通訳、翻訳についてR10

<通訳、翻訳についてR10>
通訳、翻訳について集めてみます。

・ジェイ・ルービン『村上春樹と私』
・鴻巣友季子『本の森 翻訳の泉』
・村上春樹『スメルジャコフ対織田信長家臣団』
・村上春樹『私たちの隣人、レイモンド・カーヴァー』
・鴻巣友季子『全身翻訳家』
・常盤新平『翻訳出版編集後記』
・工藤幸雄『ぼくの翻訳人生』
・柴田元幸『愛の見切り発車』
・『小川洋子対話集』4
・柴田元幸『翻訳夜話』
・金原瑞人『翻訳のさじかげん』
・柳瀬尚紀『日本語は天才である』
・『映画字幕は翻訳ではない』
・読み、書き、訳すこと
・関西弁の通訳
・翻訳困りっ話

R10:『村上春樹と私』を追記


<『村上春樹と私』5>
図書館で『村上春樹と私』という本を、手にしたのです。
著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです


【村上春樹と私】


ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊

<商品の説明>より
『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。

<読む前の大使寸評>
著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです。

rakuten村上春樹と私


『村上春樹と私』5:世界中の翻訳仲間
『村上春樹と私』4:アメリカでの村上講演会
『村上春樹と私』3:村上作品の英訳
『村上春樹と私』2:翻訳者の仕事
『村上春樹と私』1:翻訳の苦労



<『本の森 翻訳の泉』1>
図書館で『本の森 翻訳の泉』という本を手にしたのです。
ぱらぱらとめくると、取り上げている作家が多和田葉子、村上春樹、水村美苗、池澤夏樹と好きな作家が多いのが借りる決め手となりました。


【本の森 翻訳の泉】


鴻巣友季子著、作品社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
角田光代、江國香織、多和田葉子、村上春樹、朝吹真理子ー錯綜たる日本文学の森に分け入り、ブロンテ、デュ・モーリア、ポー、ウルフー翻訳という豊潤な泉から言葉を汲み出し、日本語の変容、文学の可能性へと鋭く迫る、最新評論集!

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると、取り上げている作家が多和田葉子、村上春樹、水村美苗、池澤夏樹と好きな作家が多いのが借りる決め手となりました。

rakuten本の森 翻訳の泉

『本の森 翻訳の泉』2
『本の森 翻訳の泉』1


<『スメルジャコフ対織田信長家臣団』1>
図書館に予約していた『スメルジャコフ対織田信長家臣団』という本を、待つこと1週間でゲットしたのです。
ぱらぱらとめくると「村上ラジオ」に連載された記事を集めて編集されているが・・・
村上さんの翻訳家時代の活発な姿が見られます。


【スメルジャコフ対織田信長家臣団】


村上春樹著、朝日新聞出版、2001年刊

<「BOOK」データベース>より
不倫相談・ドーナツ情報・村上作品・音楽・映画の話から、なぜか『カラマーゾフの兄弟』まで、「何でも相談室」の村上さんがお答えします。CD-ROMに約4千通のメールを収録!3年半にわたる作家と読者のメール交換の総決算。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると「村上ラジオ」に連載された記事を集めて編集されているが・・・
村上さんの翻訳家時代の活発な姿が見られます。

<図書館予約:(2/12予約、2/19受取)>

rakutenスメルジャコフ対織田信長家臣団

『スメルジャコフ対織田信長家臣団』1



<『私たちの隣人、レイモンド・カーヴァー』2>
図書館で『私たちの隣人、レイモンド・カーヴァー』という本を、手にしたのです。
レイモンド・カーヴァーという作家は知らないのだが、村上春樹が精力的に翻訳した作家となれば気になるのである。

それから、本の表紙に「村上春樹翻訳ライブラリー」とあるのだが、村上さんの翻訳者としての実力がしのばれるのである。


【私たちの隣人、レイモンド・カーヴァー】


村上春樹編訳、中央公論新社、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
密なる才能、器量の大きさ、繊細な心…カーヴァーは、彼について語るべき何かをあとに残していくことのできる人だったーJ・マキナニー、T・ウルフ、G・フィスケットジョンほか、早すぎる死を心から悼む九人が慈しむように綴ったメモワール。

