『千年の祈り』2

<『千年の祈り』2>
図書館に予約していた『千年の祈り』という本を、待つこと6日でゲットしたのです。
中国人の書いた小説といえば・・・以前、『紙の動物園』という作品を読んだように、わりとハマッているのです。

なお、著者はこの短編集を英語で書いているそうで、大使としては言語的な興味もあるのです。

【千年の祈り】


イーユン・リー著、新潮社、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
父と娘のあいだに横たわる秘密と、人生の黄昏にある男女の濁りない情愛。ミス・カサブランカとよばれる独身教師の埋めようのない心の穴。反対を押し切って結婚した従兄妹同士の、平らかではない歳月とその果ての絆。―人生の細部にあらわれる普遍的真実を、驚くべき技量で掬いとる。北京生まれの新人女性作家による、各賞独占の鮮烈なデビュー短篇集。第1回フランク・オコナー国際短篇賞受賞!PEN/ヘミングウェイ賞受賞。ガーディアン新人賞・プッシュカート賞受賞。New York Times Book Reviewエディターズ・チョイス賞受賞。The Best American Short Stories2006収録。グランタ「もっとも有望な若手アメリカ作家」2007選出。

<読む前の大使寸評>
中国人の書いた小説といえば・・・以前、『紙の動物園』という作品を読んだように、わりとハマッているのです。

<図書館予約:(3/25予約、3/31受取)>

amazon千年の祈り



この本のタイトルとなっている「千年の祈り」を、見てみましょう。
p226~228
<千年の祈り A Thousand Years of Good Prayers>
 ロケットこうがくしゃ。中国で何をしていたか訊かれると、石氏はそう答える。それで相手がびっくりすると、たいしょくしました、と謙虚につけ加える。ロケット工学者という言葉は、デトロイトで飛行機を乗り継ぐとき、ある女性に教わった。自分の仕事を英語でうまく説明できなかったので、絵を描いて見せた。すると「ロケット工学者ね!」とさけんで彼女は笑いだした。

 アメリカの人たちはもともと人なつこいが、この職業を知るとますますそうなるようなので、機会があるたびに教えたくなる。この中西部の町にある娘の家に来て五日たち、それで石氏にもずいぶん知りあいができた。

 ベビーカーに赤ん坊を乗せた母親たちが、彼に手をふる。年輩の夫婦が毎朝九時に公園にあらわれ、石氏がいると立ち止まってあいさつをする。いつも声をかけるのはスーツ姿の夫のほうで、スカートをはいた妻は、手を夫の腕に添えてほほえんでいる。ほかに一ブロック先の老人ホームに入居している女性が、石氏と話しにやってくる。彼より二つ上の77歳で、イラン出身だ。二人とも英語がほとんど話せないのに、おたがいの言いたいことが容易にわかる。それでたちまち友達になった。

「アマリカ、よい国」彼女はよく言う。「むすこたち、たくさん金つくる」
 たしかにアメリカはいい国だ。石氏の娘は大学図書館の東アジア部で司書をしているが、年俸は彼の二十年分の給料より高い。

「わたし、むすめいる。むすめも、たくさん金つくります」
「アメリカ、すき。みんなに、よい国」
「はいはい。わたし、ちゅうごくで、ロケットこうがくしゃ。でも、とてもびんぼう。ロケットこうがくしゃ。わかる?」石氏は手で山の頂をつくる。
「ちゅうごく、すき。ちゅうごく、よい国。とてもふるい」
「アメリカ、わかい国です。わかい人たちのように」
「アメリカ、しあわせな国」
「わかい人たち、老人より、しあわせです」と言ってから石氏は、結論を急ぎすぎたな、と思う。彼としては、ものごころついてからこれまでの人生で、いまこの瞬間がいちばん幸せである。そして目の前にいる女性も幸せそうだ。理由があろうとなかろうと、彼女はすべてを愛する。

 英語で会話が進まないときがある。そういうとき彼女はペルシャ語にきりかえ、そこに少し英語をまぜて話す。石氏のほうは、彼女に向かって中国語では話しにくい。だから十分でも二十分でも彼女が一人で話を続け、彼はおおいにうなずいたりほほえんだりする。何を言っているのかほとんどわからないが、彼女は自分と話すのがうれしいのだということは感じるし、彼のほうも彼女の話を訊くのが、うれしい。

 朝が待ち遠しくなってくる。公園に座り、彼女を待つ。名前を訊いたことはないので「マダム」と呼んでいる。


『千年の祈り』1

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