『プリズンホテル』1

図書館に予約していた『プリズンホテル』という本を待つこと6日でゲットしたのです。
浅田さん初期のエンタメ小説のようだが・・・期待できそうである。
まさか、浅田さんに任侠道あるいはカジノ経営の友人はいないとは思うのだが。


【プリズンホテル】


浅田次郎著、徳間書店、1993年刊

<「BOOK」データベース>より
笑うか、泣くか?悪漢小説。超大型新人の最高傑作。

<読む前の大使寸評>
浅田さん初期のエンタメ小説のようだが・・・期待できそうである。

<図書館予約:(1/13予約、1/19受取)>

amazonプリズンホテル


「プリズンホテル」という命名が語られているあたりを、見てみましょう。
p58~60
<4>
 巡査は輪ゴムで束ねられた粉薬の袋を手に取った。
「これは?」
「胃薬です。コランチルという潰瘍の特効薬だ。もう二十年も常用している」
 巡査は一袋を光に透かし見た。
「どうやら、そのようですね」
「ははあ、わかったぞ。キミはそれを、麻薬か覚醒剤だと疑ったんだな。そうか、桜会というのは、広域暴力団の関東桜会のことだろう。ばかも休み休み言いたまえ、この私が、胃薬の世話になってまでわが国の経済の発展に寄与してきたこの私が、ヤクザの親分に見えるのかね」

 夫は巡査の手から薬をひったくると、散らかった品物を鞄につめ込んだ。「いやだいやだ。在職中はニューヨークのダウンタウンでもこんな仕打ちは受けなかったのに。それが会社をやめたとたん、山奥の温泉場でこのザマだ。人間、齢はとりたくないものだな。ところで…キミはあと何年かね」

 老巡査は露骨な不快を作り笑いで補いながら答えた。
「まだ4、5年はありますよ」
 フン、と夫は鼻で笑った。
「そうか。だが、5年たったらただの年寄りだ。まあ今のうちにせいぜい女房子供を大切にしておくことだな。近ごろ、はやっているそうだぞ、身勝手な亭主が定年と同時に家族から捨てられるらしい」

 夫人はヒヤリとして、言葉をはさんだ。
「あのう。先ほどお尋ねした件なのですが…」
 巡査は夫から目をそらして、ロータリーを回ってきたタクシーに手を挙げた。
「車でいらっしゃって下さい。山の上ですから歩くのはたいへんです。ことに、お年寄りにはね」
(中略)

「志保、なにをしている。早く来んか」
 巡査に腰を折って頭を下げ、若林夫人は夫の後を追った。
「おまえ、なんで薬を病院の袋に入れておかんのだ。今日に限って」
「ごめんなさい。破けていたものだから」
「虎ノ門病院の袋に入っていれば、あらぬ疑いをかけられずに済んだのに。不愉快だ」
 冷房の利いた車内に入ると、観光地のそれらしく妙に愛想の良い運転手が笑顔で迎えた。
「あの、奥湯元あじさいホテルに行って下さい」

 ルームミラーの中の運転手の目から、突然しわの伸びる感じで笑いが消えた。
「・・・プリズンホテルかね・・・」
「いいえ、プリンスホテルじゃなくって、あじさいホテルです。あらやだ、これじゃさっきと同じ」
 夫妻は思わず顔を見合わせた。
「きっと名前が変わったんだろう。ほら、新装オープンのホテルだと言っていたじゃないか」
「そう、そうですわね、きっと」


ウン、「プリズンホテル」とは言いえて妙である。ネタバラシになるが・・・
定年退職後のこの旅行は夫人が計画したもので、夫人のハンドバッグの中には捺印済みの離婚届がしのばせてあるのです。

この作品は、講談あるいはカツベンのように登場人物の台詞が練られているのです。
また、ロンドを舞うように前の章に手を加えて語られるので、記憶力の足りない読者にとってありがたいツクリになっています。

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