<読む前の大使寸評>
レイモンド・カーヴァーという作家は知らないのだが、村上春樹が精力的に翻訳した作家となれば気になるのである。

rakuten私たちの隣人、レイモンド・カーヴァー
『私たちの隣人、レイモンド・カーヴァー』1




<『全身翻訳家』>
図書館で『全身翻訳家』という文庫本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、映画好きで、世界の酒が好きな鴻巣さんが見えてくるわけで・・・いけてるでぇ♪


【全身翻訳家】


鴻巣友季子著、筑摩書房、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
食事をしても子どもと会話しても本を読んでも映画を観ても旅に出かけても、すべて翻訳につながってしまう。翻訳家・鴻巣友季子が、その修業時代から今に至るまでを赤裸々かつ不思議に語ったエッセイ集。五感のすべてが、翻訳というフィルターを通して見える世界は、こんなにも深く奇妙でこんなにも楽しい。エッセイ集「やみくも」を大幅改編+増補した決定版。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくってみると、映画好きで、世界の酒が好きな鴻巣さんが見えてくるわけで・・・いけてるでぇ♪

amazon全身翻訳家




【翻訳出版編集後記】


常盤新平著、幻戯書房、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
早川書房における十年間の編集者生活。英米のエンターテインメント小説やノンフィクションを刊行し、出版界に新たな道を拓いた著者が、自らの体験を基に翻訳出版のあり方を問う、傑作回想記、新発掘!

<読む前の大使寸評>
先日、工藤幸雄著『ぼくの翻訳人生』という本を読んで以来、ちょっとした翻訳出版ミニブームとなっているのです。

<図書館予約:5/21予約、5/25受取>

rakuten翻訳出版編集後記
『翻訳出版編集後記』1byドングリ





【ぼくの翻訳人生】
翻訳

工藤幸雄著、中央公論新社、2004年刊

<「BOOK」データベース>より
翻訳を手がけて半世紀。著者はポーランド語翻訳の第一人者であり、ロシア語、英語、仏語からも名訳を世に送り出してきた。満洲での外国語との出会い、占領下の民間検閲局やA級戦犯裁判での仕事、外信部記者時代の思い出。翻訳とは、落とし穴だらけの厄介な作業だという。本書は、言葉を偏愛する翻訳者の自分史であると同時に、ひとりの日本人の外国語体験の記録でもある。トリビア横溢の「うるさすぎる言葉談義」を付した。

<読む前の大使寸評>
巻末の著者来歴を見ると、東大仏文科卒で、共同通信社の記者、ワルシャワ大学の日本語学科講師などを経て翻訳家になったようです。
とにかく、米国留学を中退し、ポーランド文学、ロシア文学を専攻するというヘソ曲がり具合が大使のツボを打つのです。

rakutenぼくの翻訳人生

『ぼくの翻訳人生』6
『ぼくの翻訳人生』7


<『愛の見切り発車』>
図書館に予約していた『愛の見切り発車』という本を、待つこと5日で手にしたのです。
競合者ゼロ、受取館の蔵書という好条件なので、超速ゲットになった次第でおます。


【愛の見切り発車】
発車

柴田元幸著、新潮社、2000年刊

<「BOOK」データベース>より
オースター、エリクソン、ダイベック、ユアグロー、ミルハウザー…。一癖も二癖もある作家の醍醐味を、翻訳者の立場から易しく紹介。作家へのインタビューも多数。
【目次】
愛の見切り発車/未完に終わった六つのメモ/住居が主役/たのしい時代錯誤/キャリントン復活/夢の書物をめぐる書物/史上もっとも美しい漫画/二つのクリスマス/ロックンロール・ベスト1001/世紀の終わり・世界の終わり〔ほか〕

