『古典を読んでみましょう』1

<『古典を読んでみましょう』1>
図書館で『古典を読んでみましょう』という新書を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、古典が言語学的に語られているようで・・・
これが大使の関心をひくわけでおます。



【古典を読んでみましょう】


橋本治著、筑摩書房、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
えっ、浦島太郎はじいさんじゃなくて、鶴になったの?一寸法師はじつは性格が悪くてやりたい放題だった?日本の古典は自由で、とても豊かだ。時代によっていろいろある古典が、これで初めてよくわかる。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくってみると、古典が言語学的に語られているようで・・・
これが大使の関心をひくわけでおます。

rakuten古典を読んでみましょう




「ニ 古典を読んでみましょう」で、文語体なるものが述べられているので、見てみましょう。
p30~34
<古典はいつから「古典」になるの?>
 人によっては、「樋口一葉を分かりにくい古典扱いするとは何事」と怒ったりもするでしょう。でも、樋口一葉の文庸が今のものと違っているのは一目瞭然です。

 樋口一葉は五千円札になるくらいの作家で『たけくらべ』はその代表作ですが、名前だけは知られている『たけくらべ』を、普通に読める人がどれくらいいるのか、今となっては分かりません。

『たけくらべ』が発表されたのは、夏目漱石の『坊っちゃん』がされるたった十一年前です。樋口一葉は漱石よりも五歳若いのですが、文章だけ見れば全然昔の人です。

 ≪親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりして居る。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて1週間ほど腰を抜かした事がある。≫という『坊っちゃん』の文章がどれほど分かりやすいかは、『たけくらべ』と比べてみれば分かります。

 本来の『坊っちゃん』は歴史的かなづかいで書かれているのですが、現代かなづかいでも歴史的かなづかいでも、ほとんどその差はありません。夏目漱石は「子供」を「子供」と書くのですが、言われてみれば「ああ、そうか」と思う程度で、読むのが困難にはなりません。

 ちなみに『たけくらべ』は「竹くらべ」ではなくて、「丈くらべ」…つまりは「背くらべ」です。題名でさえも説明がいるくらい、夏目漱石と樋口一葉は違っているのですが、なぜそんな違い方をするのかと言うと、夏目漱石と樋口一葉とでは、その文体が違うからです。

 夏目漱石の文体は口語体、樋口一葉のそれは文語体です。明治20年(1887)に二葉亭四迷が言文一致体の『浮雲』を発表します。この言文一致体が「口語体」となり、口語体で書かれる文章を現代文と言うようになるのです。

 『たけくらべ』は『浮雲』の8年後に発表されたものですが、まだ言文一致体ではありません。現代かな遣いのように、国が「今日から日本語はみんな言文一致体で書くように」と決めたわけではないので、樋口一葉の文章は当時の人が当たり前に書いていた文章のスタイル…つまり文語体で、最も一般的な文章で書かれるはずの新聞の文章が口語体になるのは、大正時代になってのことなのです。

 今から百年も前に終わっていますが、明治という時代は日本が西洋文明を取り入れて、現在にまで続く西洋化への道を歩き始めた時代です。「それ以前の日本とは違う」という意味で、明治から後の時代を「近代」と言うのはそのためですが、しかし「近代」というのは本来、「遠い昔とは違う、現在に続く身近な時代」という意味です。だから、明治時代よりもずっと昔の鎌倉時代に、もう『近代秀歌』という本がありました。

『近代秀歌』は、鎌倉時代の歌人である藤原定家が、和歌の弟子である三代将軍源実朝のために書いた、短い和歌のテキストです。

 藤原定家は、「昔の和歌はすぐれていたが、その後はだめな歌が多くなった」と考えているのですが、「その中でもこれはいいよ」と思える和歌を80首ばかり源実朝のために選んでいます。だから「近代秀歌」なのですが、そこにはそこには藤原定家や源実朝が生きているごく最近の和歌から、四百年以上も前の『万葉集』の和歌まで入っています。「近代」というのは、本来はそれくらいに幅のある「近頃」なのです。

 ところが、明治時代になった日本は、西洋の「近代文明」と言われるものを取り入れて、「西洋化=近代化」ということを始めてしまいました。それで、「明治以後の時代はその以前とはまったく違う“近代”なのだ」と思われるようになってしまったのです。

 でも、その「近代」は突如として新しくなんかなりません。二葉亭四迷達が言文一致体の作品を発表しても、それは一般的ではない「変わった前衛」です。だから樋口一葉はそんなものを使わず、従来からある自分の書きやすい文語体の文章を使って作品を書きました。だから『たけくらべ』は分かりにくくて説明が必要な「古典」になるのです。


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