『漢字再入門』3

<『漢字再入門』3>
図書館に予約していた『漢字の字形』という新書を、待つこと1週間ほどでゲットしたのです。
この本は「ビッグイシューVOL.365」で紹介されていたので、漢字が気になる大使は即、図書館に予約していたものです。


【漢字再入門】
国字の湯飲

阿辻哲次著、中央公論新社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
漢字学の第一人者が、漢字の意外な成り立ちや読み方の歴史、部首のふしぎなど、学生時代に知っておけばよかった知識を伝授し、真に必要な知識を解説、さらに望ましい漢字教育を提言。

<読む前の大使寸評>
この本は「ビッグイシューVOL.365」で紹介されていたので、漢字が気になる大使は即、図書館に予約していたものです。

<図書館予約:(10/15予約、10/22受取)>

rakuten漢字再入門



「3時間目 音読みと訓読みについて」を、見ていきましょう。日中交流史みたいなものですが。
p76~81
<漢字にいろいろな読み方があるのはどうしてですか?>
■音読みと訓読み
 漢字の難しさは書くことだけではなく、読み方にもあります。たとえば「会」は「あう」のほか、「カイ」(会議)とか「エ」(会釈)と読みわけなければなりませんし、「楽」は「音楽」と「快楽」で音読みがことなります。

 「生」という漢字は「いきる」とも「なま」と読み、また「セイ」(生物・学生)とも「ショウ」(殺生・生涯)とも読まれます。「生一本」ということばなど、日本語を学ぶ外国人にとってはさぞかし難しいものであるにちがいありません。
 このように意味に応じて漢字を正しく読みわけるのは、小中学生だけでなく、大人だってまちがうことがよくあります。

 数年前のことですが、「未曾有」を「みぞうゆう」と読んだ人がいました。彼はたまたま首相だったので、あちらこちらからさんざんこきおろされましたが、もしそれがそのへんのおじさんおばさん、あるいは高校生だったら、「それは『みぞう』と読むんだよ、これから覚えておこうね」というくらいの注意ですんだにちがいありません。

 読みが難しいだけでなく、なかには「発足」を「はっそく」とも「ほっそく」とも、「重複」を「ちょうふく」とも「じゅうふく」とも、「施行」を「せこう」とも「しこう」とも読むことがあるように、読み方に「ゆれ」があるものもあります。さらに面倒なことに、使い方によって読み方が変わるものもあって、「生物」は文脈によって「いきもの」とも「なまもの」とも読まれますし、「競売」を一般の人は「きょうばい」と読みますが、裁判などで使われる法律用語では「けいばい」と読まれます。

 このように同じ漢字を何通りにも読みわけることは、他の国で使われる文字にはめったにない、漢字特有といえる現象なのですが、ともあれ日本でも漢字を中国から受け入れ、長い時間にわたって使いこなしてきた歴史を通じて、歴代の日本人は漢字の読みわけについて正しい知識をもつことを要求されてきました。

 漢字は中国で生まれた文字で、中国では「山」という漢字はshanとしか読まれませんが、それが日本に伝わってきた経緯によって音読みと訓読みという区別ができ、「山」という漢字について「サン」(富士山)と「やま」(山登り)というちがう読みをしなければなりません。いったいなぜこのようなことが起こったのでしょうか。

 世界中どこの地域でも、文字が使われるはるか前から、音声によることばがありました。人類は文字が発明される何十万年も前から、音声言語だけでコミュニケーションをとってきました。それに対して、文字が発明され、使われるようになったのはたかだか数千年前のことにすぎません。

 中国で漢字が使われるようになってからいままででおそらく3300年ほどになりますが、それが日本に伝わって、たくさんの日本人が漢字を使うようになったのは、約1700年ほど前、四世紀からあとのことと考えられます。
(中略)

 漢字が中国から伝わってきたときにも、それぞれの漢字が表している意味を日本語の音声によることばにひきあてて、「山」を「やま」、「海」を「うみ」、「母」を「はは」、「目」を「め」と読むようになりました。こうしてできたのが漢字の訓読みです。こうしてでいたのが漢字の訓読みです。だから訓読みは文字を見なくても、耳で聞くだけでだいたいその意味がわかります。
(中略)

■漢音、呉音、唐音
 このようにそれぞれの言語でのことばにひきあてて漢字を読むのが訓読みであるのに対して、漢字を中国語の発音のままで読んだのが音読みです。
 いま私たちが使っている漢字の音読みは、昔の中国で使われていた漢字の発音が日本語に取りこまれて定着した読み方であり、それはもとにあった中国語の時代と地域の差によって、「漢音」と「呉音」、それに「唐音」という三種類にわけられます。

■呉音
 そのうちいちばん早く日本に伝わった読み方が呉音です。「呉」とは中国の春秋時代、具体的には紀元前6世紀から前5世紀にかけて、いまの蘇州を都とした国の名前で、夫差という王とそのライバル国家「」の王句践とのあいだに繰りひろげられた「臥薪嘗胆」の物語や、「呉越同舟」ということばで歴史に名を残しています。
(中略)

 ところで日本にはもともと文字がなう、日本人がはじめて接触した文字は、中国で使われていた漢字でした。日本人が選ぶことができた文字は漢字しかなく、その選択は日本の地理的状況による、必然的な結果でした。

 東アジアには中国というずばぬえて質の高い文明を展開している大きな先進国があったので、日本を含む周辺の国々は早い時期から中国に使者を派遣し、思想や宗教、芸術、あるいはさまざまな技術などの高度な文明を吸収してきました。

 それは実際には漢字で書かれた文献を読むということを通じておこなわれた文化の伝播でしたから、東アジアでの国際交流の中心にあったのは漢字でした。それまで文字をもたなかった日本も、このような過程を通じて中国から文字を受け入れ、それで日本語の文章を書き表せるように工夫してきました。そのときに中国語での漢字の読み方がたくさん日本語のなかに入ってきました。それが音読みです。

 日本人に漢字の使い方や発音などをはじめて教えたのは、朝鮮半島南西部にあった百済から渡ってきた人だったと思われます。『古事記』や『日本書記』には、応神天皇の時代に王仁(わに)という人が『論語』と『千字文』を日本にもってきた、と記されています。
(中略)
 『論語』と『千字文』が早くに日本に伝わったことは確実ですが、実際に誰がそれらの書物をもってきたのか、その名前や渡来した時期など詳しいいきさつはいっさいわかりません。それでも百済からの渡来人が中国の高度な文明と漢字で書かれた文献を日本に伝えたことは、おそらくまちがいない事実です。


『漢字再入門』2:日本で作られた漢字
『漢字再入門』1:表音文字と表意文字


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