<読む前の大使寸評>
図書館に予約して、待つこと5日でゲットできました♪
競合者ゼロ、受取館の蔵書という好条件なので、超速ゲットになった次第でおます。

<図書館予約:(11/02予約、11/07受取)>

rakuten愛の見切り発車




<『小川洋子対話集』4>
図書館で『小川洋子対話集』という本を、手にしたのです。
小川洋子対話集ってか…目次を見ると対話者が異色で、期待できそうである♪


【小川洋子対話集】
小川

小川洋子著、幻冬舎、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
日ごろ孤独に仕事をしている著者が、詩人、翻訳家、ミュージシャン、スポーツ選手と語り合った。キョロキョロして落ち着きがなかった子供時代のこと、想像力をかきたてられる言葉や文体について、愛する阪神タイガースへの熱い想い、名作『博士の愛した数式』秘話など心に残るエピソードが満載。世界の深みと、新たな発見に心震える珠玉の対話集。

<読む前の大使寸評>
小川洋子対話集ってか…目次を見ると対話者が異色で、期待できそうである♪

amazon小川洋子対話集
『小川洋子対話集』4byドングリ





【翻訳夜話】
翻訳

村上春樹×柴田元幸著、文藝春秋、2000年刊

<「BOOK」データベース>より
roll one’s eyesは「目をクリクリさせる」か?意訳か逐語訳か、「僕」と「私」はどうちがう?翻訳が好きで仕方がないふたりが思いきり語り明かした一冊。「翻訳者にとっていちばんだいじなのは偏見のある愛情」と村上。「召使のようにひたすら主人の声に耳を澄ます」と柴田。村上が翻訳と創作の秘密の関係を明かせば、柴田は、その「翻訳的自我」をちらりとのぞかせて、作家と研究者の、言葉をめぐる冒険はつづきます。村上がオースターを訳し、柴田がカーヴァーを訳した「競訳」を併録。

<読む前の大使寸評>
おお 翻訳のプロによる「競訳」が見られるのか…期待できそうやで♪

<図書館予約:(9/08予約、9/17受取)>

rakuten翻訳夜話





【翻訳のさじかげん】
翻訳

金原瑞人著、単行本、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
料理に骨董、三味線に歌舞伎…翻訳しているヒマがない?人気翻訳家の最新エッセイ集。三浦しをん氏との「文楽対談」も収録。

<読む前の大使寸評>
翻訳家といえば、言語でメシを食っているいるわけで・・・彼我の国の言語、文化に関する知識は膨大で、薀蓄の宝庫みたいなものか♪

rakuten翻訳のさじかげん
『翻訳のさじかげん』2




<日本語は天才である(その2)>
図書館で『日本語は天才である』という本を手にしたが・・・・
日本語や英語に関する薀蓄には定評があり、なにより、柳瀬さんの本は面白いはずである。

この本は読みどころが多いので、更に(その2)としてして読み進めたのです。

【日本語は天才である】
日本語

柳瀬尚紀著、新潮社、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
縦書きも横書きもOK。漢字とかなとカナ、アルファベットまで組み込んで文章が綴れる。難しい言葉に振り仮名をつけられるし、様々な敬語表現や味わい深い方言もある。言葉遊びは自由自在ー日本語には全てがある、何でもできる。翻訳不可能と言われた『フィネガンズ・ウェイク』を見事に日本語にした当代随一の翻訳家が縦横無尽に日本語を言祝ぐ、目からうろこの日本語談義。

<読む前の大使寸評>
日本語や英語に関する薀蓄には定評があり、なにより、柳瀬さんの本は面白いはずである。

(借りたのは2007年刊ハードカバーで、データは2009年刊文庫本のものです)

rakuten日本語は天才である


文字を知った人という意味のモンジシャという言葉が出てきます。
・・・当時としては、なかなかの表現ではないか♪

<「文字者」作の和製漢語>よりp51~55
 ちょっと話が脱線しましたか?
 そうなのです。その脱線です。
 右の七行の文章で使った、後ろから順に―脱線、自費、時間、自習、自慢、独創、自体、独特、定着、世紀、独自、今度―こうした漢語はすべて、37ページに引いた新潮現代国語辞典の3.和製漢語なのです。

