『千年の祈り』1

<『千年の祈り』1>
図書館に予約していた『千年の祈り』という本を、待つこと6日でゲットしたのです。
中国人の書いた小説といえば・・・以前、『紙の動物園』という作品を読んだように、わりとハマッているのです。

なお、著者はこの短編集を英語で書いているそうで、大使としては言語的な興味もあるのです。

【千年の祈り】


イーユン・リー著、新潮社、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
父と娘のあいだに横たわる秘密と、人生の黄昏にある男女の濁りない情愛。ミス・カサブランカとよばれる独身教師の埋めようのない心の穴。反対を押し切って結婚した従兄妹同士の、平らかではない歳月とその果ての絆。―人生の細部にあらわれる普遍的真実を、驚くべき技量で掬いとる。北京生まれの新人女性作家による、各賞独占の鮮烈なデビュー短篇集。第1回フランク・オコナー国際短篇賞受賞!PEN/ヘミングウェイ賞受賞。ガーディアン新人賞・プッシュカート賞受賞。New York Times Book Reviewエディターズ・チョイス賞受賞。The Best American Short Stories2006収録。グランタ「もっとも有望な若手アメリカ作家」2007選出。

<読む前の大使寸評>
中国人の書いた小説といえば・・・以前、『紙の動物園』という作品を読んだように、わりとハマッているのです。

<図書館予約:(3/25予約、3/31受取)>

amazon千年の祈り



冒頭の短編の語り口を、見てみましょう。
p6~9
<あまりもの Extra>
 十一月のとある午後、ステンレスの弁当箱を手に持って、林ばあさんが道を行く。弁当箱の中には、工作単位(職場のこと)からの正式な証明書が入っている。その証明書には「これにより、林梅同志が北京紅星縫製工場を名誉退職したことを照明する」とまばゆい金文字でしるしてある。

 でも縫製工場は倒産したとも、名誉退職したにもかかわらず年金は支払われないとも書かれていない。これらの事実はおよそ正しくないので、そのような情報はとうぜん入れないのだ。

 まず「倒産」という言葉は国有事業にあてはまらない。かわりに「内部再編」という言葉が使われるのだが、ごていねいに証明書からは省かれている。さらに言えば、林ばあさんの年金は一時的に保留になっているだけだ。でもそれがいつまでなのか工場は教えてくれない。

 林ばあさんの状況を聞いて、「山に到れば必ず道あり」と近所の王おばさんが言う。
 そして「道あるところにトヨタあり」と次のくだりが出てくると、林ばあさんはやっとそれがトヨタのコマーシャルだったことに気づく。

「そうゆうことよ、林ばあさん。あんたは楽観的な人でしょ。そのまま前向きでいれば、あんたにも自分のトヨタが見つかるわよ」

 でもみるみる減りゆく貯金をおぎなう道が、いったいどこにあるだろう。数日かけて貯金を足したり引いたり割ったりしてみたところ、あと1年でなくなるという結論になる・・・もしもときどき食事を抜いて、日が暮れたらすぐに寝て、中国北部の長い冬を着こんで過して燃料を食うストーブにあまり豆炭を入れないようにすれば、二年だ。

「大丈夫。いつでも誰かいい人見つけて結婚すればいいから」市場でまた会った王おばさんが、林ばあさんの紅心大根を見おろして言う。夕飯にと一つだけ買ったその大根は、仏さまのようにでっぷりと、林ばあさんの両手の間に鎮座している。

「結婚?」林ばあさんは頬を赤らめる。
「そんなに奥ゆかしくちゃだめよ。あんた、いくつなの」
「五十一」
「あたしより若いじゃない!あたしは五十八だけど、あんたほど時代遅れじゃないわよ。あのねえ、あんた。結婚はもう若い人だけのものじゃないんだよ」
「かまわないでちょうだいな」
「まじめに言ってんのよ、林ばあさん。街には年寄りのやもめがわんさといるの。そのなかに金持ちで病気で、めんどうみてくれる人が必用ってのもきっといるって」
「老人介護の仕事があるっていうこと?」

 王おばさんはため息をついて、指で林ばあさんのおでこを突く。「頭をつかいなさいな。介護人じゃなくて妻。妻なら夫が死んだとき、少なくとも現金がいくらか入ってくるでえしょ」

 林ばあさんは息をのむ。これまで夫を持ったことはないので、夫の死を当てこむなんてそらおそろしい。でも魚の屋台の間にはさまれて、王おばさんはその場で即決。すぐに林ばあさんの相手を見つけてくる。

「76歳。高血圧で糖尿病。奥さんは死んだばかり。寝室が三つあるマンションに一人住まいで、年金はひと月ニ千元。二人の息子は結婚してて、政府機関で働く高給とりさ」これに林ばあさんが感心しないので、王おばさんはおどろく。

「ちょっとちょっと。あんた、こんなにいい旦那、ほかにいると思うの? この人、あっという間に死ぬよ。息子は金持ちだから、あんたにいくらか遺産を分けてもかまわないって言うだろうさ。いいかい、あたしの知る」かぎりいちばん条件のいい家だよ。見合いのの仲人がひきもきらないもんだから、玄関の敷居がすり減ってるぐらいさ。それでも並みいる候補者の中で、あんたにだけ興味をしめしている。なんでだと思う。結婚したこともないし、子供もいないからよ。ところであんた、なんで結婚しなかったの。わけを聞かせてくれたことなかったね」

 林ばあさんは口を開け、また閉じる。「たまたま、そうなっただけ」

「言いたくないなら言わなくてもいいわよ。とにかくあっちは、子だの孫だのわらわらいる人には来てほしくないの。あたしでもそういうコブつきは信用しないね。わが子のために年寄りから盗みをやらないともかぎらないから。だからあんたがいちばん。この世に一人だけ正直者がいるとしたらあんただって言っといたからね、林ばあさん。もう迷うことなんかないでしょ」

「介護してくれる人をやとわないのはどうしてかかしら。長い目で見ればそのほうが安いんじゃない?」じきに義理の息子になるかもしれない二人のことを、林ばあさんは考える。

このあと行かず後家だった林ばあさんが唐じいさんの介護を行う場面がえんえんと続くわけで・・・いつまでこの調子なのかと、しびれが切れそうになるのです(笑)

 中国人の書いた小説といえば・・・以前、『紙の動物園』という作品を読んだように、わりとハマッているのです。

【紙の動物園】
ケンリュウ

ケン・リュウ著、早川書房 、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた…。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人乗組員が穏やかに回顧するヒューゴー賞受賞作「もののあはれ」、中国の片隅の村で出会った妖狐の娘と妖怪退治師のぼくとの触れあいを描く「良い狩りを」など、怜悧な知性と優しい眼差しが交差する全15篇を収録した、テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭がおくる日本オリジナル短篇集。

<読む前の大使寸評>
3冠に輝いた現代アメリカSFの新鋭ってか・・・・期待できそうやでぇ♪

<図書館予約:(9/27予約、4/12受取)>
rakuten紙の動物園

『紙の動物園』2:文字占い師
『紙の動物園』1:日本人乗組員が回顧する「もののあはれ」

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