかけはなんだったのでしょう?

内田 はっきり注目するようになったのは3・11の後です。俳優だった人が政治的な発言をするようになったとたんに干されて仕事がなくなってしまったと聞いて、日本の芸能界はひどい世界だと思いました。そこで闘っているのは偉いと思って、ひそかに遠くから応援していました。その後、彼が参議院議員になって2~3年目のころかな、凱風館で公開で対談することになったんです。オープンマインドで、とてもフレンドリーな方だったので、すっかり気に入って。いやあ、いい奴だなと(笑)。

 彼の手法はいくつか基本的な政策を掲げて、その点に同意してくれる相手とはだれとでも組むというやり方ですね。そういうタイプの政治家は日本では左派、リベラルには非常に少ない。むしろ、あらゆるトピックについて「これだけは譲れない」という綱領を掲げて、その非寛容さを思想的な純粋さだと勘違いしている。そうやって「すべてに同意する人間だけと組む」という「踏み絵」のようなことをやる。「小異を捨てて大同につく」ということが日本の左派、野党はとにかく苦手ですね。

 だから、四分五裂している。ある種の潔癖さみたいなもので、政治家としての清潔さと表裏一体でもあるので、一概に否定はできないんですけれど、自民党はそこらへんがずさんでしょう。昨日まで反対していた政策に一夜にして賛成したりというようなことは日常茶飯事で、とにかく政権にしがみついていられるためならなんでもやる。その政治的な無原則のせいで現に巨大勢力を形成している。野党が結集して、自民党に対抗できる政治勢力になるためには、ある程度は自民党の組織戦術に学ぶ必要がある。

 政策の優先順位を決めて、大筋で合意できたら、細部については細かいすり合わせをしないで、後回しにする。そういうことが野党が苦手なんです。でも、山本太郎はその点が例外的です。彼はイデオロギー先行で政治家になった人じゃないから。いま目の前にいる困っている人たちを支援するための「手段として」政治がある。その辺の割り切り方は他の野党政治家にはなかなか見られない。

──立憲とは距離があるように見えます。彼は野党分裂の原因になっているのでしょうか?

内田 山本太郎は別に野党を分裂させる気はないと思う。ほんとうは立憲民主党が中心になって野党共闘をするべきなんです、最大野党なんだから。でも、いま野党共闘を強く牽引しているのは山本太郎と共産党じゃないですか。国民民主党と立憲民主党はどちらも野党共闘に積極的であるようには見えない。党名がどうだとか、細かいことを言っている。もともと同じ政党にいた連中が再統合するだけでこれだけ揉めている。

 今、目の前にある具体的な政治的課題にどう取り組むかより、自分の議席をどう守るのかという方に気持ちが向かっている。国民と立憲の争いって、「野党第一党はどっちだ」という争いでしょ。そんなレベルの低いことで争ったってしょうがないじゃない。政権を狙いに行けよと思うんだよね。その意欲がないところに山本太郎もイラついているじゃないですか。

――前回の参院選では、本人は落ちてもれいわの躍進をとるという闘い方でした。

内田 山本君自身は議席をとろうと思ったら、どこだってとれる。衆院でも参院でも、どこかの補選に出ればたぶん当選するだろうし、知事選だってどこでも通るんじゃないかな。

――彼のことを極右と呼ぶ人もいれば極左と呼ぶ人もいて、不思議なグラデイションのなかにいる印象があります。

内田 古典的な右、左というカテゴリには収まらないと思います。

――それが、彼がポピュリズムと言われるゆえんでしょうか?

内田 ポピュリズムというのは明確な政治イデオロギーですから、違うと思います。彼はイデオロギー先導じゃないから。それよりもプラグマティズム、現実主義ということなんじゃないかな。目の前の政治的な問題について、解として選択肢がいくつかあるなら、どれが一番国益に資するのか、どれが一番国民生活にとってプラスになるのか、どれが一番行政コストがかからないか・・・という具体的な「ものさし」で政策を吟味していると思います。

 今は30年、50年というスパンで長期的な計画を持っている政党なんて世界じゅうどこにもないと思いますよ。どこも目先の政治的な難点をどう解決するかということに懸命で。アメリカもそうだし、イギリスもそうだし、EUもそうだし、中国、韓国もそうだし。そういう先の見えない状況で右だ左だと言っても仕方がないという気がするんですよ。


(以降、全文は内田先生かく語りき(その15)による)

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