 もう少し立ち入りますと、時間と世紀という語は古い漢語にある。しかしその時間は、ぼくらが時間、空間と言う場合の意味ではなく、世紀は「百年」という意味ではありません。そして時間も世紀も、日本語と同じ意味で現代の中国語として使われているのです。いま登場した空間の場合も、やはりそうです。

 『漢語外来辞辞典』という中国の外来語辞典には、すでに中国語として定着した和製漢語が900語近く収録されています。その中には、共産主義や共鳴、入口や出口や簡単など、普通の会話に使われそうな言葉も少なくない。その会話もまた、この辞書には日本製であると記されています。

 古い漢語である出口(しゅっこう)は、口から出すの意ですが、もはや中国の若者には忘れられている古語らしい。いつか中国の青年にそのことを言ったら、「勉強になりました」とお礼を言われました。

 万葉仮名から一気に現代の漢語へ話を進めてしまいましたが、日本語が漢字を天才的に使いこなしてきたことは、おわかりいただけたと思います。

 もう一つ付け加えますと、かつて無一文字だった日本語は、室町時代の後半、16世紀には相当な「文字者(もんじしゃ)」になっていた。『日葡辞書』という、宣教師たちが作った日本語=ポルトガル語辞書があります。長崎で1603年に出版されました。この辞書にMonjixaがいます。

 Monjixa.モンジシャ(文字者)すなわち、monnjiuo xitta mono.(文字を知った者)日本の文字を熟知している人。『邦訳日葡辞書(岩波書店)』
 日本語が文字者という日本語で自分を名乗ったことに、ぼくはなにか心の底から嬉しくなります。

 この章で使った和製漢語について、少し補足しておきましょう。
 簡単(以前は、むしろ「簡短」とか「簡端」とか書くのがふつうでしたが)これは漢字を用いて造られた造語です。

 36ページで、「こんな冗談を言うなんて、常識も良識もない男・・・」と言いました。
 冗談は、もともとあった日本語に冗と談をあてたものです。
 良識はフランス語のボンサンス bon sens(良き感覚という意味です)それを翻訳した。
 常識という言葉も同じように、英語のコマンセンス common sense を翻訳して作った。 漢字を使った日本語の天才的な造語能力を示すほんの数例です。

 簡単や常識は中国語に入りましたが、もちろん中国語では使われない和製漢語もあります。
 その代表例は時計でしょうか。最近は中国へ旅行する日本人が年間340万人もいるそうですから、たぶん中国語の時計がピョン(鐘の簡化字)であるのを知る人は多いはずです。時計は一般には通じないようです。ただし『漢語外来辞辞典』には方言として収録されていますので、時計という実にうまくできた和製漢語もそのうち中国語に定着するのでしょうか。

 そうそう、もう一つ言い忘れていました。
 日本語は漢字に倣って文字を作りました。国字と呼ばれます。
 最近、出番の多い国字は「込」でしょう。振り込め詐欺に一役買っているみたいで、ちょっとかわいそうな気がします。
 
 本章の初めで、榊山潤という人の名を出しましたが、その姓「榊」は国字です。友達や知り合い姓に、辻、畑、畠、樫、椚などの漢字の入っている人がいると思います。いずれも国字です。
 
 ほかにもいろいろあります。
 凧。布巾とか雑巾とかがあったのですが、今はティッシュペイパー、それも略してティッシュになった。頭巾や巾着も、ぼくは言葉では知っていても実際には使ったことがない。巾は「ぬの」です。カゼは風の省略形です。風に乗って布が大空を溌溂と舞っているではありませんか。そうそう、この「溂」も日本製です。

 「ぬの」でなく、風が止まってしまうと凪になる。朝凪、夕凪―日本語特有のいい言葉ですね。英語でMorning calm Evening calm と言っても風が止まった静けさは感じられない。


