『間違う力』5

<『間違う力』5>
図書館で『間違う力』という新書を、手にしたのです。
これこれ、高野さんの「間違う力」については、かねてより注目していたのです。

・・・ところで、帰って調べるとこの本を借りるのは二度目であることが分かったので、(その4、その5)とします。


【間違う力】


高野秀行著、KADOKAWA、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
人生は脇道にそれてこそ。ソマリランドに一番詳しい日本人になり、アジア納豆の研究でも第一人者となるなど、間違い転じて福となしてきたノンフィクション作家が、間違う人生の面白さを楽しく伝える!!破天荒な生き方から得られた人生訓10箇条!

<読む前の大使寸評>
これこれ、高野さんの「間違う力」については、かねてより注目していたのです。

rakuten間違う力


「第3条 合理的に奇蹟を狙う」で未知動物の探索を、を見てみましょう。
p62~65
<メジャーを捨ててマイナーを狙う>
 先ほど例に挙げたネス湖のネッシー、ヒマラヤの雪男、それから北米ロッキー山脈のビッグフットといった未知動物は有名だ。こういうメジャーな未知動物には私は手を出さないことにしている。「存在しない」と思うわけではない。

 存在するかどうかは、じつは私にとって二の次である。未知動物のファンの人は「ネッシーがいてほしい」と思うらしいが、夢やロマンに浸るファンとちがい、私はあくまでプレーヤーだ。

 未知動物を見つけて歴史に名を刻もうとか、そのことについて手記を書いて世界的ベストセラーにしようとか、その印税で一気に借金を返して人生一発逆転ホームランを打とうといった野望を抱いている。だから、問題は「どうやったら自分が発見できるか」という点に尽きる。ほかの人が見つけてもしょうがないのだ。

 さて、そこでネス湖のネッシーである。これまで無数の人々が探索している。巨額の予算を投じた大規模な科学調査も行われている。それでも見つからないということは、何もバックをもたない個人の私が行っても発見できる可能性はかぎりなくゼロに近い。雪男も同様だ。個人で探している人の話を雑誌などで読むと、「ご苦労様なことだ」と思う。

 合理的に考えるかぎり、メジャーな未知動物の発見は困難だ。だから私のような後発の個人は、マイナーな未知動物、言ってみれば「未知の未知動物」を狙うべきなのだ。
 未知の未知動物には二種類がある。一つは「人が探しに行かない未知動物」。わかりやすい例は、私が学生時代に探しに行ったコンゴの水棲獣ムベンベだろう。

 当時、コンゴ共和国は東側に属する社会主義国で、外国人の研究者やジャーナリストの立ち入りを拒んできた。国土の大部分を占めるジャングルは未踏査のままだった。ムベンベの噂は昔からあっても、行くに行けなかったのだ。

 それがちょうど私の学生時代、ソ連ではじまったペレストロイカ(改革)の風を受け、コンゴでも少しずつ自由化がなされ、外国人が行けるようになっていた。そこに私と仲間は入っていったのだ。

 そして、ムベンベが棲むといわれる湖はどの川ともつながっておらず、ジャングルを六十キロも歩かねばならない。地元の村では「聖なる湖」と呼ばれ、めったなことでは人が入れないとも聞いていた。地元の許可を得ても、ジャングルと湿地帯に阻まれ途中で撤退した隊もあった。外国人の探検隊で実際に湖にたどりついたのは当時、たった二組。ほら、これなら確率的に私たちにチャンスがあったことがよくわかるだろう。

 私が次に探しに行ったのは中国の「野人」である。今はめっきりメジャーになり、日本のテレビ局も気軽に入れるようになったが、90年代半ば、野人の棲むといわれる湖北省神農架という場所はまだ「未開放地区」だった。外国人の立ち入りが禁止されていた。つまり、「野人」は名前こそ知られていたものの、誰も探しに行けない存在だった。

 中国人では探している人がけっこういたし、目撃の報告も多かったが、いかんせん、言論の自由のない中国では発言者の目的や発言の真偽が確かめられない。「野人にさらわれて洞穴の中で野人の子供を産んだ」という女性の報告まであるのだ。

 私は、その前に中国語を教えてもらっていた中国人の先生と一緒にそこに行った。日本人であることを隠し、終始中国人のふりをしていた。
 宿泊したホテルでは「先生の息子」で通した。先生が自分の身分証を見せたし、先生と私は中国語でやりとりしていたので、田舎の宿の従業員は誰も疑わなかった。

 野人が目撃された地域に行ったり、目撃した人に話を聞くときは、「香港ノジャーナリスト」ということにした。香港人の母語、広東語は中国標準語とはかなりちがう。別の言語といってもいいくらいだ。「だから、北京語が下手でも誰も疑わない」と先生が言う。
 取材中は、私が会話についていけなくなると、先生がわざとらしいくらい大げさな
調子で、「しかたないなあ、君は。広東人には北京語は難しいんだな」などと言いながら、「彼は『私が見た野人は全身を茶色の毛に覆われていて、絶対に人でも動物でもなかった』って言ったんだよ」とわかりやすい標準語に直してくれた。

 こうして私は、初めてではないだろうが、ごく初期に、現地で野人調査を行った数少ない外国人になった。もちろん、初期に探したから偉いということではない。発見できないと意味はないからだ。ただ、行く前に「これなら俺にも野人が見つかるチャンスがあるんじゃないか」と冷静に計算したと言いたいだけである。


『間違う力』4:チェンマイ行きp47~50
『間違う力』3:奇襲はメリットが多いが、リスクも高いp168~172
『間違う力』2:就職しないで生きる方法を探すp42~46
『間違う力』1:高野さんの輝かしい業績p211~213

この本も高野秀行の世界R4に収めておくものとします。


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