『漢字再入門』2

<『漢字再入門』2>
図書館に予約していた『漢字の字形』という新書を、待つこと1週間ほどでゲットしたのです。
この本は「ビッグイシューVOL.365」で紹介されていたので、漢字が気になる大使は即、図書館に予約していたものです。


【漢字再入門】
国字の湯飲

阿辻哲次著、中央公論新社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
漢字学の第一人者が、漢字の意外な成り立ちや読み方の歴史、部首のふしぎなど、学生時代に知っておけばよかった知識を伝授し、真に必要な知識を解説、さらに望ましい漢字教育を提言。

<読む前の大使寸評>
この本は「ビッグイシューVOL.365」で紹介されていたので、漢字が気になる大使は即、図書館に予約していたものです。

<図書館予約:(10/15予約、10/22受取)>

rakuten漢字再入門

国字の湯飲

「1時間目 漢字の数」の続きを、見ていきましょう。
p16~19
<日本で作られた漢字> 
 さらに、漢字は中国だけで作られたわけではありません。そのことも漢字の数が増えた理由のひとつです。

 漢字は発祥の地である中国から周辺の国にも広がっていき、日本や朝鮮半島に建てられた国々、そしてかつてはベトナムなどでも、自分たちのことばを書き表すのに漢字を使いました。それらの国々にはもともと文字がなく、すぐ近くにあった中国という大国から文字を借りました。しかし漢字は中国で作られたものですから、周辺の国々から見たらいくつか不便なことがありました。

 たとえば中国には存在しないモノや概念を表す漢字が中国で作られるはずはありません。そのことの不便さを、ここでは≪魚≫ヘンの漢字を例として考えてみましょう。

 古代中国文明は黄河を中心にさかえたことは小学校でも学習しますが、黄河は淡水の川ですから、そこにはコイやフナがいます。だからそれを表すために、「鯉」や「鮒」という漢字が作られました。また古代では黄河流域に暮らした人たちが実物を目にすることはなかったでしょうが、どこかの海にはクジラという非常に大きな魚がいることを耳にしていたので、それを表す「鯨」という漢字が作られました。

 しかしイワシという魚は黄河にはいません。同じように、黄河流域に暮らした古代中国人は、ブリもカツオもハタハタも見たことがなかったにちがいありません。見たこともない魚を表すことばはありませんし、したがってそれを表す漢字も作られるはずがありません。

 でも四方を海に囲まれた日本ではどこでもイワシがとれ、重要な水産資源でしたから、その魚を漢字で表現する必要がありました。漢字がないのだったら、ひらがなかカタカナで書いたらいいじゃないか、といまの私たちは考えてしまいがちですが、奈良時代から平安時代にかけては文字の使いわけがあり、カタカナは主に仏教の世界で、ひらがなは和歌や物語などの文学作品に使われ、朝廷や役所などで使う文書は漢字だけで書くこととされていました。

 このように文字の使いわけがあった時代に、朝廷や役所などで使う文書にイワシのことを書く必要があったとしても、イワシを表す漢字はありません。しかたないので、はじめは漢字の発音だけを使って「伊委之」と書いていました(このような書き方を「万葉仮名」といいます)。

 しかしそれではわかりにくいので、それで、どこかの誰かが、≪魚≫と≪弱≫を組合わせて「鰯」という漢字を作り、水から出たらすぐに死んでしまう弱い魚であるイワシを表す文字としました。ちなみに、いまの中国人はもちろんイワシという魚を知っていますが、イワシは中国語では「沙丁」と書き、シャディンと発音します。
(中略)

<そんなにたくさんの漢字を、中国では全部使っているのですか?>
 何万という漢字が作られた背景には、だいたい右のような理由が考えられます。だからこそ五万とも八万とも数えられる大量の漢字が作られてきたのですが、しかしそんなにたくさんの漢字すべてを、これまでの中国人や日本人、あるいは韓国人が実際に使いこなしてきたわけでは決してありません。ここまでに述べてきた漢字の総字数とは、あくまでも歴史的な蓄積の結果であり、これまで存在したあらゆる漢字を全部かき集めたら八万字くらいになるだろう、ということにしかすぎません。

 中国でも日本でも、それぞれの時代に社会で使われていた漢字は実際にはそれほど多くなく、どんなに多く見積もってもせいぜい一万もあれば十分でした。そんなはずはない、いまの日本ならそうかもしれないけれど、中国にはひらがなやカタカナがなく、文章をすべて漢字で書かないといけないのだし、特に古い時代の中国だったらもっとたくさんの漢字を使っていたにちがいない、とよく思われがちですが、しかし使われている漢字は案外少ないものです。

 たとえば日本にもたくさんの愛読者がいる『老子』という有名な本がありますが、そこに使われている漢字はわずか802種類にしかすぎません。孔子のことばと行動を弟子たちがまとめた『論語』は、かつて中国だけでなく東アジア全体の知識人にとって必読の書物でしたが、そこに使われている漢字だって1355種類しかありません。いまの日本で漢字を使うときの目安とされている「常用漢字」に入っている漢字は合計2136種類ですから、その半分プラスアルファという程度です。


『漢字再入門』1


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