日本語は天才である(その1)



<映画字幕は翻訳ではない>
いくら映画作りが進化しても、スーパー字幕自動焼付け機はできないだろうと・・・
大使は、この『映画字幕は翻訳ではない』という本を読んで、思ったわけです。
スーパー字幕つくりは、それだけアナログの要素が多い職人技の世界だったのです。
日本でのスーパー字幕入り第1号作品『モロッコ』から説き起こし、生前の著者の最新作まで、まさにスーパー字幕とともに生きてきた職人のお話です。


【映画字幕は翻訳ではない】
字幕

清水俊二, 戸田奈津子著、早川書房、1992年刊

<「BOOK」データベース>より
1行10字、2行まで-。映画字幕の制約はまだまだある。この道50余年の著者が遺した字幕作りの真髄。
【目次】
スーパー字幕業誕生の記/同業10人/スーパー字幕と漢字制限/スーパー談義/文字と言葉/わが映画字幕人生/雑学大百科事典/Go and get’em!/スーパー字幕よもやま話/映画字幕あれこれ/心躍る20文字の世界/字幕談義/『オセロ』のスーパー字幕/字幕スーパーの文法/読み巧者/オン・デッキ/“フランチョー、コム・ヒア!”/男はタフでなければ生きて行けない/英会話/地下鉄/花嫁の父/アンナとミード/原田真人君のスーパー字幕改造談義/シネ英会話Lesson

<大使寸評>
スーパー字幕誕生のときからこの仕事に携わった清水さんのお話であるが…
とにかく、映画への愛と、雑学的な薀蓄に溢れている♪
そして、もちろん翻訳者としての気概も。

rakuten映画字幕は翻訳ではない


次の章を読むと、大使はスーパー字幕を仕事にするには適任ではないかと思ったりもするのだが(簡単に務まるものではないで!)


<スーパー字幕よもやま話>p39~43
 英語が(あるいはフランス語が、イタリア語が)好きで、少々自信もあるのですが、どうしたらスーパー字幕の仕事にはいれるでしょう、という手紙をよこすスーパー字幕志願者があとをたたないので、この機会に「スーパー字幕作者」は「翻訳者」ではないことをはっきりさせておきたい。
 スーパー字幕を仕事にするには語学のほかに三つの条件がどうしても必要である。
 1 映画を愛し、映画を理解する力をそなえていること
 2 日本語、とくに話し言葉に熟達していること
 3 百科事典的な雑知識に好奇心を持っていること
 この三つのうち、1と2は当然のことだが、3の条件については案外忘れられている。この条件はスーパー字幕をつくるときほどではないにしても、翻訳という仕事には多かれ少なかれ必用なことなのである。

 映画で扱う題材は古今東西におよび、多岐にわたって際限がない。場所と時代だけをとり上げてみても、世界中の主要な国々の地理と歴史を、細かいことはともかく、だいたいは心得ていないと、いつどんな映画がとびこんでくるかわからない。もちろん、知らないことは書物などで調べればよいのだが、知識がまったくないと、調べる手がかりがつかめない。
 宇宙もののSFがふえてくると、辞書に載っていないSF用語がポンポンと飛び出してくる。つい先ごの『ジョーイ』のような白血病を扱った映画が、どういうわけか、外国では毎年つくられる。医学用語はどんなにチンプンカンでも耳で聞いているかぎりでは、意味がわからなくても、たいして違和感を感じない。ところがなまじ医学用語をむずかしい漢字で字幕に出すと、観客は抵抗を感じて、ストーリーを追うリズムを乱される。こんなときには字幕に工夫をしなければならない。

 美術、建築、ファッション、スポーツ、ゲーム、宝石、動物、植物・・・・いちいちげていたらきりがない。あらゆることに好奇心を持っていることが必要である。
 ニューヨーク、パリ、ロンドンといういつも映画に登場する都市については、だいたいの街の様子を頭に入れておかないと具合がわるい。ニューヨークでいえば、マンハッタン島は南北に細長く、Avenueが南北に通じている道路、Streetが島を東西に横断している道路、BroadwayはこのAvenueとStreetをつっ切って南の端から北の端にななめに通っている道路で、この道路の42丁目から59丁目までの劇場が集まっている部分をいわゆるブロードウェイと呼ぶくらいのことは知っておく方がいい。
 政治家ならカーター、ベースボールならベンチ、テレビならカースンといったような各界の有名人についてもひととおりの知識を持っていないと、何をいっているせりふなのか、見当がつかないことがある。

 アラン・アーキンの映画だったと思う。題名は忘れたのだが、アーキンがアパートの台所でスリッパか何かを振り上げて、ゴキブリを追いまわし、「こんちくしょう、ミルホウズ」とどなっている。ニクソン大統領時代の末期に製作された映画で、MilhousはRichard M. NixonのMなのである。スーパー字幕には「このニクソンめ!」としたが、ニクソンの名前のMがミルホウズであるという、あまり役にも立たぬことをたまたま知っていたので、「このニクソンめ!」という字幕をつくることができたのである。

(中略)
 私がスーパー字幕の仕事に入ったのが1931年。33年まで1年半の間、ニューヨークにいた。この1年半のニューヨーク滞在がその後の仕事におおいにプラスになった。私の経験からいわせていただくと、持ち前の好奇心でニューヨークの生活という機会を生かし、貪欲にあらゆるものを吸収したのが、ものをいったようである。
 好奇心というものがどんなに大切なものか、読者のみなさんにもよく考えていただきたいと思う。



清水さんは、自分の仕事をスーパー字幕屋とやや卑下して言うが、もちろんそこには職人技を誇る職人気質が隠れ見えるのです。

<スーパー字幕の文法>p63~68
 「字幕スーパーの文法」というタイトルで何か書いてほしいという注文をいただいた。 雑誌の編集者というものはうまい題を考えつくものだ。外国映画にスーパー字幕をつける仕事を半世紀―正確にいうと昭和6年11月からだから、52年間手がけていて、スーパー字幕について話をしたり書いたりしたことはたびたびあるが、「文法」という発想が頭にうかんだことはかつてなかった。だれかがいったのを耳にしたこともない。
 私にいわせると、「文法」などというかたくるしいことばはスーパー字幕にふさわしくない。もっともらしく理屈をつける気ならいくらでもつけられるが、私たち、スーパー字幕屋は、外国映画を映画館のお客にどうしたらわかりやすく見せられるかということだけを頭において仕事をしているので、肩をいからせて理屈をつけたくないのである。すくなくとも、私はそう考えている。

(長くなるので省略、全文はここ)



<遺産の重さと尊さと:戸田奈津子>p116~117
 清水俊二先生が亡くなって今年(注:1992年)は早くも5周忌を迎える年となった。
 特にそれだから、というわけではないのだが、生前、先生と親しくさせて頂いた仲間の間から、誰いうとなく、雑誌などに発表されて、まだ単行本に収録されていない遺稿―それも翻訳をテーマにした文章だけを集めて本にしよう、というアイデアが持ち上がった。
 演劇、野球、その他驚くほどいろいろな分野にご造詣の深かった先生ではあるが、やはり、「清水俊二」といえば、「映画の字幕翻訳家」としての名が世に鳴りとどろいている。もちろん『映画字幕五十年』という、字幕の世界についての唯一の名著を自ら書かれてはいるのだが、つれづれに発表された随筆を集めてみるのも、また意味のあることと思う。とくに近年、翻訳一般、また映画の字幕に興味を持つ若い方々が増えたという状況からも、この大先輩の翻訳に対する考え方、姿勢はきっと参考になるだろう。

 また今回は、本を手にとっていただければすぐお分かりのように、ユニークな体裁で、実際の映画のせりふを多々引用した実践編的な文章も収録してある。これは映画雑誌「ロードショー」に「映画から英会話を学ぼう」のテーマでずっと連載されていたコラムである。「教材」に選ばれている映画は、その時話題になっていた作品で、必ずしも「永遠の名作」ばかりではない。若い読者の題名も知らない映画の1場面を語って、果たして興味を喚起できるかどうか心配だったのだが、試しにまとめてみると、これがまことに面白い。少々型破りな本とはなったが、楽しく読んで頂けると思う。
(中略)
 それにつけても「不肖の弟子」と反省するのだが、清水先生はあれだけの映画の字幕をこなされながら、いろいろな文章を書くことを面倒がらず、むしろ楽しみとしておられた。
 また映画の字幕を仕事にするには「雑学が大事」という、この本でも繰り返し書かれていることを最後まで自ら守っておられた。私など足元にも及ばぬ博学多識、その上に飽くことのない好奇心。82歳で他界されるまで、知識を吸収することに貪欲であられた。好奇心は鈍り気味、文章を書くことに毎度、呻吟する者としては、爪の垢を頂いておけばよかったと思うばかりである。

 いつもは無意識に読んでおられるだろう映画字幕だが、日本の字幕技術が「世界一」だということをご存じだろうか。タイミングの正確さ、リズム。これはたまたま横文字の字幕が入っている映画に出会った時(アメリカ映画の中にロシア語が出るといったようなシーン)、ちょっと意識して見るとすぐ分かることである。
 見事なタイミングで現れ消えてゆく日本の字幕を現在の形に整えたのは、清水先生をその一人とするこの分野の草分けたちで、半世紀を超える彼らの試行錯誤があって、日本の洋画ファンは存在するのである。




<読み、書き、訳すこと>
内田先生が「小説を読んで、書いて、訳して」という知的営為について、こう述べています。


翻訳についての二つの対話より
「小説を読んで、書いて、訳して」という営みをほぼ完璧なバランスで行っている人というと村上春樹である。
柴田さんはその翻訳家としてのキャリアを実際には村上春樹の翻訳チェックの仕事から始めた。

(長くなるので省略、全文はここ)




<関西弁の通訳>
「・・・・〇△と違うで」
「お♪ 関西弁やんか」

話が込み入ってきて、我々の英語ではらちがあかないので通訳を要望したところ・・・・
出てきたのが関西弁の李さん(女性)でした。
もう仕事で韓国に行くことも無くなったが、いたんですね 関西弁の通訳が。

非正規の庶務スタッフとして従事しているようだが、日本語ができるので必要に応じて通訳として働いていたようです。
鶴橋でも働いたことがあったそうで、そのせいか、彼女の日本語は関西弁なんですね。

仕事上の会話の内容はシビアなんですが・・・
「そんなに怖い顔で話さんといて、そんなん私に言われても」
そらそうや、通訳の彼女に怒っているわけではないのだ。
・・・・この関西弁には、かなり癒されました。

というわけで、慰労の飲み会に誘ったりしました。

仕事では苦労したが・・・・キムさんといい、李さんといい通訳には、良い思い出ばっかりでおました。


<翻訳困りっ話>  
「翻訳困りっ話」という本を図書館で借りたが・・・・
まずタイトルがいけてるし、読んで楽しい言語プロの本である。


【翻訳困りっ話】
翻訳
柳瀬尚紀著、白揚社、1980年刊

<目次より>
1 翻訳困りっ話
・失われた右手の訳語を求めて
・おまわりさんと翻訳者の関係
・ある老女の怒り
・ある死父の娘と『死父』の訳者との関係
・時差痛衾 etc.

2 若き日のある翻訳家の焦燥―軽妄的な翻訳談義
・本気であせってたんですよ
・深い仲
・すなおに訳すことが原点
・贅をつくした言葉の饗宴
・‘I’m sick of that cat’…etc.
<付録>
・笑いの言語生活者資格認定試験
・アリスの生き物探し

<大使寸評>
タイトルが秀逸であるが、読んで楽しい言語プロの本である。さすがに言語プロのエッセイは違うなぁ♪

Amazon翻訳困りっ話


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